成績概要書(2004年1月作成)
課題分類:
研究課題:オーストリッチの道内飼養概要と育雛期の飼育管理
(オーストリッチの育雛技術の確立)
担当部署:道立畜試 家畜生産部 特用家畜科
予算区分:道単
研究期間:2001〜2003年度(平成13〜15年度)
1.目的
 オーストリッチは、低カロリー、低コレステロールの赤肉や高品質の皮革を効率よく生産する家畜として、近年その有効性が注目されており、北海道においても平成7年から飼養されている。しかし、オーストリッチの飼養管理技術について、鶏とは異なる点が多く、基本的な情報が極めて不足している。特に、オーストリッチは育雛期の死亡率が高く、農場間の育雛率に大きな差がみられ、経営に大きな影響を与えている現状にある。
 そこで道内でオーストリッチを飼養している農場の飼養管理について飼養実態および農場間格差の要因について調査するとともに、オーストリッチの育雛に必要な環境および管理について検討した。
 
2.方法
 1)北海道におけるオーストリッチ飼養の概要
  調査方法:現地聞き取り調査および郵送によるアンケート調査
  実施期間:平成13年4月〜平成15年10月
 2)育雛期の飼育管理の検討
  試験方法:飼育環境および飼料構成の違いが育雛に及ぼす影響の検討
   (1)飼育環境   (2)飼料構成
  試験期間:12週齢まで
 3)週齢別の消化能力
  試験期間:2週齢、4週齢、6週齢、10週齢
 4)ニューカッスル病ワクチン接種よる抗体価の推移
  試験方法:鶏用ニューカッスル病ワクチンを飲水投与
 
3.成果の概要
1)北海道におけるオーストリッチ飼養の概要
・調査した54戸の農場のうち71%が繁殖鳥10羽未満の小規模農場で、平均した孵化率および育雛率は45±23%および41±34%であり、対種卵育雛率では19%であった。
・飼養方法は、飼養羽数、孵卵・育雛施設の大小、参入業種等によって様々であり、特に、飼養環境については大きな差があった。また、育雛方法には一定の傾向はなく、緑餌や保温施設の利用以外に共通点はなかった(表1)。
・産卵期間、雌鳥1羽当りの産卵数、孵卵率および育雛率(表2)は同一農場内においても年による変動が大きく、孵卵および飼育管理技術が確立しているとはいえなかった。
2)育雛期の飼育管理の検討
・育雛期の飼育環境では、4週齢までに夜間低温に暴露することは発育を阻害し、冷たい風があたる飼育舎は雛に重大な影響を与えるため、2ヶ月齢までは25℃程度に保温することが望ましいと考えられた。
・発育が十分でない場合、週齢が過ぎても低温に耐えることができないので、体重等の発育状況を考慮して温度を下げる時期を決めることが適当であると考えられた。
・餌付け方法が重要であり、採食の有無を確認しながら採食を促す刺激を与え、採食量を少なくとも体重の5%以上に増加させることが重要であった。
・飼育舎床には防水コーティングのコンクリートを使用したが、表面に水分が残り、育雛後期に転倒事故を起こしたため不適当であった。
3)週齢別の消化能力
・粗蛋白質の消化能力は、4週齢でほぼ獲得できていると考えられるが、NDFおよびADF消化率は6週齢から10週齢にかけて増加していることから、少なくとも6週齢では繊維成分の消化能力は完成されていないことが明らかになった(表3)。
・粗飼料由来の粗蛋白質は利用性が低かった。NDFおよびADFは成分摂取量が多いと消化率が著しく低下する傾向がみられた。
4)ニューカッスル病ワクチン接種による抗体価の推移
・飲水投与によるワクチン接種では、抗体価が上がらない個体があり、飲水投与は接種方法として適当ではないと考えられた。







 


4.成果の活用面と留意点
 1)道内のオーストリッチ飼養状況および育雛状況について、現地指導の際の参考資料として活用できる。
 2)オーストリッチの週齢別の消化率を参考に、育雛用飼料の構成に活用できる。
 
5.残された問題とその対応