成績概要書(2004年1月)
課題分類:
研究課題:パドック汚水の砂層濾過・凝集沈殿処理技術
       (パドックおよび野積み糞尿における環境汚染防止対策)
担当部署:根釧農業試験場 研究部 酪農施設科 草地環境科
担当者:
協力分担:なし
予算区分:道費
研究期間:1999〜2003年度(平成11〜15年度)
1.目的
 環境にやさしくクリーンな北海道酪農の推進の一環として、牛舎周辺の環境整備と糞尿混じりの汚水による環境汚染を防止するため、パドック流出汚水の簡易処理技術を明らかにし、周辺環境の汚染防止技術を確立する。
  
2.方法
1)パドックから流出する汚水の検討
 根釧農試旧牛舎附帯のパドック(2箇所:約813㎡、飼養頭数約100頭)から沈殿槽へ排出される汚水の成分を調査した。また、沈殿槽に滞留する汚水に対して、送気の有無による汚水の成分変化を検討した。
2)砂層濾過と凝集沈殿法によるパドック汚水処理の検討
① 砂層濾過における閉塞限界と濾過層の能力回復方法の検討した。
② 砂層濾過したパドック汚水に鉄塩系凝集剤で凝集沈殿処理した効果を検証した。
③ 排出される汚水に対する施設規模とその基礎設計について検討した。

3.成果の概要
1)パドックから排出される汚水は時間経過により汚水濃度が低下するとは限らないため、全量を貯留しなければならない。また、汚水に含まれる懸濁態成分はCODと高い相関性があり、懸濁態成分を除去することでCODを低下することができる。
2) 径φ1.18〜2.00mm、濾過層厚50mmの砂層濾過では、層面積1㎡あたり初回閉塞までの濾過能力を糞尿量に換算すると6.4kgで、固形分除去性能は汚水中の固形分の44.6%を除去できる。
3) 閉塞した砂層は送気による逆洗と夾雑物の掻出しで濾過能力が回復した。
4) 処理時間は薬剤混和時間が10分、沈殿・静置時間が60分が適当であると考えられ、汚水濃度50kg/m3までは凝集沈殿を行なうことにより、排出基準値以下の処理水を得ることができた。特にSS、T−Pの除去率はほぼ100%でありCODも約90%の除去率があった。
5) 汚水濃度と薬剤の最適使用量には正の相関があり、薬剤投入量は汚水の透視度から算出できるが、透視度が2㎝以下では読取り誤差が大きくなるため、適正量から2倍量までややゆとりを持たせて投入することが望ましい。薬剤投入量の正否は処理水のpHが5.8〜8.6の範囲で、透視度が改善されているかで判定できる。
6) 汚水ポンプによる水流旋回式による急速・緩速撹拌運転は有効である。使用するポンプ能力は汚水容積をポンプの吐出量と撹拌時間で除したときに算出される係数が3〜4になるよう貯留槽容積とポンプ能力を設計することが望ましい。
7) 凝集沈殿後の処理水は浮体付汚水ポンプを用いることで水面部の清澄な処理水から排出できる。


以上の結果のとおり、パドックから流出する汚水の処理方法として砂層濾過、凝集沈殿法について検討し、基礎実験では処理水を排出基準以下にできることが明らかになった。




図1 沈殿槽に滞留した汚水の濁度とCOD





図2 汚水処理システム概念図





図3 砂層濾過による固形分除去性能





図4 砂層濾過時の逆洗と掻出し処理





図5 凝集剤使用量




表1 濾過汚水と凝集沈殿処理水の成分



4.成果の活用面と留意点
本成果は砂層濾過、凝集沈殿処理の基礎データとして活用できる。

5.残された問題とその対応
1) 現地酪農家での実規模装置での浄化処理試験
2) 汚水から分離されたフロックを混入した糞尿の肥効性について