成績概要書(2004年1月作成)
研究課題:酪農雑排水浄化のための人工湿地(酸化池)モデル
 (指定試験)草地酪農地帯における環境負荷低減技術の開発
        1)草地・湿地における水質浄化技術の開発
 (国費受託)湿原流入水の水質制御技術の開発
担当部署:道立根釧農試・研究部・草地環境科
協力分担:北海道農業研究センター 畜産草地部 上席研究官 早川嘉彦
予算区分:指定試験 国費受託
研究期間:1999〜2003年度(平成12〜15年度)
1.目的
酸化池による酪農雑排水中窒素およびリン浄化能力を明らかにし、人工湿地を利用した酪農雑排水浄化システム設計のための基礎資料を得る。

2.方法
【室内モデル試験】内寸W39.7×L59.7×D44.7cmのコンテナに底土を充填し、水深10cmとなるように湛水し、湿地植生を移植した。これを3個連結して順次越流させた。
試験処理:滞留日数(5、15、30、60日滞留)、汚水濃度((牛乳167、100、50倍希釈)、(スラリー42、25倍希釈))、汚水種類(牛乳、スラリー希釈水)、植生(ガマ、ヨシ、無植生)
【野外試験】内寸W3×L8 m、水深0.25mの池を3個連結し順次越流させた。底面と側面はシートで遮水した後、底には土壌を0.2m敷いた。植生としてガマを1.4本/m2移植した。2001年は滞留日数を60日、2002および2003年は30日とした。

3.成果の概要
【室内モデル試験】
1) 汚水として牛乳希釈水を用いた場合、5日まで滞留日数を短縮すると流出水中の全窒素、全リン濃度が上昇し除去率は低下した。しかし、滞留日数を15日より長くしてもそれ以上流出水濃度は低下しなかった(表1)。
2)投入する牛乳希釈水の全窒素および全リン濃度を上げると流出水中の全窒素および全リン濃度は上昇した。流出水の濃度が上昇し始める投入水中の全窒素および全リン濃度は全窒素で40〜80mgN/L、全リンでは10〜20mgP/Lの間にあると考えられた。一方、除去率は本試験の濃度の範囲では投入した牛乳希釈水の濃度が高いほど高まった(表1)。
3)全窒素濃度を一定としてスラリー希釈水および牛乳希釈水を投入した場合では、流出水中の全窒素および全リン濃度はスラリー希釈水を用いた方がやや高い傾向にあったが、その差は小さかった。したがって、いずれの汚水に対しても類似した浄化能を発揮し得ると期待できた(表1)。
4)湿地植生として、ガマ、ヨシおよび無植生について比較した。無植生の場合は流出水中の全窒素および全リン濃度が経時的に上昇した。したがって、長期間の利用を想定すると、植物を栽培した方が望ましいと考えられた(図1)。
【野外試験】
5)根釧農試牛舎雑排水を沈殿槽で沈降後、上澄みを酸化池(幅3m、長さ8m、3連)に投入した結果、投入水の濃度は全窒素で平均45.2〜55.4mgN/L、全リンで7.7〜17.5mgP/Lであった。それに対し流出水濃度は全窒素で3.5〜10.9mgN/L、全リンで0.7〜2.7 mgP/Lと、明らかに濃度が低下していた(図2)。
6)投入水の全窒素および全リン濃度が大きく変化しても、流出水の全窒素および全リン濃度はそれほど変動しなかった(図2)。
7) 2002年における除去率は全窒素が62%、全リンが76%であり、コンテナを用いたモデル試験の30日滞留における除去率(全窒素が74%、全リンが95%)よりやや小さかった。

以上の基礎データにより、パーラー排水を対象に酸化池を中心とした浄化システムの試案を作成した(図3)。











図2. 野外試験における投入水および流出水の全窒素および全リン濃度の推移




図3. 酸化池によるパーラー排水の浄化システム(搾乳頭数100頭に対応する試案)



4.成果の活用面と留意点
 酸化池を用いた酪農雑排水の浄化システムの基礎数値となる。
 糞尿が混入した汚水を処理する場合には、固形分をあらかじめ除去してから酸化池に投入する必要がある。

5.残された問題とその対応
 1)冬季間の浄化対策
 2)耐用年数の検討