成績概要書(2004年1月 作成)
研究課題:もち米品質がもち生地品質(色・物性)に及ぼす影響とその評価法
       (主食用もち米の栽培技術指針の策定およびその品質評価)
担当部署:中央農試 農産工学部 農産品質科,上川農試 研究部 栽培環境科
協力分担:名寄地区農業改良普及センター
予算区分:道費
研究期間:2000〜2003年度(平成12〜15年度)

1.目的
 もち生地品質(色・物性)を評価することにより、もち米品質がもち生地品質に及ぼす影響を明らかにし、北海道もち米の「やわらかい」特徴を生かした用途に適する高品質なもち米生産に寄与する。

2.方法
1)もち生地少量調製法の検討
 検討項目;試験用小型もち搗き機の開発、蒸米調製条件、もち搗き時間
2)物性測定機器によるもち生地の物性評価
 測定機器:テクスチャーアナライザー プローブ:φ2mm円筒型
測定項目:正の最大荷重(g)=「硬さ」、負の最大荷重(g)=「粘り」、負領域の仕事量(g・s)=「付着性」、負領域にかかる時間(s)=「伸展性」
3)もち米品質がもち生地品質に及ぼす影響
供試材料:2001-2002年産「はくちょうもち」(上川農試、風連・名寄現地圃場の栽培試験およびポット試験) 品質評価:もち米(白度、色、タンパク質含有率、アミロペクチン単位鎖長)
もち生地(色、物性) もち生地調製:試験用小型もち搗き機
4)未ハゼ粒がもち生地品質に及ぼす影響
供試材料:2001年上川農試、2002年中央農試産「はくちょうもち」 
品質評価およびもち生地の調製:3)と同じ

3.結果の概要
1)多数の実需者が用いる杵搗き調製法の小型化をはかり、多点数・少量試料に対応した試験用小型もち搗き機を考案した(図1)。これにより、精米5〜15gでもち生地の調製が可能となった。少量試料に対応したもち生地の調製手順を確立し、もち生地品質(色・物性)の評価手法を示した(図2)。もち生地物性の測定値は、家庭用餅つき機による調製法と比較して、絶対値は異なるが試料間での傾向は同じであった。
2)タンパク質含有率ともち生地のb*(黄味)には正の相関関係があり、タンパク質含有率が高まると黄味の濃い生地となった(図3)。府県産もち米のもち生地b*は10以下が多く、北海道もち米ではタンパク質含有率8%を下回るともち生地b*はおよそ10以下を示した。
3)もち米のタンパク質含有率ともち生地の「伸展性」には負の相関関係があり、タンパク質含有率が高まると生地伸びは低下し(図4)、主食用としてのもち生地物性が劣った。
4)もち生地の「硬さ」は登熟温度による影響が大きく、登熟温度が高いほど生地は硬くなった(表1)。「硬さ」に対して栽培管理の影響は小さかった。
5)精米のL*(明度)はハゼ粒より未ハゼ粒で低かったが、もち生地で差は認められなかった。24時間冷蔵後の生地の「硬さ」は未ハゼ粒で軟らかい傾向を示したが、その差は小さかった(表2)。
6)以上のことより、もち米の低蛋白化を目指した栽培管理により、もち生地の色(b*)および「伸展性」(伸び)は向上し品質改善が図られることが明らかとなった。また、もち生地の加工に際して、未ハゼ粒の混入は問題にならないものと考えられた(表3)。




図1 試験用小型もち搗き機






図3 タンパク質含有率ともち生地のb*(黄味)との関係 2001-2002年、「はくちょうもち」 上川農試・現地圃場 01年n=39、02年n=29




図4 タンパク質含有率ともち生地の「伸展性」の関係 材料および凡例は図3に同じ




4.成果の活用面と留意点
 1)高品質もち米生産のための栽培管理技術への情報として、生産者に活用できる。
 2)もち生地の品質に関する情報として、実需者に活用できる。
 3)少量もち生地調製法はもち米育種における選抜技術として活用できる。

5.残された問題とその対応
 1)もち米品質が蒸米(おこわ、赤飯)品質に及ぼす影響とその品質評価法