成績概要書(2004年1月作成)
研究課題:小豆の抗酸化活性の変動要因と簡易評価技術
       (豆類の抗酸化活性の変動と抗酸化成分の解析)    
担当部署:中央農試農産工学部農産品質科,帯広畜産大学畜産科学科食糧生産科学講座
協力分担:
予算区分:道費(豆基)
研究期間:2000〜2003年度(平成12〜15年度)
1.目 的
 小豆の抗酸化活性の変動について、品種や産地、栽培条件の面から検討するとともに、その簡易分析手法を開発する。また、抗酸化活性を有するポリフェノール成分を分離・同定し、その構造を解析する。これらのことにより、小豆の抗酸化活性に関する品種や栽培環境による変動を明らかにし、道産小豆の付加価値向上と需要の拡大に寄与する。
 
2.方 法
1)供試試料 
 ①1999〜2003年産小豆:北海道産小豆7〜11品種・中国産小豆3〜6銘柄
 ②圃場栽培小豆:2000〜2003年産「エリモショウズ」(施肥試験・遮光処理・開花時期)
2)分析・測定方法
 ①ポリフェノール含量の測定:フォーリン−デニス法により測定(標準物質;(+)カテキン)
 ②抗酸化活性の測定:DPPHラジカル消去活性測定法により測定(標準物質;0.2mM Trolox)
 ③抗酸化物質の分離精製:80%エタノール抽出物を逆相HPLC( TSK-GEL ODS-80TS)で分離
 ④抗酸化物質の構造解析:UV、IR、MS(FD-MS,FAB-MS)、NMR(JNM EX-240, JEOL)で構造決定
 ⑤近赤外分光法:インフラライザー500型(ブラン・ルーベ社,全粒分析用回転ドロワー装着)
 
3.結果の概要
1)小豆の抗酸化活性は豆類の中でも高く、特に道産普通小豆では大納言や中国産小豆よりも高かった(図1)。また、抗酸化活性とポリフェノール含量との間には、高い正の相関関係(r=0.974**)が認められた。
2)小豆の抗酸化活性やポリフェノール含量には、収穫年次や栽培地によって違いがみられた。気象要因に関しては、日照時間と抗酸化活性の間に正の相関関係(r=0.657**,図2)が認められ、遮光処理(50%遮光5週間)により抗酸化活性は低下することが確認された(図3)。
3)登熟過程における抗酸化活性およびポリフェノールの変動としては、登熟日数の短い子実ではこれらの値が高く、同一圃場から収穫された小豆であっても登熟程度によって抗酸化活性は異なるものと考えられた(図4)。
4)小豆に含まれる抗酸化成分として、カテキングルコシド(図5)、カテキン、ルチンなどのポリフェノール類が同定された。
5)抗酸化活性およびポリフェノール含量の簡易迅速評価法として、小豆全粒を用いた近赤外分光法が活用可能であり、原スペクトルの4波長からなる検量線において両者とも良好な精度での推定が可能であった(図6・表1)。
6)以上のように、小豆の抗酸化活性は道産普通小豆で高いが、収穫年次や栽培地により変動がみられ、登熟期間の日照時間が長いほど高くなることが判明した。また、小豆全粒を用いた近赤外分光法により、抗酸化活性の簡易評価が可能であった。






















4.成果の活用面と留意事項
1)本研究成果は、実需者、生産者および今後の育種に向けて、小豆の機能性(抗酸化活性)に関する情報として活用できる。
2)小豆の抗酸化活性の簡易迅速評価法は、機能性に優れた小豆の育種段階における選抜、および収穫物の調整段階における選別技術として活用できる。

5.残された問題とその対応
1)遺伝的背景の大きく異なる小豆(遺伝資源)、収穫調整方法および製あん過程(実需者段階)における抗酸化活性の変動。
2)ポリマー状の小豆高分子ポリフェノール縮合体の分離およびその構造解析。
3)小豆ポリフェノールの生体内における生理調節機能の解明。