成績概要書(2004年1月作成)
課題分類:
研究課題:インターネットを活用した農産物販売の実態とサイト運営手法
担当部署:中央農試 生産システム部 経営科
担当者:
協力分担:(社)北海道地域農業研究所
予算区分:共同(民間)
研究期間:2002年度(平成14年度)

1.目的
インターネットの普及拡大に伴って,農村地域においてもインターネットを利用した農産物販売(以下,インターネット販売という)が広がっている。農家が実施するインターネット販売の実態を解明し,農産物流通における経済性について検討する。加えて,インターネット販売を成功するための基本とそれに必要なホームページ作成及び運営手法を提示する。

2.方法
1)ホームページ(以下,HPと略す)を開設してインターネット販売を行う全道の農家を対象に,アンケート調査を実施した。アンケート調査は,道内の農家136戸を北海道農政部の農業ビジネス広場「産直農産物コーナ」等より抽出して郵送方式で実施した。
2)インターネット販売に取り組む米生産農家を対象に,調査地域の農業構造分析と対象農家の実態調査を実施し,インターネット販売の経済性について検討する。
3)アンケート調査農家の運営サイト等の分析から,インターネット販売を成功するための基本とそれに必要なHP作成及び運営手法を検討する。
3.成果の概要
1)アンケート調査の有効回答数は64件(47.1%),回答農家の概要は表1に示した。インターネット販売は「生産した農産物を直接消費者に届けたい」という目的で開始した農家が多いが,その効果があったとする回答は少なく,インターネット販売による収入が少ないことが問題となっている。しかし一方では,100万円以上の収入を上げている農家が約1割を占めており,農業収入の拡大に結びついている成功事例も出現している。数量化Ⅱ類を適用して,インターネット販売収入の多少がHP開設農家の経営概況や作成したHPについてどの程度の違いに起因するものなのか,それらの相互規定的な関係を検討した。その結果,インターネット販売収入増に専業農家と経営者の年齢及びHPの掲載内容の果たす役割の大きいことが確認された(表2)。
2)空知管内で米のインターネット販売に取り組む米生産農家(以下,A農家という)の分析からインターネット販売の経済性について検討した。A農家では,インターネット販売による新たな米流通を取り入れた経営であり,その特徴は,減農薬米や無除草剤栽培の「アイガモ米」の販売である。インターネット販売と農協等に出荷する計画流通米を比較したところ,インターネット販売による粗収益が増加することが明らかとなった(図1)。ただし,インターネット販売の米生産は,生産費用が多くかかるため(表3),販売価格は計画流通米の10kg当たり3,661円に対して4,100円に上昇する。そのため,インターネット販売を行うためには,消費者が価格条件を納得して購入してもらうための特長ある米づくりが必要である。
3)インターネット販売成功の基本は,インターネットを利用する消費者にHPを「認知」してもらい,それを訪れる消費者,すなわち,潜在的顧客を真の顧客に「転換」し,その顧客が長く利用してもらうための「顧客維持」である。認知の方法は,HPの作成においてMETAタグの記載が必要である。また,真の顧客への転換には,HPの掲載内容や操作方法が重要であり,特に商品の紹介・注文ページに簡単に進めることと,サイト内で迷子にならない仕組みが不可欠である。そして,長期顧客としてHPを利用してもらうためには,コミュニケーションの役割は大きく,電子掲示板は双方向通信手段として有効に機能する。加えて,インターネット販売を成功するためには,送料を低く抑えるための営業活動やマーケティングが要である(表4)。













4.成果の活用面と留意点
ホームページを開設してインターネットによる農産物販売を実施する新規農家および販売収入が低迷している農家サイトの運営管理に活用できる。

5.残された問題とその対応
 米流通における付加価値の高い製品開発と販売対応の検討が残されている。これについては,新規課題において対応する。