成績概要書(2004年1月作成)
課題分類:研究課題:アルストロメリアの養液土耕栽培における施肥灌水指標
担当部署:花・野技セ研究部   園芸環境科     北農研   生産環境部 養分動態研
協力分担:花・野技セ 研究部   花き科
予算区分:補助(国費)
研究期間:2001〜2003年度(平成13〜15年度)
1.目的
 栽培期間が長く、灌水量が多いアルストロメリアに対する養液土耕栽培法の効果を明らかにするとともに、養液土耕栽培をするための施肥・灌水指標、診断指標を作成する。

2.方法
1)ハウスにおける試験(養液土耕栽培 花・野技セ)
・1区面積:3.2㎡、2反復 ・栽培方式:地床栽培 ・供試品種:「レベッカ」 ・裁植密度:株間40cm×畦間40cm、3333株/10a、1区株数20株 調査株数 10株 ・供試土壌:造成台地土(粗粒火山性土/細粒灰色台地土) ・灌水量:目標pF 1年目1.8〜2.0、2年目1.9〜2.1として調節。1回の灌水量を0.25L/株とし、目標pFになるよう1時間おきに適宜数回灌水を行った。施肥は1日の最初の灌水時に行い、その後は灌水のみ。下限値0.25L/株/日 ・pFおよび土壌溶液採取位置:点滴孔から10cm、深さ15cm ・灌水チューブ:RAM17 20cmピッチ、ベッド当たり2本 ・定植年月日:2001/6/16 ・栽培管理:6月下旬〜9月下旬 遮光資材展帳(遮光率50%)、加温条件:最低温度12℃ ・施肥量 表1 ・使用肥料:養液土耕1号、過不足分は試薬にて調整した。
・施肥は基肥を与えず、すべて分施によって行った。養液土耕区は、栽植密度から株当りの施肥量を算出し、毎日行った。慣行区は、月に2回、養液土耕区で用いているものと同様の肥料を用いて株当り0.5Lに希釈し、じょうろで行った。このとき液肥が表面流去しないように、十分な時間をかけた。
・採花調査:週に一度行い、切り花長60cm以上、かつ、花梗数3以上のものを規格内とした。
2)ポット試験(北農研)
試験1(2001年9月〜2002年7月採花)
北農研開花制御温室において品種レベッカを用い、窒素施用量5段階(0N、0.5N、1N、1.5N、2N、但し1Nは一年に40 g N m-2相当)10連でポット試験した。リン酸、カリウムはそれぞれ一年に40 g m-2施用した。定植日:6月7日。週1回採花調査し、乾物調整と汁液採取を2週間に1回ずつ交互に行った。
試験2(2002年10月〜2003年7月採花)
窒素施用量2段階(1N、1.5N)、カリウム施用量3段階 (0.5K、1K、1.5K、但し1Kは一年にK2Oで40 g m-2相当)を組み合わせた6処理、8連とした。

3.成果の概要
1)養液土耕区は慣行区に対し、初期生育が旺盛となり、規格内本数、切り花長、切り花重が増加した。規格内本数の増加は切り花本数が増える春期から秋期にかけて顕著に認められ、2カ年合計で7%の増収であった(表2)。養液土耕栽培により2L規格の割合が高まり、養液土耕区と慣行区の2カ年平均の粗収入の差はa当たり9万円であった(表3)。装置1台当たりの制御ハウス(3.3a)を2〜4棟とすると装置1台を導入することにより60〜120万の粗収入の増加が期待できる。
2)定植初年目のポット試験において規格内本数、切り花重は1N 1.5K処理で優り、1.5N 0.5K処理で劣ったことから、窒素に比べてカリウムに対する要求量の大きいことが示された(表4)。養液土耕栽培において標準区と増肥区の収量、品質、N吸収量は同程度であった(表5)。カリの定植2年目の増肥効果は認められなかった。地上部のリン酸の吸収量は窒素に対して約半量であった。以上のことから養液土耕栽培における施肥量は初年目40-30-60、2年目 50-40-50kg/10a(N-P2O5-K2O)が妥当と考えられた。
3)作物体の硝酸濃度は施肥処理を反映するが、生育量の影響を受け季節変動が大きかった。作物体栄養診断のためにはN栄養条件以外の要因を加味する必要があり、実用的な指標値の設定は困難と考えられた(図1)。
4)土壌溶液硝酸濃度の指標値は、標準区における変動幅から100〜400mg/Lが適当と考えられた(図2)。
5)慣行区は養液土耕区に対してpFのふれが大きく、過湿、過乾になる可能性が高かった(表6)。pFの目標値は1.9〜2.1が適当であった。
6)以上をまとめて、施肥灌水指標(表7)とした。



表1 施肥設計(N-P2O5-K2O、kg/10a)

  定植初年目(2001/6-2002/5) 定植2年目以降(/年) 備考
/年 定植後2ヶ月間/月 それ以降 /月
慣行区 40-40-40 2.5-2.5-2.5 3.5-3.5-3.5 50-50-50 施肥月2回 灌水週3.5回
養液土耕区 標準区 毎日施肥灌水
減肥区 20-40-20 1.25-2.5-1.25 1.75-3.5-1.75 25-50-25
増肥区 60-40-60 3.75-3.5-3.75 5.25-3.5-5.25 75-50-75
カリ増肥区    −    − 50-50-75



















4.成果の活用面と留意点
1)品種は「レベッカ」を用いた。
2)改植時は土壌診断を行うとともに地力の維持に努める。

5.残された問題点とその対応
1)生育量の異なる品種への施肥対応
2)養液土耕栽培における夏期の摘蕾による秋期増収効果の実証