成績概要書 (2004年1月作成)
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研究課題:夏どりほうれんそうの溝底播種技術
     (溝底播種技術を導入した夏どりほうれんそうの安定生産)
担当部署:上川農試 研究部 畑作園芸科
協力分担:
予算区分:道費
研究期間:2002〜2003年度(平成14〜15年)
1.目的
 ほうれんそうの夏どり栽培における溝底播種技術を検討する

2.方法
1)試験方法
 (1)処理方法 慣行播種は、2002年はシードテープ播種機、 2003年は2条播種機を使用した。溝底播種は、両年次ともに播種機鎮圧輪を専用輪に交換した。
 (2)裁植様式 2002年は、7㎝間隔で種子2粒封入したシードテープを使用し、畦幅を15㎝とした。2003年は、10㎝間隔で種子1〜2粒が落下するように調節し、畦幅を15㎝とした。
 (3)供試品種、播種期、施肥量

(4)地温、土壌水分測定  上記作期において、深さ3,5,10㎝において測定した。土壌水分は、
2002年7月11日播種の作期において、表面〜3㎝、5〜10㎝、13〜18㎝より土壌をサンプリングし土壌水分の推移を調査した。

3.成果の概要
1) 溝底播種は、幅10㎝、深さ4〜5㎝程度の溝の底に播種する栽培方法であり、播種機の鎮圧輪を市販されている専用の鎮圧輪に交換することで可能となる(写真1)。
2)播種土壌が非常に乾いた状態では、壁が崩れ覆土が厚くなり、湿潤すぎる状態では、鎮圧輪の構造上(木製のため、中空の慣行鎮圧輪より重量がある)、鎮圧が強く覆土が堅く締まりすぎると考えられる。よって、溝底播種における播種時の土壌水分状態は、形成された溝が崩れない程度の土壌水分状態で十分であり、慣行播種における土壌水分状態と変わらないと考えられる。
3)溝底播種による地温上昇抑制効果は、日照時間と有意な相関関係が認められ、日照時間が多かった作期では効果が大きく、日照時間が少なかった作期では慣行播種と変わらない地温であった
(表1)。また、深さ10㎝までその効果があった。
4)溝底播種の土壌水分は、土壌表面では慣行播種と同様に乾燥するように観察されるが、深さ3㎝より浅い部分では、慣行播種よりやや湿潤に経過し、深さ5㎝よりも深い部分では、慣行播種と変わらなかった(図1)。
5) 慣行播種で発芽が不良となり低収となった2003年作期Ⅱにおいて、溝底播種では発芽が向上し、規格内株率も高く多収となり安定生産が認められた(表2)。

以上より、溝底播種技術の導入により、生産が不安定となる夏どり栽培において安定生産が可能となる。

 写真1 鎮圧輪と溝底播種後の畦   



  図1 土壌水分の推移(2002年)


表1 各作期における平均地温、最高地温および日照時間(地温は深さ5㎝で測定)


表2 播種方法の違いが発芽、収量に及ぼす影響

4.成果の活用面と留意点
1)溝底播種のかん水管理は、浅い部分の土壌水分が慣行播種よりも湿潤となるため、土壌水分の状態を確認して行う。
2)本試験には、市販されている鎮圧輪を使用した。
3)試験は、雨よけハウスにおいて6月中旬〜8月上旬播きで行った。

5.残された問題とその対応
1)溝底播種技術の導入可能な高温多照条件の検討。
2)遮光資材被覆との組合せの検討。