成績概要書(2004年1月20日作成)
課題分類:研究課題:菜豆(金時・手亡)の低損傷収穫技術
       (菜豆類の低損傷収穫機実用化)
担当部署:十勝農試 生産研究部 栽培システム科
担当者名:協力分担:予算区分:道費(豆基)
研究期間:2001〜2003年度(平成13〜15年度)

1.目的
菜豆(金時・手亡)において,収穫損失の低減,損傷粒の大幅な低減による高品質省力収穫,安定生産を図るため,コンバインおよびピックアップスレッシャの開発改良を行い,開発機による低損傷収穫技術を明らかにする。

2.方法
1)試験場所:十勝農試圃場および芽室町
2)供試品種:「大正金時」,「福勝」,「雪手亡」
3)供試機:豆用コンバイン3機種およびピックアップスレッシャ2機種
収穫法 収穫機 開発改良点
直接(ダイレクト)収穫 豆用コンバイン こぎ胴周速度変速機構,こぎ歯・受網形状変更
予乾(ピックアップ)収穫 2条自走式スレッシャ 自走化,3胴直流式,こぎ胴周速度変速機構
4条けん引式スレッシャ 作業幅拡大,2胴直流式に前処理部設置
4)調査項目
(1)作物条件:草丈,草高,最下着莢高,最下分枝高,倒伏角,総重量,収量,残葉量及び収穫時の茎・葉・莢・子実水分。
(2)収穫作業精度:作業速度,こぎ胴周速度,刈り取りおよび拾い上げ損失,脱穀選別損失。
(3)組成分析:収穫機の製品タンク内子実から一定量採取し,損傷粒(子葉に達している傷)と微損傷粒(子実表皮の傷)の重量割合を調査。手亡では汚粒調査も実施した。
3.成果の概要
1)菜豆収穫が可能な豆用コンバイン3機種とピックアップスレッシャ2機種の開発改良を行い,収穫試験を行った。3カ年の試験結果から,収穫総損失(収穫損失と損傷粒と微損傷粒の合計)5%を目標に菜豆(金時・手亡)収穫法をまとめた(表1)。
2)金時の豆用コンバイン収穫では,子実水分は「大正金時」が18〜26%,「福勝」が19〜25%,こぎ胴周速度は4.7〜5.6m/s,送塵弁位置は6以上が望ましい。倒伏角が45°以上の場合は作業速度を落とし,75°以上では追い刈り収穫を行う。収穫総損失は「大正金時」で2〜5%,「福勝」で3〜6%である。
3)金時のピックアップスレッシャ収穫では,子実水分は「大正金時」が18〜26%,「福勝」が19〜25%,こぎ胴周速度は3胴式で5.4〜6.6m/s,2胴式で6.1〜6.9m/sが望ましい。収穫総損失は「大正金時」で2〜5%,「福勝」で4〜6%である。
4)金時収穫時の損傷は,「福勝」で発生しやすいが,損傷粒1.5%未満で収穫できる。
5)「雪手亡」の収穫では,子実水分は18〜20%,こぎ胴周速度は豆用コンバインで5.5〜10m/s,スレッシャの3胴式で8m/s,2胴式で11m/sが望ましい。収穫総損失は1〜4%である。汚れ指数はいずれの収穫法も0.2以下と軽微であった。

表1 菜豆(金時・手亡)の収穫法
品 種 「大正金時」,「福勝」 「雪手亡」
収穫時期の目安 熟莢率ほぼ100%,子実水分「大正金時」18〜26%,
「福勝」19〜25%,通常では完熟期から6日以内
熟莢率ほぼ100%,(子実水分18〜20%,
通常では完熟期から1週間以降)
収穫機 豆用コンバイン ピックアップスレッシャ 豆用コンバイン ピックアップスレッシャ
作業速度 0.8m/s 0.7m/s以下 (0.6m/s) (0.6〜0.8m/s)
刈り取り・
拾い上げ方式
ロークロップヘッダ
回転丸鋸刃
ピックアップ装置 ロークロップヘッダ
回転丸鋸刃
ピックアップ装置
培土高さ 12〜18cm程度 12〜18cm程度 10cm程度 10cm程度
刈り高さ 0cm - -1〜0cm -
倒伏程度 倒伏角45°:作業速度0.5m/s
倒伏角75°:作業速度0.5m/s
         で追い刈り収穫
倒伏程度によらず収穫可能
(ビーンハーベスタ
またはビーンカッタ)
倒伏角30°程度まで 倒伏程度によらず収穫可能
(ビーンハーベスタ
またはビーンカッタ)
脱穀機構 軸流 直流 軸流 直流
こぎ歯 ワイヤツース ワイヤツース ワイヤツース ワイヤツース
こぎ胴周速度 4.7〜5.6m/s 3胴式:5.4〜6.6m/s
2胴式:6.1〜6.9m/s
5.5〜10m/s 3胴式:8m/s
2胴式:11m/s
送塵弁位置 6以上 6以上
受 網(格子) ピッチ22〜25mm 「大正金時」
:ピッチ20〜24mm
「福勝」:ピッチ24〜30mm
ピッチ22〜25mm ピッチ20〜30mm
刈り倒し時損失 1%未満 1%未満
刈り取り・
拾い上げ損失
1%未満 1%未満 1%未満 1%程度
脱穀選別損失 2%未満 「大正金時」:1%未満
「福勝」:2%未満
1%以下 1%未満
損傷粒 1.5%未満 1.5%未満 2%未満 2%未満
微損傷粒 「大正金時」:2.5%未満
「福勝」:3%未満
「大正金時」:2%未満
「福勝」:3%未満
収穫総損失 「福勝」:3〜6%「大正金時」:2〜5%
「大正金時」:2〜5%
「福勝」:4〜6%
1〜4% 1〜4%
※収穫後の乾燥等は「菜豆(金時類)の高品質収穫乾燥技術」(H12,指導参考事項,十勝農試)参照
  収穫総損失は刈り取り・拾い上げ損失,脱穀選別損失,損傷粒,微損傷粒の合計

4.成果の活用面と留意点
1)改良した豆用コンバイン,ピックアップスレッシャにより,収穫総損失の少ない金時および手亡の収穫が可能である。
2)子実水分を穀物水分計などで測定し,適正なこぎ胴周速度で収穫作業を行う。
3)手亡の収穫試験は,乾性火山性土および沖積土,子実水分20%程度における結果である。

5.残された問題とその対応
1)収穫作業能率および乾燥法は,平成16年度にとりまとめる計画である。
2)金時葉落ち不良時,手亡高水分時の収穫作業の確認