成績概要書(2004年1月作成)

研究課題:てんさいの黒根病抵抗性圃場検定法
     (テンサイ黒根病の発生実態と総合防除法の確立)(てんさい黒根病の発生実態と防除対策)
担当部署:中央農試 作物開発部 畑作科、十勝農試 作物研究部 てん菜畑作園芸科
協力分担:
予算区分:受託
研究期間:1998〜2003年度(平成10~15年度)

1.目的
 近年、高温多雨年に多発しているてんさい根腐れ症状の主要因の1つで、Aphanomyces cochlioidesによる土壌病害であるテンサイ黒根病について、その品種抵抗性を効率的かつ安定的に評価できる圃場検定法を確立する。
2.方法
[1]黒根病抵抗性圃場検定法の開発(01~03年) (1)供試圃場:中央農試場内水田転換畑(転換後15年目)。(2)前作物:てんさい(2年連作圃場、03年のみ低菌密度圃場を追加)。(3)移植期:5月上旬。 (4)根腐病薬剤防除:モンセレン水和剤を苗床灌注、株元散布2週間間隔計4~6回散布。(5)試験区:①1区面積4.0㎡、②栽植株数8,333株/10a(畦幅60cm×株間20cm)。(6)試験区配置:分割区法3~4反復。 (7)試験処理 ①01年:(主区)灌水処理時期;a.早期(てんさい根部肥大始め)、b.晩期(てん菜根部肥大期)、c.自然状態、  (副区)多湿期間;a.短期間、b.長期間、 (副々区)品種;スタウト、モノホマレ、カブトマル。②02年:(主区)灌水条件;a.灌水処理(晩期)、b.自然状態、(副区)多湿期間;a.短期間、b.長期間、(副々区)品種;基準3+検定2。③03年:(A)高菌密度(てんさい2年連作);(主区)多湿条件;a.短期間、b.長期間、c.自然状態、(副区)品種;基準3+検定4。(B)低菌密度(水田転換草地跡);(主区)多湿条件;a.短期間、b.長期間、c.自然状態、 (副区)品種;基準3。(8)調査日:処理終了後直ちに実施(7/17~8/12)。(9)調査株数:36~48株/区。 (10)調査項目:発病程度、黒根病廃棄根率、原因不特定腐敗根率。(11)調査方法:「黒根病発病調査基準」に準拠。
[2]黒根病抵抗性圃場検定結果の適合性(97〜03年) (1)供試圃場:①中央農試輸入品種検定試 験、②現地連作圃(浦幌)、③現地検定試験(5~17箇所)。(2)供試材料:モノホマレ他2~14品種・系統。
3.成果の概要
1). 灌水多湿処理時期の検討
(1)自然状態(灌水無処理)区は、試験期間中の温度・降水条件に影響され、低温年や乾燥年では病徴は粗皮症状が主体で内部腐敗まで進展せず、検定条件として不安定であった。
(2)灌水多湿処理時期について、根部肥大始め直後(6月中旬頃)からの早期灌水処理の場合、病徴は粗皮症状が主体で、内部腐敗への進展が僅かであった。また、早期灌水処理での長期間多湿土壌区では、根腐病、黒根病、湿害などの症状が複合し、主因が特定できない原因不特定腐敗根の発生が多くなり、試験精度も劣り、検定条件として適していなかった。
2). 灌水多湿土壌期間の検討
(1)灌水多湿土壌期間について、灌水多湿処理時期が根部肥大始め2~3週間後の7月初旬前後からの晩期処理の場合、長期間(30~35日間)多湿土壌区では各年次とも安定的に内部腐敗への進展が多く認められ、品種間差異が大きく、発病程度による抵抗性評価は判り易く、試験精度も高く、最適の検定条件であった。一方、短期間(17~24日間)区では、病徴と発病程度に年次間差異が認められ、やや不安定な検定条件であった
3).黒根病抵抗性の判定
(1)抵抗性の判定に際しては、発病程度を主体にして、廃棄根率を補完的に加味しながら判定する。
(2)黒根病抵抗性の判定のための基準品種として、「スタウト」は"やや強"、「モノホマレ」は"中"、「カブトマル」は
  "やや弱"と定め、「北海90号」は"強"の基準品種と想定して、今後も検定を重ねる。
(3)基準品種と検定品種の抵抗性判定結果について、中央農試輸入品種検定試験及び現地連作圃試験、全道現地検定試験における黒根病発病程度調査結果を用いて適合性を検証し、抵抗性圃場検定法による判定結果が妥当であることを認めた。
(4)テンサイ黒根病抵抗性圃場検定法の実施マニュアルを作成した。




《黒根病圃場検定法実施マニュアル》

実施手順

内 容・ 方 法

実施時期

備   考

1.供試圃場

中央農試場内水田転換畑・てんさい2年連作圃場

前年秋

前作てんさい残渣鋤込み

2.供試材料
 

基準品種 "":「北海90号」)、"やや強":「スタウト」、
"":「モノホマレ」、 "やや弱":「カブトマル」。

設計会議
 

検定品種:生産力2年目供試材料。
2年間実施。

3. 試験区

反復数:4〜5反復。


圃場の均平化に十分な配慮。

4. 栽培法

移植栽培

5月上旬

育苗は健苗に努める。

5. 根腐病
薬剤防除

育苗期間:移植前苗床潅注。 
移植後:
5月下旬以降2週間間隔で計4回の株元散布。

移植前日。
5/下〜7/

ペンシクロン剤200倍液/1L/冊(苗床)。
 〃 1,000倍液200L/10a(圃場)

6.灌水多湿 土壌処理

 

処理開始:根部肥大始め2〜3週間後(7月初旬)。
多湿土壌期間:連続
3035日間程度。
灌水方法:試験区全面に行き渡るよう適切に注水し(
18時間程度/回)、処理期間中数回実施し、軟弱な多湿土壌状態を維持する。

7月初旬〜
8月上旬


 

多湿土壌とは、全地表面が十分な水分を含み黒色を呈し、軟弱のため人が圃場に入れない状態をさす。

 

7. 調査日
の決定 

 

モニタリング区の発病程度が平均2.5程度以上に達していることを確認して決定する。
 

8月上旬

 

モニタリングは、抵抗性が"""やや強"の品種を供試し、36株程度/回、
23回実施する。

8.発病程度
の調査 



 

調査対象株数:36株〜48/区程度。
調査方法:地上部を付けたまま株を全て抜き取り、根部を洗浄し、全株の発病指数を調査する。
調査基準:「黒根病発病調査基準(
H112月)」に準拠。
発病程度:各調査区における発病指数の平均値。

 

8月上旬
  〜中旬



 

・黒根病発病調査基準の発病指数3.0は、「内部腐敗の病斑が明らか認められる」である。粗皮症状だけの場合は2.0以下である。
原因不特定腐敗根は調査対象から 除外する。

9. 判 定


 

判定:発病程度を主体にして、必要に応じて廃棄根率を加味しながら、基準品種との相対的な位置付けにより判定する。
 




 

・ 廃棄根率は発病指数4.0以上の腐 敗根の発生割合。

 
4.成果の活用面と留意点
1).平成16年度より、「てんさい輸入品種検定試験」において実施マニュアルに従い、黒根病抵抗性  特性検定試験を開始し、新優良品種決定の資とする。
2). 糖業各社が行っている「導入品種の特性予備調査」試験実施の参考となる。
5.残された問題とその対応
1). 黒根病抵抗性"強"および"弱"の基準品種を選定する。
2). 主要な既存優良品種についての黒根病抵抗性圃場検定試験を実施し、抵抗性を判定する。 
 
《黒根病圃場検定法実施マニュアル》

実施手順

内 容・ 方 法

実施時期

備   考

1.供試圃場

中央農試場内水田転換畑・てんさい2年連作圃場

前年秋

前作てんさい残渣鋤込み

2.供試材料

 

基準品種 "":「北海90号」)、"やや強":「スタウト」、
"":「モノホマレ」、 "やや弱":「カブトマル」。
 

設計会議

 

検定品種:生産力2年目供試
材料。
2年間実施。

3. 試験区

反復数:4〜5反復。


圃場の均平化に十分な配慮。

4. 栽培法

移植栽培

5月上旬

育苗は健苗に努める。

5. 根腐病
薬剤防除

 

育苗期間:移植前苗床潅注。 
移植後:
5月下旬以降2週間間隔で計4回の株元
散布。

移植前日。
5/下〜7/
 

ペンシクロン剤200倍液/1L/冊(苗床)。
1,000倍液200L/10a(圃場)
 

6.灌水多湿 土壌処理


 

処理開始:根部肥大始め2〜3週間後(7月初旬)。
多湿土壌期間:連続
3035日間程度。
灌水方法:試験区全面に行き渡るよう適切に注水
し(
18時間程度/回)、処理期間中数回実施し、
軟弱な多湿土壌状態を維持する。

7月初旬〜
8月上旬


 

多湿土壌とは、全地表面が
十分な水分を含み黒色を呈し、
軟弱のため人が圃場に入れ
ない状態をさす。

 

7. 調査日
の決定 


 

モニタリング区の発病程度が平均2.5程度以上に達し
ていることを確認して決定する。


 

8月上旬


 

モニタリングは、抵抗性が""
"やや強"の品種を供試し、36
株程度/回、
23回実施する。

8.発病程度
の調査 




 

調査対象株数:36株〜48/区程度。
調査方法:地上部を付けたまま株を全て抜き取り、
根部を洗浄し、全株の発病指数を調査する。
調査基準:「黒根病発病調査基準(
H112月)」
に準拠。
発病程度:各調査区における発病指数の平均値。

 

8月上旬
  〜中旬




 

・黒根病発病調査基準の発病
指数
3.0は、「内部腐敗の病斑
が明らか認められる」である。
粗皮症状だけの場合は
2.0
以下である。
原因不特定腐敗根は調査
対象から 除外する。

9. 判 定


 

判定:発病程度を主体にして、必要に応じて
廃棄根率を加味しながら、基準品種との相対的
な位置付けにより判定する。

 




 

・ 廃棄根率は発病指数4.0
以上の腐 敗根の発生割合。

 

4.成果の活用面と留意点
1).平成16年度より、「てんさい輸入品種検定試験」において実施マニュアルに従い、黒根病抵抗性特性検定試験を開始し、新優良品種決定の資とする。
2). 糖業各社が行っている「導入品種の特性予備調査」試験実施の参考となる。
5.残された問題とその対応
1). 黒根病抵抗性"強"および"弱"の基準品種を選定する。
2). 主要な既存優良品種についての黒根病抵抗性圃場検定試験を実施し、抵抗性を判定する。