成績概要書(2004年1月作成)
研究課題:除草剤DBN(2,6-ジクロロベンゾニトリル)の土壌残留と作物生育への影響
(微生物を活用した環境負荷低減土壌管理技術の確立 1)残留農薬の低減技術)
担当部署:中央農試 クリーン農業部 土壌生態科
担当者名:
協力分担:なし
予算区分:道費(クリーン)
研究期間:1998〜2003年度(平成10〜15年度)
1.目 的
 残留性の高い除草剤DBNが樹園地、非農耕地(ハウス周り等)に散布され、その後に一般畑地として利用された場合、幾つかの作物において障害が散見されている。そこで、土壌に散布されたDBNの残留性と残留DBNが各種作物の生育に及ぼす影響を検討する。

2.方 法
1)DBNの土壌残留性
 (1)現地土壌残留調査 現地連用土壌:のべ8カ所とかぼちゃ異常果発生圃場。
(2)土壌中における動態の解明 供試土壌:褐色低地土(1m2枠)。
   試験処理 除草剤(6.7%粒剤)散布量3水準×10反復、散布時期:H11/11/16。
2)土壌残留DBNが作物生育に及ぼす影響
(1)発芽に対するDBNの阻害作用 供試作物:4種、DBN水溶液濃度:7水準。
 (2)残留土壌における作物栽培試験 供試土壌:褐色低地土(1m2枠)、供試作物:11種。
試験処理 除草剤(6.7%粒剤)散布量3水準と無散布区の計4処理区。

3.結果の概要
1)DBN含有除草剤を散布した土壌のDBN濃度は、果樹園で0.5〜2.4mg/kg、ハウス周囲で1.3〜5.4mg/kgであり、連用年数が長くなるに伴い高まる傾向を示した。また、DBN含有除草剤の散布から約10年間経過した畑でも、かぼちゃ異常果の発生が確認され、土壌から0.02mg/kgのDBNが検出された。
2)11月に散布されたDBNは半年間で30〜50%まで減少した。土壌混和後のDBN濃度は指数関数的に低下し、経過年数との関係より、混和時のDBN濃度が半分になるのに約1年間、10分の1になるのに約3年間、100分の1になるのに6〜7年間が必要と推定された(図1)。
3)発芽率を50%阻害するDBNの水溶液濃度は作物で異なり、レタス(0.05mg/l)<こまつな(0.1mg/l)<そば(0.5〜1mg/l)<小麦(1〜2mg/l)の順に低濃度で阻害された。
4)ごく低濃度のDBN残留でも種子が形成されない異常果が発生するかぼちゃでは、0.03mg/kgで明らかにつる長と1果重が低下した。一方、メロン、すいかでは着果した果実の全てに種子が形成され、つる伸長や果実肥大の低下が始まるDBN濃度はかぼちゃに比べて高かった(写真1)。
5)ウリ科以外でも残留DBNに対する感受性は作物で異なり、にんじんではDBN濃度が0.07mg/kgで発芽率、根重が低下し、分岐根、こぶ症根が発生した。ばれいしょでは0.06mg/kgで収量とライマン価、レタスおよびだいこんでは各々 0.1、0.07 mg/kgで収量が低下した。これらは残留DBNの影響を受けやすい作物と位置づけられた。その他の作物ではDBN濃度が0.2mg/kg以上から生育、収量が低下した。
6)DBNの代謝物であるBAM(2,6-ジクロロベンズアミド)、DBacid(2,6-ジクロロ安息香酸)の散布により、かぼちゃの生育量は低下し、果実の肥大も抑制された。しかしながら果実内部に種子が形成され、水浸症状は認められなかった。
7)以上のことを、DBN残留濃度水準に対応した作物生育障害情報として表1に示した。










表1 土壌中のDBN残留濃度水準に対応した作物生育障害情報




4.成果の活用面と留意点
1)土壌残留DBNによる生育障害が疑われる作物の生育診断に活用できる。
2)DBNによる生育障害の最終診断では、土壌あるいは作物体の機器分析を実施する。
3)畑地利用を予定している土地には、非農耕地、樹園地用のDBN含有除草剤を使用しない。
4)畑用DBN含有除草剤を使用した畑では、廃耕、土壌混和せずに適用作物(大麦、小麦)の作付けを継続し、土壌中のDBNを十分揮散・消失させてから、後作物を栽培することが望ましい。

5.残された問題とその対応
1)DBNの代謝産物による作物生育への影響
2)生育障害の症状および発現するDBN残留濃度の品種間差異
3)土壌残留したDBNの低減促進技術の開発