成績概要書(2004年1月作成)
課題分類:
研究課題:米粉のヨウ素吸収マルチスペクトル解析による新食味評価法の開発
       (アミロース多次元解析法の開発、高品位米品種の開発促進)
担当部署: 道立上川農試 研究部 栽培環境科
担当者名:
協力分担: ブラン・ルーベ株式会社
予算区分: 共同研究・道費
研究期間: 1999、2001〜2003年度(平成11、13〜15年度)

1. 目的 北海道米の食味を現在よりワンランクアップさせる新規評価法を開発し育成材料の選抜に応用することを検討する。

2. 方法 
 ブラン・ルーベ社Auto AnalyzerⅡにドイツZEISS社製Monolithic Miniature Spectrometerを接続し、ヨウ素吸収曲線(310〜1100nm)の測定を行った。
(1) アミロース分子量およびアミロース含有率が最大吸収波長に及ぼす影響
(株)中埜酢店の合成直鎖状アミロースおよび「きらら397」、「ほしのゆめ」、「彩」、「あきたこまち」をアミロースとアミロペクチンに分別調製し、最大吸収波長に及ぼす影響を検討した。
(2) 登熟温度がヨウ素吸収曲線および熱糊化性に及ぼす影響
ヨウ素吸収曲線に及ぼす登熟温度の影響をダル(彩、上育433号、空育164号、渡育239号、はなぶさ)、うるち(きらら397、ほしのゆめ)について検討した。
(3) アミロペクチン単位鎖長分布の分析
花城らの方法(蛍光標識とゲルろ過HPLC法)に準じてアミロペクチン単位鎖長分布を分析した。
(4) 重回帰分析およびPLS回帰分析による食味総合値の推定
ヨウ素吸収曲線の吸光度(256波長)を用いて重回帰分析とPLS回帰分析で食味総合値の推定をした。

3. 結果の概要
(1) ブラン・ルーベ社Auto AnalyzerⅡにドイツZEISS社製Monolithic Miniature Spectrometerを接続し、1時間に20点のヨウ素吸収曲線(310〜1100nm)の自動測定を可能にした。また、澱粉の質的な変動をとらえる指標として、最大吸収波長、Fr.Ⅰ/Fr.Ⅱ比(400〜600nmと600〜900nmの積算値の比)を検討した(図1)。
(2) 最大吸収波長(λmax)はアミロース分子量70,000以上で約598nmでほぼ一定であった。また、λmaxはアミロース含有率が高いほど長く長波長側にシフトした(表1)。
(3) λmaxはアミロース/アミロペクチン構成比と正の相関関係が認められ、品種間で回帰係数には差がなかった(図2)。アミロース含有率とFr.Ⅰ/Fr.Ⅱ比には強い負の双曲線の関係があり、アミロース含有率が高いほどFr.Ⅰ/Fr.Ⅱ比は小さかった(データ省略)。
(4) RVA(ラピッド・ビスコ・アナライザー)のセットバックはFr.Ⅰ/Fr.Ⅱ比が1.5以下では大きく変動するが、1.5以上では変動が小さかった(図3)。
(5) アミロペクチン単位鎖の短鎖/長鎖比はλmaxと正の相関関係が、Fr.Ⅰ/Fr.Ⅱ比とは負の相関関係が認められた(図4)。
(6) 食味官能総合値を310〜1100nmの波長を用いてPLS回帰分析による推定を行い、R2=0.533の推定式を得た(図5)。
(7) 本法は、これまでのアミロース含有率の測定と全く同じ分析手順・時間で精度の高いアミロース含有率の測定、熱糊化性の推定ができ、λmaxとFr.Ⅰ/Fr.Ⅱ比を選抜指標として効率的な良食味育種への活用が期待される。



















4.成果の活用面と留意点
(1) 育種現場における新しい食味評価指標として最大吸収波長およびFr.Ⅰ/Fr.Ⅱ比が活用でき、特に、老化性(RVAセットバック)を推定できる。
(2) ブラン・ルーベ社アミロース用オートアナライザーに適応する。

5.残された問題とその対応
(1) 育種現場における新しい食味評価法としての活用しながら改善すべき項目を抽出する。
(2) 食味官能値推定式の改善