成績概要書(2004年1月作成)
課題分類:
研究課題:石狩川流域における客土資源の分布と汎用田に対する利用指針
       (道営土地改良事業計画地区土壌調査)
担当部署:中央農試 農業環境部 環境基盤科・農政部 設計課
担当者名:
協力分担:なし
予算区分:道費(S43〜農村計画課調査計画費,H13〜15設計課調査費)
研究期間:2001〜2003年度(平成13〜15年度)
1.目的
 石狩川流域において、客土材に適した理化学性を有する土壌資源の分布と各土壌の理化学的特徴を明らかにするとともに、良食味米生産や水田の汎用利用に対応する客土材の利用指針を設定する。

2.方法
1)調査地域:上川・空知・石狩支庁の土取り場及びその可能性がある地点(265地点)
2)石狩川流域における客土の実施実態
 道営土地改良事業土壌調査報告書及び事業計画概要等から土取り場位置等を整理。
3)石狩川流域における客土材の理化学性
 分析項目:農学会法粘土、pH(H2O)、pH(KCL)、土壌酸度(Y1)、陽イオン交換容量、交換性カリウム・カルシウム・マグネシウム、有効態リン酸(Bray-No.2)、リン酸吸収係数、可給態ケイ酸(湛水保温静置法)、遊離酸化鉄(浅見・熊田法)、易還元性マンガン、0.1N塩酸可溶性銅・亜鉛・カドミウム、交換性ニッケル、イオウ(水野法)

3.成果の概要
1)石狩及び空知管内における泥炭地の多い各市町村ではこれまでに5千ha超のほ場で客土が行われた。土取り場は石狩川両岸の段丘、丘陵地に存在し、中下流域では浚渫土も利用された。客土材の土性はC〜CLが半数以上で、本田の易耕性や排水性の低下が問題となっている。そのため、粗い客土材を使う例も増えていた。
2)客土材のpH(H2O)は5.5未満が44%、Y1 5以上が67%と酸性が強い。培養窒素及び有効態リン酸は少なく、CECは中庸が多く、塩基類は比較的高含量である。
3)可給態ケイ酸に富む客土材は広く分布するが、遊離酸化鉄に富む客土材は少ない(図1)。通常の客土では、本田の可給態ケイ酸及び遊離酸化鉄を低下させない観点から、客土材の可給態ケイ酸は16mg/100g以上、遊離酸化鉄は2%以上とすることが望ましい。
4)石狩川流域には中粗粒質の客土材が存在し、転換畑の物理性改善等に利用可能である。ただし、この客土材は銅や亜鉛に乏しいため、客土材の銅と亜鉛の指針値は微量要素欠乏の防止から銅0.5〜4.0mg/kg、亜鉛2〜20mg/kgとした。なお、指針値の上限値は客土後の家畜糞尿系の堆肥施用の可能性を考慮し土壌診断基準値の上限値の50%とした。
5)作物生育上障害となる成分として、本地域には交換性ニッケル含量の高い客土材があり、超塩基性岩母材の地域で留意が必要である(図1)。また、イオウが高い酸性硫酸塩土壌も点在する。これらの分布やこれまでの転作作物でのニッケル過剰障害の発生状況などを考慮すると、客土材の交換性ニッケルは1.5mg/kg未満、イオウは0.05%未満が妥当である。また、石礫は粒径30mm以上が5%未満とする。
6)これらの客土材の各成分を含量別にマップ化し、その利用指針を設定した(表1)。



                                 図1 客土材の代表的な成分の分布



表1 汎用田に対する客土材の利用指針



4.成果の活用面と留意点
1)本成果は石狩川流域で調査された結果に基くが、得られた指針は全道の水田地帯の客土材にも適用が可能である。
2)本成果は土取り場選定のための参考とするものであり、客土実施にあたっては必ず利用する土取り場毎に客土材の理化学性の分析を行い、適性を判断すること。
3)客土材分布図を利用するにあたっては、各成分含量の傾向を調査地点近傍の山地、段丘及び丘陵地にのみ適用し、調査地点から離れた場所に適用しない。

5.残された問題点とその対応
1)カドミウム等の重金属類の土壌診断基準値設定と客土材への適用