成績概要書                            (2004年1月作成)
課題分類:
研究課題:環境負荷低減のためのパドック管理技術
       (予算課題名:パドックおよび野積みふん尿における環境汚染防止対策)
担当部署:根釧農業試験場 研究部 酪農施設科 草地環境科
協力分担:なし
予算区分:道費
研究期間:1999〜2003年度(平成11〜15年度)
1.目的
 環境にやさしくクリーンな北海道酪農推進の一環として、牛舎周辺の環境整備とふん尿混じりの流出水による環境汚染を防止するため、パドックを併設したフリーストール牛舎でパドックを閉鎖した場合の乳牛活動量変化、およびパドックの利用形態によるふんの分布を検討してパドック内に排せつされるふんの低減法を明らかにする。

2.方法
1)パドックを閉鎖した場合の乳牛の活動量変化
(1)収容牛舎:根釧農試旧総合試験牛舎フリーストール牛舎(利用可能牛床数 16床)
(2)処 理 区:パドック利用区 2003年4月5〜16日(全体面積344㎡)
         パドック閉鎖区 2003年4月24日〜5月3日(全体面積145㎡)
(3)調査方法:搾乳牛20頭を収容し各乳牛の平均活動量を求め、発情牛のない日を集計
2)パドックの利用形態とふん量低減法の検討
(1)調査牛舎:根釧農試旧総合試験牛舎 フリーストール牛舎(尻合わせ、牛床2列)
(2)測定年月日:パドック給与区 1回目 2000.11.29〜30、2回目 2001.5.7〜8
           舎内給与区   1回目 2000.12.7〜8、 2回目 2001.4.26〜27
(3)調査方法:牛舎内を細分割して、それぞれの区画のふん量およびふん塊分布を調査した。

3.成果の概要
1)フリーストール牛舎ではパドックを閉鎖して利用可能牛舎面積が半分以下に減少しても群全体の平均活動量は大きく変化しなかった。しかし、個体(特に初産牛)によっては活動量が20〜22%も低下した。

2)フリーストール牛舎の場合のふん量分布は、パドック内給与では牛床間通路に約63%、パドック内に約35%、採食通路に約2%で、舎内給与では牛床間通路に約65%、パドック内に約6%、採食通路に約29%であった。パドック給与区では飼料給与直後に飼槽周辺に乳牛が集中してふんの採取が不可能であったため、その部分の乳牛頭数が減少してから採取した。そのためパドックでのふん量が14:00に集中した。飼料の給与場所をパドック内から牛舎内に変更することにより、パドック内のふん量を排ふん量全体の約35%から約6%にまで減少することができた。

3)パドック内のふん量はパドックの利用時間が長くなるにしたがって増加するが、排ふんが飼料の給与後の採食時に集中するため、飼料給与前にパドックの除ふんをするのではなく、飼料給与後の採食が落ち着いた頃を見てパドック内の除ふんをすると、ふんがパドック内に大量に残っている時間を短くすることができると考えられた。

 以上のように、パドックを閉鎖すると活動量が大きく低下する個体がみられること、フリーストール牛舎の場合には飼料給与場所を舎内に変更することによりパドック内の排ふん量を総排ふん量の約35%から6%に低減できることが明らかとなった。


表1 パドック利用の有無と乳牛の活動量
牛番 産次 利用区
(回/h)*
閉鎖区
(回/h)
増減割合
(%)
496 5 4.39 4.72 7.6
518 4 3.36 3.33 -0.8
550 3 4.33 4.18 -3.5
563 3 3.29 3.21 -2.5
594 2 5.73 5.30 -7.5
596 2 7.74 7.31 -5.5
604 1 6.85 6.36 -7.2
605 1 5.53 6.10 10.4
630 1 3.77 3.01 -20.1
633 1 5.32 5.18 -2.8
635 1 4.54 4.29 -5.5
640 1 4.71 5.02 6.5
643 1 6.56 6.36 -3.0
645 1 6.04 4.69 -22.3
647 1 7.27 6.72 -7.5
653 1 4.82 5.43 12.8
660 1 6.12 6.62 8.1
663 1 4.49 3.57 -20.4
平均   5.27 5.08 -3.52
  活動量:4〜12日間の平均
  パドック利用区:面積344㎡
  パドック閉鎖区:面積145㎡
  収容頭数:搾乳牛20頭
  *活動量はおよそ20歩で1回



表2 飼料給与場所によるふん量分布(%)
給与場所
調査(年)
パドック 舎内
2000 2001 平均 2000 2001 平均
採食通路 2.8 1.3 2.1 30.4 28.4 29.4
牛床間 65.4 60.0 62.7 63.8 66.2 65.0
パドック 31.8 38.7 35.2 5.8 5.4 5.6
ふん量(kg) 1055 1710 1383 1399 1917 1658




   図1 牛床間通路の時刻別排ふん量(2001)




   図2 採食通路の時刻別排ふん量(2001)




   図3 パドック内の時刻別排ふん量(2001)




   図4 パドック給与時のパドック内のふん量の積算割合(2001)



4.成果の活用面と留意点
1)本成果は、舗装したパドックに適用する。 2)パドックから流出する汚水の濃度を低下させるために①毎日の除ふんを実施すること、②雨天時にはパドックを利用しないことが重要である。さらに、フリーストール牛舎で休息舎と飼槽がパドック内に別々に設置されているような場合には③飼槽部分に乳牛全体を覆えるような屋根がけを検討する必要がある。

5.残された問題とその対応
1)乳牛の健康を保つために必要な牛舎面積、活動量の検討。