成績概要書(2004年1月作成)
研究課題:花き栽培における雪冷房システムの利用
      (花き栽培用の雪冷房システムの実用化)
担当部署:花・野菜技術センター 研究部 花き科
協力分担:沼田町利雪技術開発センター
予算区分:道費
研究期間:2002−2003 年度(平成14 〜15 年度)
1.目的
 環境負荷の少ない雪の冷熱利用による冷房を花き栽培に利用し、冷熱の取り出し方および花きの生育に対する効果を実証する。

2.方法
(1)貯雪と冷熱の利用方法(2002、2003年)
1)貯雪法 貯雪ハウス(間口9×高さ4.2×奥行20m)、トレンチ(2×2×深さ1.5m)



 



2)冷熱の利用方法
①底面冷房:冷水(20L/min)を循環したパイプの上にセルトレーを置き冷房した。
②空気冷房:冷水(8L/min)を自動車用ラジエターへ。その後ろから送風機(300W)で送風し冷気を得て、トンネル内を冷房。
③地中冷房:冷水を地中に埋設したパイプに循環させて地中を冷房した。
(2)花きに対する冷房の効果
1)育苗時の夜間底面冷房、夜冷時間の効果(2002、2003年)
 夜冷育苗(温室内:夜間15℃)との比較および夜冷時間(8,10,12時間)の検討
 デルフィニウム、ラークスパー、ブプレウラムを供試
2)定植後活着促進のための夜間空気冷房の効果確認(2002、2003年)
 上記3品目を定植後9−10日間夜間冷房(トンネル内に冷気を導入)をした。
3)生育期間中の夜間地中冷房の効果確認(2003年)
 デルフィニウム(3品種),スターチス・シヌアータ(3品種),シュッコンカスミソウを供試

3.成果の概要
1)貯雪と冷熱の利用方法
(1)貯雪ハウス内の雪(約600m3)は断熱シート3枚(2002年)で9月上旬まで残存した。しかしシート1枚(2003年)では7月末までしか雪が残らなかった(図1)。熱貫流率はシート3枚で0.77、1枚で1.7、床(もみがら20cm)0.24kcal/㎡h℃であった。
(2)水を入れたトレンチ(約6m3)に約2tの雪を投入し7月中下旬に夜間(18:00から6:00まで)地中冷房に利用した。投入した雪は7日間残存した。
(3)夜間底面冷房によりトレーの培地温は無冷房より2.0から2.5℃程度低下した(図2)。夜間空気冷房でのトンネル内の夜間気温は無冷房に比べ約3℃(図3)、地温( 5cm)で約1.5℃低下した。また昼間の地温もわずかに低下した。夜間地中冷房では2−3℃の夜間地温が低下した。また昼間の地温も低下した(図4)。
(4)ハウス内雪貯蔵(9×20mハウス)では7月中20日間の夜冷育苗(6×20mハウス)での利用が可能である。
2)花きに対する冷房の効果
(1)底面冷房苗はデルフィニウム、ラークスパーで根の回りが遅かった。夜冷時間では夜冷時間が長くなるにつれて苗の生育が遅れる傾向であった。
(2)夜間底面冷房苗の生育は夜冷育苗と比較してデルフィニウムで同等、ラークスパーではやや早かったが無処理よりは遅かった。夜冷時間による生育の差は見られなかった。切花品質は夜冷育苗と比較してデルフィニウムで同等、ラークスパーではやや及ばないものの無処理よりは良かった。夜冷時間による切り花品質の差は見られなかった。
(3)定植後の夜間空気冷房により生育はやや遅れるが切花品質が向上した。
(4)生育期間中の夜間地中冷房によるデルフィニウム、スターチス切花の品質向上効果は認められたが、品目、品種により効果に差が見られた。
3)経済性評価
(1)ハウス内雪貯蔵の設備投資は電気利用の40%、トレンチ貯蔵の場合は10%で済んだ。電力消費量は電気利用の33%、トレンチ貯蔵の場合は10%である。
(2)苗の冷房についてはトレンチ利用では実用性が高い(表5)と思われた。ハウス貯蔵の雪で定植後に冷房するとコストが高く(表6)導入が困難であると思われた。 

 雪の冷熱を利用した花きの夜冷育苗、冷房栽培が比較的安いコストと農家でも自作利用できることを明らかにした。冷熱利用による栽培面での効果についても明らかにした。












表1.冷房方式と雪使用量(kg/1晩)



表3.冷房方式と導入コスト(円)



表2.貯雪方法と導入コスト(円)



表4.電力消費量(kw/h)



表5.苗当たりの冷房コスト


表6.切り花1本当たりの冷房コスト


4.成果の活用面と留意点
 冬期間の積雪が十分にある地帯に適応する。
 雪穴利用の場合は他の場所で雪を貯蔵する必要がある。

5.残された問題とその対応
 品目毎の冷房効果、高温年での評価