新品種候補(2005年1月作成)
作物>夏畑作物>11>1-2-083-1
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育種事業課題名:だいず新品種候補系統「だいず十育237号」の概要
担当研究室:十勝農業試験場 作物研究部 大豆科
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キーワード:ダイズ、中生、大粒、臍および臍周辺着色抵抗性、コンバイン収穫適性、煮豆、味噌
1.特性一覧表
系統名:だいず十育237号  組合せ:十系793号/十交6225F8
特性 長所 1.臍および臍周辺着色抵抗性が強い白目大粒で、外観品質に優れる。
        2.低温抵抗性が「トヨホマレ」より強い。
        3.密植適性およびコンバイン収穫適性が高い。
        4.煮豆、味噌および納豆に適する。
    短所 1.豆腐の物性がやや劣る。
        2.高温年の収量が「トヨムスメ」よりやや劣る。
採用県と普及見込み面積:北海道 2,700ha

調査場所 育成地
(十勝農試)
農試および現地試験
Ⅲ(十勝・上川) Ⅳ(空知・胆振)
調査年次 平成14〜16年 平成14〜16年 平成14〜16年
系統・品種名/項目 十育
237号
トヨムスメ
(対照・標準)
十育
237号
トヨムスメ
(対照・標準)
十育
237号
トヨムスメ
(対照・標準)
早晩性 - - - -
開花期(月日) 7.21 7.2 7.28 7.27 7.21 7.2
成熟期(月日) 9.3 10. 2 10. 2 10. 3 9.29 10. 1
主茎長(cm) 55 55 59 55 61 60
分枝数(本/株) 3.4 4.4 - - - -
倒伏程度
子実重(kg/a) 32.2 33.5 35.8 34.6 35.6 34.8
対標準比(%) 96 100 103 100 102 100
百粒重 37.3 37.4 36.9 35.8 37.6 37
品質 2下 3中 2下 3中 3上 3中
種皮色 黄白 黄白  
臍色
粗蛋白含有率(%) 42.2 43.6
遊離型全糖含有率(%) 11.1 10.7

障害抵抗性、コンバイン収穫特性および加工適性(十勝農試 平成14〜16年)
  十育237号 トヨムスメ トヨコマチ トヨホマレ
障害抵抗性 低温(開花期/生育期) 強/強 中/中 やや強/やや強 強/強
低温着色(臍/臍周辺) 強/極強 弱/弱 弱/強 弱/強
シストセンチュウ(レース3/同1) 強/弱 強/弱 強/弱 弱/弱
わい化病
コンバイン
収穫特性
裂莢の難易
最下着莢節位高
加工適性 煮豆 -
豆腐 -
味噌 好適 - -
納豆 - -
  注1)調査場所のⅢ〜Ⅳは「道産豆類地帯別栽培指針(平成6年3月農政部)」による地帯区分、( )は支庁名を示す。
  注2) - 印は検定試験ないし試作試験を実施していないことを示す。
  注3)粗蛋白および遊離型全糖含有率は近赤外分析法による測定値(乾物当たり%、窒素蛋白質換算係数は6.25)。

2.だいず「十育237号」の特記すべき特徴
 「十育237号」は、「トヨムスメ」並の熟期の白目大粒系統である。低温抵抗性が強く、臍および臍周辺着色粒の発生がなく外観品質の低下が少ない。倒伏抵抗性が強く、分枝が少ない主茎型で最下着莢節位高が高いので、コンバイン収穫適性が高い。加工適性は、煮豆、味噌、納豆に適する。

3.北海道で優良品種に採用しようとする理由
 北海道における大豆の栽培面積は、平成5年の大冷害後、平成6年には6,740haまで減少したが、その後徐々に回復し、近年、20,000ha前後で推移している。このうち、白目大粒品種としては中生の「トヨムスメ」が道央水田転換畑や十勝中央部の大規模畑作地帯を中心に4,000ha前後(栽培面積率20%前後)作付されている。「トヨムスメ」は、蛋白質含有率がやや低い反面、美味しさの代表的指標であるショ糖含有率が高く、煮豆・惣菜、味噌原料として、また本州産大豆と比べ、物性面で劣るものの美味しさを活かした豆腐原料として利用されており、実需者からも高い評価を得ている。しかし、「トヨムスメ」は、低温抵抗性が不十分であるため収量が不安定であり、開花後の低温により臍および臍周辺着色粒が発生しやすいため外観品質を落とすことがしばしばある。また、分枝が多く、裂莢しやすいため、コンバインで収穫しづらいことから、農家の栽培意欲を減退させている。このため、「トヨムスメ」の栽培地帯においては、冷害に強く、低温でも着色せず、コンバイン収穫適性が高い品種が強く求められている。
 「十育237号」は、「トヨムスメ」並の熟期の白目大粒系統である。低温による臍および臍周辺着色粒の発生がなく外観品質の低下が少ない。高温年には「トヨムスメ」のようにかなりの多収とはなりづらいが、低温抵抗性が強く冷害年の減収が少ないため、収量が安定している。「トヨムスメ」と同様にシストセンチュウ・レース3抵抗性で、わい化病抵抗性は同品種が弱であるのに対し中である。これらのことから、高品質産物の安定供給が可能である。さらに、分枝が少ない主茎型の草型で倒伏抵抗性も強く、裂莢性が中で最下着莢節位高が高いうえ、登熟後の茎水分低下も速やかなので、コンバイン収穫適性が高い。このため、収穫作業の効率化、労働軽減が可能である。豆腐の食味は良好であるが、「トヨムスメ」に比べ柔らかく、加工適性はやや劣る。煮豆、味噌、納豆加工適性は同品種並から優る高い評価である。特に味噌についての評価は非常に高い。
以上より、「十育237号」を、道央や十勝中央部を中心に、「トヨムスメ」や白目中粒品種「トヨホマレ」の一部に置き換えて普及することで、北海道における大豆作の安定生産と高品質産物の安定供給により大豆産業の発展に貢献することが期待される。

4.普及見込み地帯
 北海道の大豆栽培地帯区分Ⅲ,Ⅳの地域およびこれに準ずる地帯。

5.栽培上の注意
 1) ダイズわい化病抵抗性は“中”なので、適切な防除に努める。
 2) ダイズシストセンチュウ・レース1発生圃場への作付けは避ける。
 3) 収量およびコンバイン収穫適性の向上のため、密植栽培を励行する。