成績概要書(2004年1月作成)
研究課題名: クリーン米生産のための減・無除草剤栽培技術(水田雑草種子の土壌中における生活環と低減条件の解明)
担当科部署: 中央農試生産システム部栽培システム科 上川農試研究部栽培環境科
予算区分 : 道費
研究期間 : 1999〜2003年度(平成11〜15年度)
1.目的: 代かきによる除草効果を利用し、水稲の減・無除草剤技術を確立する。これに加えて、府県で利用されている米ぬか散布による除草効果を北海道で検討する。
2.試験方法
 Ⅰ.雑草発生期間の把握と代かきによる除草効果の検討(1999〜2003年) :移植時期(5月下旬〜6月中旬)と代かき回数(1,2回)を組み合わせ、抜き取りにより雑草の発生と代かきによる除草効果を調査。
 Ⅱ.2回代かきを利用した除草技術の開発(2001〜2003年)
1.減除草剤栽培の検討:移植時期(5月下旬〜6月上旬)×代かき回数(2回)のプレチラクロール(1成分除草剤で有効成分・使用量は、1kg粒剤が4%・1kg/10a、ジャンボ剤が15%・30g×10個/10a)の除草効果を調査。
2.無除草剤栽培の検討:移植時期(6月上旬〜中旬)×代かき回数(2回)の除草効果を調査
 Ⅲ.米ぬかと2回代かきを利用した雑草防除技術の検討(2002〜2003年)
温度条件と米ぬかによる除草効果(室内試験):タイヌビエ、ミズアオイに対する20〜30℃の温度範囲での米ぬかによる除草効果を調査。
 水田における米ぬかの除草効果の検討:米ぬか(移植1日後施用、100、200kg/10a)による除草効果を検討。
3.試験結果
(1) 雑草の50%が発生する簡易有効積算温度は、各草種とも105〜130℃の範囲にあり、この有効積算温度に達する日は岩見沢試験地、上川農試ともほぼ5月第6半旬であった。70%が発生する時期はほぼ6月第1半旬であった(表1)。
(2) 雑草の発生パターンは、慣行栽培(5/21移植)で概ね移植10日後にピークを示し、30日後にほぼ発生が見られなくなった。2回代かき(5/31移植)の雑草発生量のピークは大きく低下し、除草効果が認められた。2回代かき(6/13移植)では、この傾向がより大きかった(図1)。
(3) 2回代かきと1成分除草剤(プレチラクロール)を組み合わせた区(表2の①)の残草量は無処理区の1% (未掲載データを含めた平均)であった。本栽培法における精玄米収量は慣行栽培区に対し、99%であった(表2)。しかし、80%程度まで減収する年もあった。
(4) 2回目の代かきを6月上旬に行う無除草剤栽培(表3の試験区⑤)の残草量は、13%(未掲載データを含めた平均)であった。また精玄米収量は慣行栽培に対し、89%であった(表3)。しかし、70%程度まで減収する年もあった。
(5) 米ぬか散布区の残草量は0〜100%以上の範囲にあり、雑草の発生量が50g/㎡以上では大きく変動した。平均気温が20〜25℃の範囲では米ぬかの分解による有機酸等の生成量が除草に対して十分な量とならなかったと考えられ、そのため大きな除草効果が得られなかった(図2)。
(6) 以上を取りまとめると、水稲機械移植栽培基準の晩限移植期以内(成苗ポットで6/5)であることを前提とするが、代かきを2回実施することで、除草剤の使用回数を1回(成分回数)にする減除草剤栽培、および除草剤を使用しない無除草剤栽培が可能であることを示した(表4)。









表2 2回代かきと1成分除草剤を組み合わせた場合の残草量と収量性


表3 2回代かきによる無除草剤栽培の残草量と収量性

4.成果の活用面と留意点
(1)クリーン農業を推進する場面で活用する。
(2)本栽培法は成苗機械移植に適用する。
(3)施肥法は全量側条施肥、または育苗箱施肥と側条施肥との組み合わせで実施した。
5.残された問題点と今後の対応
(1)2回代かき栽培における早生品種での収量性の検討。
(2)除草機との組み合わせによる新しい体系化除草技術は新規課題(有機)で対応予定。