成績概要書(2004年1月作成)
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 研究課題:テンサイ褐斑病のモニタリング開始時期の決定法
     (総合的病害虫管理技術 てんさい褐斑病発生予測システムの構築)
 担当部署:病害虫防除所 予察課
 協力分担:
 予算区分:道費(クリーン)
 研究期間:2001〜2003年(平成13年〜15年度)
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1.目的
 テンサイ褐斑病の初発時期と初発を誘起する要素を精査し、テンサイ褐斑病の効率的薬剤防除のためのモニタリング開始時期の決定法を開発する。

2.方法
(1)過去の無防除輪作ほ(予察定点)調査結果とアメダスデータ(日報)から初発時期までの気象条件を整理した。
(2)感染条件と潜伏期間の調査を行い、感染好適条件を特定した。
(3)感染好適日の出現頻度と発病株率50%到達日の関係を解析した。

3.成果の概要
(1)初発期は、長沼・訓子府・芽室いずれの地点についても7月2半旬から6半旬までの間が多かったが、早発・遅発年を含む年次間差は大きかった。初発は積算気温、積算日照時間、積算降水量には左右されなかった。

(2)本病の潜伏期間はアメダス平均気温が20℃のとき13日間、15℃のとき23日間で、平均気温による潜伏期間の予測は可能であった。

(3)一次感染には降雨が必要であった。感染好適条件(一次感染)は、初発日から潜伏期間を遡った日の気温条件と既知の本病原菌の生育条件から設定した。即ち、降雨があり、降雨当日またはその翌日に日照があり、当日と翌日の気温がアメダス最低気温5℃以上、平均気温8℃以上、最高気温10℃以上35℃未満、翌日のアメダス最高気温時の相対湿度が60%以上、これらの条件を全て満たした日を感染好適日とした(表1)。
(てんさいの葉数が12枚より多い場合は降雨日とその翌日は株元湿度が60%以上に保たれた。)

(4)無防除輪作ほ場(予察定点)における感染好適日の頻度と発病株率が50%に達する日との関連を解析したところ、6〜7月の感染好適日数が少なければ早い時期に発病株率が50%に達することはなかった(図1)。以上より6月1日から7月の各旬までに出現した感染好適日数から、モニタリング開始時期を決定する手法を開発した(図2、3)。

表1 感染好適日の条件
  降  雨 日  照 当日および翌日の温度 湿  度
必要条件 降雨がある。 当日またはその翌日に
日照がある。
最低気温5℃以上、
平均気温8℃以上、
最高気温10℃以上、
35℃未満
翌日の最高気温時
相対湿度が60%以上*
*:てんさいの葉数が12枚より多いときは、相対湿度は60%以上とみなせる。


図1 6/1〜7/31の感染好適日数と病株率50%到達日



   注)●■▲は7/10の判定でモニタリング開始済み
図2 7月20日の判定例

感染好適日数計測日 判定基準 モニタリング開始
図3 モニタリング開始日

4.成果の活用面と留意点
 本成績は、無防除輪作ほ場(予察定点)における調査結果に基づくものである。
 発病株率50%到達日を把握するためのモニタリング開始時期の決定に用いる。
 発病株率調査は、平成8年度指導参考事項「テンサイの主要病害虫に対するモニタリング手法の開発」に従って行う。

5.残された問題とその対応
 感染好適日の出現頻度が高くても発病株率50%に達するのが遅い年次がある。このような年次のモニタリング開始時期の精度を高める必要がある。