成績概要書(2004年1月作成)
課題分類:
研究課題:ホイール型トレンチャを利用した補助暗渠施工技術
      (ホイール型トレンチャ利用による低コスト暗渠施工技術の確立)
担当部署:根釧農試 研究部 酪農施設科、草地環境科
協力分担:
予算区分:受 託
研究期間:2002〜2003年度

1.目 的
 新たに開発されたトラクタ直装式ホイール型トレンチャ(以下、ホイール型トレンチャまたはトレンチャと略す)並びに牽引式疎水材埋設機(以下、疎水材埋設機と略す)を利用した暗渠施工法について、作業機の性能と、その排水効果を明らかにする。

2.方 法
1)ホイール型トレンチャおよび疎水材埋設機の暗渠施工性能
 (1)供試機 トレンチャ:SYT-900、疎水材埋設機:SYF-5200(疎水材:火山れき)
 (2)試験期日 平成14年9月〜11月
 (3)試験場所および土壌区分 清水町(泥炭土)、根室市、標津町(湿性火山性土)
 (4)調査項目 機体諸元、作業速度、作業精度、掘削時動力
2)暗渠の排水効果
 (1)調査期間 平成15年4月〜11月
 (2)調査圃場 湿性火山性土の草地(標津町)
    圃場区画:260×45m(うち調査区画:約30×45m(高低差約190cm))
    暗渠間隔:10m
    暗渠本数:3(高い方から配線①、配線②、配線③)
    ※)各配線は隣接する明渠に対して約108°
 (3)調査項目 排水量、地下水位

3.結果の概要
1)農家独自で暗渠が施工可能なホイール型トレンチャおよび牽引式疎水材埋設機を用い、泥炭土および湿性火山性土の圃場で火山れきを疎水材とする有材トレンチ型の疎水材暗渠を施工した。施工は安定しており、掘削深は909〜930mm、幅は155〜170mm、疎水材層の厚さは586〜637mmであった。
2)平均掘削速度は216〜396m/h、平均疎水材埋設速度は336m/h(標津町)であった。ブルドーザでの表土埋め戻し作業能率は約556m/hであり、湿性火山性土における施工システム全体の作業能率は、200〜300m/h程度である。
3)湿性火山性土の圃場(根室市)における掘削時所要動力は、平均101.8PS、最大126.7PSであった。
4)融雪期の排水量は59.8〜2506.4L/h(3.2〜133.7mm/day、集水面積450m2)であり、気温の変動に対応して変化する傾向がみられた。また降雨(三日間で約180mm)後の排水量は5.1〜365.2L/h(0.3〜19.5mm/day、集水面積450m2)であり、排水性は良好であった。
5)火山れきを疎水材とする疎水材暗渠により、排水不良地点(配線③付近)においては一日あたり最大で13.5cmの地下水位の低下がみられた。
6)排水不良地点(配線③付近)の深さ5〜40cmにおける土壌硬度は、施工時は4.4〜11.2kgf/cm2であったが、施工10ヶ月後には8.8〜12.7kgf/cm2と増加していた。

 以上の結果より、トラクタ直装ホイール型トレンチャおよび牽引式疎水材埋設機による火山れきを疎水材とする疎水材暗渠の施工は安定しており、施工した暗渠により融雪水が排水され、降雨後に地下水位が低下し、土壌硬度が上昇する効果があることを確認した。




図1 施工の流れ(模式図)



表1 疎水材埋設機主要諸元



表2 トレンチャ主要諸元



表3 各地の施工精度および所要動力



表4 作業工程表




図2 融雪期の排水量と気温(各配線の集水面積:450m2)




図3 日降水量と降雨後の排水量
(各配線の集水面積:450m2)



表5 各配線付近の日あたり地下水位低下量



表6 配線③付近の施工時と10ヶ月後の土壌硬度※)



4.成果の活用面と留意点
1)適応土壌は、湿性火山性土、泥炭土である。
2)適応圃場は、落水口に向かって緩やかに傾斜している圃場であり、落水口は平水位よりも高くなるように設ける。また施工間隔は、地形、滞水状況を考慮して決定する。
3)トレンチャの適応トラクタは、130PS以上が望ましい。
4)施工前には既設暗渠の有無と位置を充分に確認する必要がある。

5.残された問題とその対応
1)トレンチャの重粘土地域への適応