成績概要書 (2004年1月作成)
研究課題:臭気・ガス揮散抑制のためのスラリー散布及び曝気処理技術
(糞尿利用過程におけるガス揮散の動態解明および防止対策技術の開発)
担当部署:根釧農試 研究部 草地環境科、酪農施設科
協力分担:なし
予算区分:道費
研究期間:1999〜2003年度(平成11年度〜15年度)
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1. 目的
ふん尿処理、利用過程で発生する環境汚染物質の量を明らかにするとともにその抑制技術を検討する。スラリーの散布方式とアンモニア揮散では、スラリー散布方式別のアンモニア揮散の低減状態を明らかにし、スラリー散布時の臭気対策を検討する。曝気処理過程におけるガス揮散の動態解明では、スラリー曝気処理時のガスの動態を明らかにする。
2. 試験方法
1) スラリーの散布方式とアンモニア揮散
(1) スラリー散布方式:①衝突板方式、②バンドスプレッダ方式、③浅層インジェクション方式
(2) アンモニア揮散量の測定(2000、2003年)
測定項目:スラリー散布中の臭気強度、散布後のアンモニア揮散フラックス(測定方法:風洞法)
2) 曝気処理過程におけるガス揮散の動態解明
ビニールシートで密閉処理を行った曝気槽(容積:39.7 m3、有効容積:15.9 m3)において、開放条件(外気取り入れ口からの新鮮な外気と曝気槽内気層部のブロワ(ブロワの運転はエジェクタと連動)による空気交換)と密閉条件(吸気口および排気口を除き、曝気槽を密閉した)のバッチ式発酵試験(15日間)および連続式発酵試験(滞留日数10日)の曝気槽から排出されたガスを採取した。測定項目は、温度(曝気槽内液、吸気(=ハウス内温度)、排気、外気、投入原料)と投入原料および曝気処理時のスラリー中の溶存酸素濃度、酸化還元電位および一般成分、ガス成分(アンモニア、亜酸化窒素、メタン)とした。なお、ガスサンプリングは送気時のみ行った。
3. 結果の概要
1)バンドスプレッダでは散布時の臭気の拡散範囲をスラリースプレッダよりも狭く抑えることが可能であったが、アンモニアの揮散は長く続く傾向にあった。
2)浅層インジェクション方式はスプレッダ(衝突板)方式に比較して、アンモニアの揮散および臭気を低減することが可能であった。
3)連続式発酵における密閉条件の積算曝気槽内液温は、9181℃h(積算外気温度-472℃h)で、開放条件の曝気槽内液積算温度(8426℃h、積算外気温度217℃h)に比べ高い温度で推移した。バッチ式発酵でも同様の傾向を示した。
4)開放条件下の乳牛ふん尿スラリー中の総窒素量からのガス排出割合は、連続式発酵では総窒素の20.44%、15日間のバッチ式発酵では13.17%であった。曝気槽からのガス排出量は、曝気槽を密閉条件にすることで15日間のバッチ式発酵では総窒素の2.35%、連続式発酵では総窒素の4.55%に抑制することができた。
5)連続式発酵における密閉条件のガス排出量は、開放条件に比べ、アンモニアが80.0%、亜酸化窒素が90.0%、メタンが82.4%、15日間のバッチ式発酵では、アンモニアが79.3%に、亜酸化窒素が92.5%、メタンが92.2%に低減することができた。
以上の結果より、スラリー散布においてバンドスプレッダ方式は臭気拡散を、浅層インジェクション方式はアンモニア揮散および臭気を低減すること、ガス揮散対策として、曝気槽に対する密閉処理は有効であることが明らかとなった。
表1 散布方法別の臭気強度(2000)
区分 |
臭気強度* |
平均
風速
(m/s) |
散布量
(t/10a) |
20m |
50m |
100m |
バンドスプレッダ区 |
2 |
2 |
0 |
2.3 |
2.63 |
スラリースプレッダ区** |
2 |
2 |
2 |
1.6 |
1.8 |
* 0なし、1かすかに臭う、2はっきり臭う、3強烈な臭い
** 測定距離は+13.6m
表2 処理法の違いによる曝気槽内の総窒素量の変化と総窒素減少率(15日間のバッチ式発酵と連続式発酵)
処理 |
総窒素
(mg/L) |
総窒素
減少率
(%) |
バッチ式発酵 |
開放条件 |
試験開始時 |
2430 |
− |
試験終了時 |
2110 |
13.17 |
密閉条件 |
試験開始時 |
2550 |
− |
試験終了時 |
2490 |
2.35 |
連続式発酵 |
開放条件 |
投入原料 |
2690 |
− |
曝気槽内液 |
2201 |
20.44 |
密閉条件 |
投入原料 |
2690 |
− |
曝気槽内液 |
2568 |
4.55 |
表3 処理法の違いによるガス排出量の低減率
処理 |
開放条件 |
密閉条件 |
低減率(%) |
アンモニア |
バッチ式発酵 |
(kgN) |
5.12 |
1.06 |
79.3 |
連続式発酵 |
(kgN/日) |
0.55 |
0.11 |
80.0 |
亜酸化窒素 |
バッチ式発酵 |
(kgN) |
0.04 |
0.003 |
92.5 |
連続式発酵 |
(kgN/日) |
0.0002 |
0.00002 |
90.0 |
メタン |
バッチ式発酵 |
(kgC) |
0.36 |
0.028 |
92.2 |
連続式発酵 |
(kgC/日) |
0.0017 |
0.0003 |
82.4 |
4. 成果の活用面とその留意点
1) 本成績は、曝気槽上部を直接密閉した場合のガス揮散防止効果であり、送気時のみのガス排出量で比較している。
5. 残された問題点とその対応
1) 曝気槽から発生するアンモニアの捕集方法