成績概要書 (2004年1月作成)
課題分類:
研究課題:ペレニアルライグラス放牧地における堆肥利用法
       (Ⅱ家畜糞尿主体の施肥設計システムによる高度利用技術の開発 2放牧地における糞尿有効活用指針の策定)
担当部署:北海道立天北農試 研究部 牧草飼料科
担当者名:
協力分担:
予算区分:道費
研究機関:1999〜2003年度(平成11年〜15年度)
1.目的
 家畜糞尿の有効活用を促進するために、堆肥主体施肥が放牧地におよぼす影響についての検討が必要である。堆肥の施用が放牧牛の採食性におよぼす影響については、前回の試験で堆肥の施用量(2t/10a)と施用後入牧までの日数(30日)を明らかにした。その結果に基づき、本試験では堆肥を化学肥料の代替えとした場合の草量、牧草成分、土壌への影響について検討した。
 
2.方法
 1)堆肥の施用時期と牧草収量
   堆肥施用時期:平成11〜13年(早春、6月、晩秋)、 平成14〜15年(7月、9月)
   放牧方法:草丈20cm程度を目安に入牧し、採食程度70%(退牧草丈6〜8cm)で 出牧。
   入牧頭数:ホルスタイン成牛 平成11 〜14年10頭、平成15年5頭。
 2)牧草成分:粗蛋白質、NDF,ADF、TDN,硝酸態窒素、無機質(K、P、Ca、Mg)
 3)土壌成分:K2O、P2O5、CaO,MgOなど。
 
3.成果の概要
1)堆肥の施用時期と牧草収量
(1)放牧地に堆肥(乾物率約23%)を2t/10a(リン酸は6kg/10aを化学肥料で)施用する  ことにより、化学肥料施用と同等かそれ以上の草量が得られ(図1,2)、マメ科率の低下、 雑草の増加はなく、化学肥料の代替えが可能である。
(2)堆肥の施用時期は、春の入牧前と秋の退牧後、放牧期間中は7月後半以降が適している(図3,4)。6月施用は、堆肥施用後の休牧期間(1ケ月)に牧草が伸びすぎることから、施用時期としては不適とみられた(図3)。
(3)堆肥の利用により、購入肥料代が50%程度節減できる。
 
2)牧草成分
 放牧地における堆肥施用が牧草成分に及ぼす影響をみるため、化学肥料区と対比した。
(1)栄養成分(粗蛋白質、NDF、ADF)、TDN含量に大きな違いはなかった。(図5)
(2)硝酸態窒素含量は、ほぼ同様な値であり、堆肥連用4年目でも家畜栄養上の基準値  0.22 %を越えることはなかった。
(3)無機成分(カリ、リン、カルシウム、マグネシウム)含量はほぼ同様な値を示し、K /(Ca+Mg)比はやや高い傾向を示した。(表1)
 
3)土壌成分
(1)堆肥連用5年目にはK2O含量が増加していたが、対照区との差は明らかではなかった。(表2)
(2)Mg Oは堆肥施用により、増加傾向がみられた。(表2)























4.成果の活用面と留意点
 1) ペレニアルライグラス放牧地の施肥管理に有効であり、7月後半の堆肥施用は秋の草量確保が期待できる。
 2) 堆肥施用後の休牧期間を考慮すると、早春施用は春先の牧草生育が緩慢な晩秋放牧を行った草地を対象とすることが望ましい。
 3) 堆肥の施用にあたっては、肥料効果のムラが生じないよう、出来るだけ均一に散布する。 
 4) 定期的に土壌診断を行い、診断に基づく施肥対応に努める。

5.残された問題とその対応
   ペレニアルライグラス以外の放牧地における堆肥の利用法の検討。