成績概要書(2004年1月作成)
課題分類:
研究課題:こまつなの品種特性とクリーン栽培事例
     (道央水田地帯における施設園芸作物導入の経営・技術指針)
担当部署:花・野菜技術センター 技術体系化チーム、石狩中部地区農業改良普及センター
担当者名:
協力分担:な し
予算区分:道 費
研究期間:2000〜2003年度(平成12〜15年度)
1.目 的
 花・野菜技術センターにおいて民間育成こまつな品種の特性を把握するとともに、先進地の現地圃場において減農薬・減化学肥料栽培の検討を行った事例を取りまとめ、道央をはじめとする産地におけるこまつな栽培技術の向上に資する。
 
2.方 法
 1)品種特性調査(平成12〜15年:花・野菜技術センター ハウス栽培) 
   供試品種:38品種(標準品種「さおり」)
   供試作型:春まき(4月播き)、夏まき(6月下〜8月播き)、秋まき(9月下〜10月上播き)
   調査項目:収穫迄日数、株重、葉数、基部長径、葉色、草姿、葉巻程度等
 2)土壌分析に基づく減化学肥料栽培(平成13、15年:札幌市南区 ハウス栽培)
   調査項目:施肥量、生育・収量、土壌分析
 3)防虫ネットによる減農薬栽培(平成14、15年:札幌市南区、花・野菜技術センター)
   調査項目:防虫効果、生育・被害株率、ハウス内温度・湿度、資材費用
 
3.成果の概要
1)品種特性収量性が優れる等、特徴ある品種の特性について表1にまとめた。
①早晩性は、作型により変動は見られるが、総じて「夏楽天」「裕次郎」が早生で、「きよすみ」「はづき」「ひとみ」が晩生であった。
②収量性の指標である株重は、作型により変動は見られるが、総じて「きよすみ」「はづき」が優れた。葉数は、作型によらず「きよすみ」が多かった。
③葉色は濃いものが好まれ、薄くなる傾向のある夏まき作型では、「ひとみ」「浜ちゃん」が濃かった。
④葉巻は葉身が落下傘状に巻き込む形質で、程度の強いものは収穫時に葉切れしやすくなり、荷姿は劣る。「よかった菜」「河北」は葉巻が少なく良好であった。
 ⑤草姿は、収穫作業上から立性のものが好まれる。「夏楽天」「河北」は極めて立性の度合い  が高かった。
 
2)減肥栽培事例:1作目に窒素施肥量12kg/10aを施用したハウス栽培において、2作目に窒素施肥量を12kg、9kg/10a施用した結果、両区の生育・収量等に大差はなく、土壌残存窒素量はそれぞれ6.4、3.1mg/100gであった。3作目は、土壌残存窒素量1mg/100gに対し窒素施肥量1kg/10aを目途に減肥した窒素施肥量6kg/10a区と9kg/10a区を設けたところ、両区とも生育・収量等に大差は認められなかった(表2)。
 
3)防虫ネットの効果:露地での防虫ネットによるトンネルおよびベタ掛け栽培は、無被覆栽培と比べると、鱗翅目幼虫の被害株の発生を軽減し、殺虫剤の使用回数を1〜2回省略できた(表3)。側窓に防虫ネットを取り付けたハウス栽培では、鱗翅目幼虫の寄生虫数が低下した。また、防虫ネットを使用することで無ネット区より生育は早まる傾向にあった。
 トンネル栽培に要する防虫ネットを含む資材費は10a当たり16,875円で、10a当り1,500㎏の収量条件下では、1束(200g/束:平均単価22.2〜42.2円)当り2円のコスト増となった。ハウス側窓に取り付ける場合は、1作当たり資材費は80坪当たり1,133円で、10a当り3,000㎏の収量条件下での費用に換算すると、1束当り0.2円増となる。

表1 総括表
品種名 春まき 夏まき 秋まき 葉巻 葉艶 草姿 株張
早晩 株重 葉数 早晩 株重 葉数 葉色 早晩 株重 葉数
さおり × 開張
よかった菜 や晩 や晩 立性
きよすみ や晩 や晩 や濃 や晩 や開
はづき や晩 や晩 や晩 や開
わかみ や濃 や早 立性
夏楽天 極立
ひとみ や晩 や晩 極濃 や晩 × 立性
裕次郎 立性
浜ちゃん 極濃 立性
河北 や早 × × や早 × 極立
(株重大、葉数多、葉巻・葉艶・株張良)〜□(標準品種並)〜×(株重小、葉数少、葉巻・葉艶・株張劣)
但し、葉巻については標準品種×


 表2  施肥量と生育収量特性(平成15年)
作期 区分 N施肥量
(kg/10a)
播種-収穫 草丈
(cm)
葉数
(枚)
収量(kg/a)  調整歩留
(%)
収穫跡地
調整前 調整後 pH EC NO3 -N
1作目 12 5/31 - 6/26 23.3 8.2 243 180 74.3 5.1 0.27 2.8
2作目 A 12 7/28 - 9/ 5 34.3 10.0 614 534 87.1 6.3 0.39 6.4
B 9 32.5 9.6 585 514 87.8 6.3 0.19 3.1
3作目 A 6 9/18 -10/31 30.3 6.9 333 272 81.6 6.7 0.19 4.7
B 9 31.3 7.3 341 277 81.2 6.7 0.19 4.7
注) 単位:ECはms/cm、NO3 -Nはmg/100g 、区分A,Bはハウス内の処理地点を示す。
 
 
 表3  防虫ネットの効果(平成13-15年)
年次 区分:目合 殺虫剤
使用回数
鱗翅目幼虫
(被害株率%)
ナモグリバエ
(被害株率%)
草丈
(㎝)
1株重
(g)
H13 無被覆
    べた掛け1mm
    トンネル1mm
3 22 5 23.7
2 2 0 24.7
2 1 1 24.9
H14 無被覆
    べた掛け1mm
    トンネル1mm
2 42 36 30.9 43.1
2 3 0 31.3 41.8
2 3 0 32.2 40.6
H15 無被覆
    トンネル2mm
    トンネル1mm
4 4.3 8.7 29.3 30.6
2 4.0 0 33.0 29.3
2 0 0 32.4 24.1
  注)−は欠測データ


4.成果の活用面と留意事項
 1)産地におけるこまつな品種選定時の資料とする。
 2)こまつな栽培時の施肥の目安と防虫ネット利用時の資料とする。
 3)現地の栽培試験成果は、畑地で行ったものである。
 
5.残された問題点とその対応
  肥培管理による硝酸含量の低減技術