成績概要書(2004年1月作成)

研究課題:北海道米の広域調査によるタンパク変動要因
担当部署: 道立上川農試 研究部 栽培環境科、道立中央農試 生産システム部 栽培システム科
担当者名:
協力分担: 北海道米麦改良協会北海道米食味分析センター、農業改良課
予算区分: 道費
研究期間: 1999?2003年度(平成11?15年度)

1. 目的 北海道産米は栽培地域が広く、土壌条件、気象条件が大きく異なり、品質の地域変動および年次変動が大きい。これら品質の平準化を図るため、地帯別にタンパク質含有率に及ぼす栽培技術および土壌条件を明らかにする。

2. 方法 
(1) 実態把握定点
 全道のタンパク質含有率の実態把握を目的として、全道各市町村について水稲うるち米作付面積25haに対し1点の定点圃場を設置した。全道に設置された定点数は5172点、うち空知支庁管内は2487点(48%)、上川支庁管内は1152点(22%)。
(2)技術解析定点
 タンパク質含有率の変動要因解析を目的に、1普及センターあたり20?30点、全道で602点の定点圃場を設置した。定点圃場は、1999?2001年については、普及センターの既往の調査圃場などを有効に活用しつつ、地域内での土壌や気象条件、標準的な栽培技術を考慮して選定した。2002年については、各定点圃場を、「慣行」栽培と「改善」栽培の対になるように選定した。
3. 結果の概要
(1) 1999〜2002年の支庁別高品位米(タンパク6.5%以下)割合を高い順に並べると、後志支庁(32.3%)、留萌支庁(29.8%)、胆振支庁(23.5%)、日高支庁(20.0%)の順で、これらの支庁では、泥炭土の割合が0〜3.2%と、他の支庁に比べて極めて少ない特徴があった(表1)。
(2) 1999?2002年のタンパク質含有率から各年の偏差値を算出し、その平均値と変動係数をもとに、全道を以下の4タイプに区分できた。区分Ⅰ:低タンパク・変動少:上川中央部、留萌、空知中?北部、後志、西胆振、区分Ⅱ:低タンパク・変動大:渡島、日高中部、区分Ⅲ:高タンパク・変動少:上川南部、石狩南部、区分Ⅳ:高タンパク・変動大:石狩中?北部・沿岸、空知南部、檜山、日高南部(図1)。
(3) タンパク質含有率に及ぼす影響度を土壌区分、苗の種類、品種区分、稲わら処理方法、排水良否、施肥法区分(全層、全層+側条)を説明変数として、数量化Ⅰ類を用いて年次別に評価した。1999年では土壌区分、苗の種類、品種区分、2000年では土壌区分、苗の種類、品種区分、排水良否、2001年では品種区分、土壌区分、排水良否、2002年では土壌区分、品種区分、苗の種類の順にそれぞれ影響が大きかった(図2)。
(4) 収量とタンパク質含有率で4つのクラスターに分類し(図3)、数量化Ⅰ類で各クラスターにおけるタンパク質含有率に及ぼす影響を解析した。クラスター1(収量多・タンパク並)では暗渠有り、初期生育良好が、クラスター2(収量並・タンパク低)では「ほしのゆめ」、栽植密度30株/㎡以上、心土破砕無し、稲わら春鋤込み、初期生育良好、褐色低地土が、クラスター3(収量低・タンパク並?高)では「ほしのゆめ」、排水良好、出穂期前の中干し無しが、クラスター4(収量並・タンパク高)では「ほしのゆめ」、出穂期前の中干し無しが、それぞれ有意にタンパク質含有率が低かった(図4)。ただし、排水改善および稲わら搬出処理は、不安定地帯のタンパク質含有率が高い地域ほど積極的に取り組んでいるため、技術の評価には背景にある他の要因を考慮する必要がある。本試験では諸技術の効果は土壌の影響よりも小さく、さらなる改善技術の開発と実践が必要と考えられた。





    図1.タンパク質含有率偏差値区分
注)偏差値は1999?2002年の市町村別のタンパク質含有率からみた傾向値であり、ランクを示すものではない。








4.成果の活用面と留意点
(1)本試験の結果はタンパク質含有率に及ぼす個々の技術の影響を直接的に評価したものではない。(2)低タンパク米栽培技術マニュアル作成における参考とする。

5.残された問題とその対応
(1)販売用途別の地域区分および栽培技術マニュアルの作成