成績概要書(2004年1月20日作成)
研究課題:深耕爪付き施肥播種機による作土層の透水性向上技術
      (寒地畑作地帯における省力低コスト・安定生産のための土壌管理技術改善と野菜導入畑輪作体系の確立
       2)省力耕法による低コスト畑輪作体系の確立 (3)過湿化軽減のための機械作業技術の開発)
担当部署:十勝農試 生産研究部 栽培システム科
協力分担:
予算区分:国費補助(地域基幹)
研究期間:2000〜2003年度(平成12〜15年度)

1.目的
簡易に作土層の透水性を向上させる技術として,施肥播種時に深耕爪により,畦間のトラクタタイヤ跡の土壌踏圧層やロータリ耕盤層を破砕する,深耕爪付き施肥播種機の作業特性,透水性向上効果,生育収量に及ぼす効果を検討する。

2.方法
1)試験場所および土壌タイプ:十勝農試(沖積土),芽室町(湿性火山性土)
2)供試機:深耕爪付き施肥播種機
3)供試作物:小豆,大豆,てん菜
4)調査項目
(1)作業特性:深耕爪作用深,けん引所要馬力,播種精度,接地駆動輪すべり率
(2)透水性向上効果:土壌硬度,土壌水分,三相分布,表面水の浸透量
(3)生育収量に及ぼす効果
生育中期の生育量,収穫期の生育収量


供試機外観(A機,ストレート型装着)

供試機仕様諸元

供試深耕爪仕様諸元

3.成果の概要
1)総合施肥播種機に5本の深耕爪が装着できるフレームおよび金具を取り付けた。爪形状はストレート型,ウェーブ型の2種類,作用深はそれぞれ110〜350mm,110〜230mmである。
2)けん引所要馬力は,深耕爪2本では4〜6PS程度,5本では7〜10PS程度となった。適応トラクタは深耕爪2本では40PS級以上,5本では60PS級以上である。
3)深耕爪作用時には接地駆動輪すべり率(作業速度0.8m/s前後)は増加し,平均株間は6〜12%広くなるため,施肥量,株間の調整が必要である。
4)深耕爪によりトラクタ走行跡の畦間の土壌硬度が大きく低下し,固相率の低下と気相率の向上が認められた(図1,表1)。土壌物理性の改善効果は5本爪が優っていた。作用深15cmでは,ロータリ耕盤層の破砕が不十分であるが,23cm以上では安定して効果が認められた。
5)深耕爪によりトラクタ走行跡の畦間および株間の表面水の浸透量は,畦間で25〜50mm/h,株間で30〜48mm/h増加した(表2)。浸透量はウェーブ型深耕爪が優っていた。
6)深耕爪により,各作物とも生育中期の生育量および収穫期の子実重や根重が優った(表3,4)。移植てん菜では5本爪の場合は,深耕爪なし・深耕カルチありと比べて9月上旬の土壌硬度が小さく,深耕カルチは省略できる。
7)以上のことから,深耕爪付き施肥播種機により土壌物理性が改善され,作土層の透水性を向上させることが可能である。


図1 土壌硬度分布(H13.6月中旬,芽室町,湿性火山性土)

表1 含水比,三相分布

注)深耕爪 S:ストレート型,その他は2種の平均(表3,4も同様)
測定位置:トラクタ走行跡の畦間,深さ5〜15cm
調査時期:湿性火山性土てん菜 5月中旬,その他 7月下旬

表2 表面水の浸透量(mm)

注)深耕爪 S:ストレート型,W:ウェーブ型,作用深23cm
H15.8月上旬,十勝農試,沖積土,大豆

表3 生育収量(てん菜)

注)深耕カルチ:中耕除草機に深耕爪を装着したカルチ作業(作用深約20cm,移植後2週間後に実施)
深耕爪作用深:23cm,土壌硬度:9月上旬,深さ5〜15cm

表4 生育収量(小豆,大豆)

表5 深耕爪付き施肥播種機の利用法と効果

4.成果の活用面と留意点
1)湿性火山性土などの土壌踏圧層,ロータリ耕盤層破砕技術として利用可能である。
2)深耕爪付き施肥播種機では株間が広くなるため,施肥量,株間の調整が必要である。

5.残された問題とその対応
他作物での効果の確認。「高品質ばれいしょ生産を目指した省力培土・収穫技術」(平成16-18年)において,深耕爪による種いも直下のロータリ耕盤層破砕効果について検討する。