成績概要書(2004年1月作成)
研究課題:発芽シートを用いた生ごみコンポストの簡易植害判別法
       たい肥等有機物・化学肥料適正使用指針策定調査
       3.環境保全型土壌管理調査  1)有機質資源循環利用システムの確立
       (2)各種有機物資源の腐熟度判定法の開発と施用指針の策定 
担当部署:中央農試 クリーン農業部 土壌生態科
予算区分:国費補助(土壌保全)
研究期間:2000年〜2003年度(平成12〜15年度)
1.背景および目的
 自治体収集のごみは分別収集が進んでおり、生ごみについても例外ではない。収集生ごみの処理法の一つとして、コンポスト化があるが、その方式は多種にわたる。また、農畜産物由来でないものも多いことから、農家は生ごみコンポストの積極的利用をしておらず、有効利用のための情報を求める声が大きい。本試験では、生ごみコンポストの成分、作物影響を調査し、簡易な植害判別法を検討する。

2.方法
1)堆積期間の異なる生ごみコンポストの成分、幼植物試験および作物生育試験
供試試料:生ごみ、浄化槽汚泥、モミ殻を原料とし、2次堆積期間が0、3、30、60、150、200、240日(製品)のコンポスト('00年採取)     
(1)分析項目:無機成分(N,P2O5,K2O)、有機成分(分析項目は図1を参照)
(2)植害試験(コマツナによる幼植物栽培試験)
N,P2O5,K2Oを各25mg施用した土壌500ccに乾燥コンポスト5g(標準量区)、15g(3倍量区)混入し、こまつな「極楽天」播種。3週間栽培し、乾物重、草丈を測定。コンポスト無施用処理を対照区とし設定。
(3)発芽シートを用いた簡易幼植物試験
乾燥コンポストを1:10の割合で30分振とう後、ろ過。こまつな「極楽天」を播種したシートにろ液5ml を加え25℃、暗所で静置。48時間、72時間後に発芽指標値を測定。対照区は水5mlによる処理。発芽指標値=Σ(未発芽×0+根長3mm以下×1+根長3mm以上×2+子葉展開×3)
(4)堆積期間の異なるコンポストがたまねぎ生育に及ぼす影響
供試試料:’01年に1)と同一箇所で採取した2次堆積期間0日、30日、160日(製品)のコンポスト 施用量:2.5t/10a、不足成分は化学肥料を追加 調査項目:生育、収量
2)材料、製造方法の異なる生ごみコンポストの植害試験および幼植物試験
供試試料:7自治体から採集した計15点の生ごみコンポスト試験項目:1)の(2)および(3)
3.成果の概要
(1)堆積期間の異なる生ごみコンポストのpH、ECは堆積期間との関連性が認められなかった。T-Nは堆積期間との関連が認められなかったが、T-Cは堆積期間とともに減少していた。このためC/N比は堆積が長いほど減少した。P2O5は堆積期間との関連性が認められなかった。K2Oは堆積が進むほど増加していた(表1)。(2)ベンゼン・エタノール抽出画分(主に脂溶性成分)とセルロースおよびヘミセルロース画分は堆積期間に伴って減少する傾向が認められた。その一方でリグニンは増加する傾向が認められた(図1)。(3)植害試験では、対照区の乾物重の75%に満たないものは標準量区では1点、3倍量区では3点認められた。C/N比と標準量区・乾物重との間には高い相関があり、3倍量区でも0、3日を除くと高い相関が認められた。発芽指標値は標準量区、3倍量区ともに植害試験の結果と対応した(図2)。また、3倍量区・乾物重が75%以下を示すコンポストは発芽指標値でも65%以下の値を示した。(4)堆積0日のコンポストの施用により、生育量の低下、たまねぎ収量の減少、小球化が認められた(表2)。その一方で堆積30日、160日施用区では収量が化学肥料区と同等であった。(5)材料、製造方法の異なる生ごみコンポスト植害試験で、3倍量区で対照区の乾物重の75%以下のものが4点認められた。標準量区の乾物重と幼植物試験の発芽指標値の関係は、48時間後、72時間後の指標値とも相関が低かった。一方3倍量区については48時間後の指標値とより高い相関関係を示し、発芽指標値が対照の65%以下のものは3倍量区の乾物重が75%以下であった(図3)。た(表2)。その一方で堆積30日、160日施用区では収量が化学肥料区と同等であった。(6)以上より発芽シートを用いた簡易幼植物試験において、48時間後の発芽指標値が対照の65%以 下のものは、植害の生じる恐れのあるコンポストと判別する事が可能であった。





4.成果の活用面と留意点
 1)植害試験および簡易幼植物試験では35〜40℃で乾燥し、粉砕した生ごみコンポストを用いた。
 2)本試験において判別可能なのは植害試験における発芽、初期生育の影響の有無である。窒素飢餓についてはC/N比の測定、もしくは栽培試験が必要である。

5.今後の問題点
  1)他の有機質肥料への適用