成績概要書（2005年1月作成)
研究課題名:だいこんの品種特性Ⅵ（野菜の品種特性、農産物供給体制確立事業)
担当部署　:道立十勝農試　作物研究部　てん菜畑作園芸科
協力分担　:道農産園芸課　各地域農業センター
予算区分　:受　託
研究期間　:2003〜2004年度（平成15〜16年度)
1.目的
　野菜は毎年多くの品種が道内産地に導入されており、地域に適した品種を選択することが重要である。道立農試では品種選択における効率的な情報提供を目指して、農政部農産園芸課の｢農産物供給体制確立事業｣による地域農業センターとの連携のもと、品種の特性調査を実施している。本試験はだいこんの民間育成品種について、作型、地域適応性をふまえ産地における品種選択の資料を提供する。
2.方法
　1)標準品種と重点調査項目
用　途 作期 　播種期 標準品種 　重点調査項目

　青果用
　		 　Ⅰ 5月1日〜5月31日 晩抽喜太一 抽台、生理障害、低温肥大性
　Ⅱ 6月1日〜6月20日 晩抽喜太一 抽台、生理障害、病害
　Ⅲ 6月21日〜6月30日 健志総太り 生理障害、病害、抽台
　Ⅳ 8月1日〜8月15日 健志総太り 生理障害、病害
　辛味用 　Ⅳ 8月1日〜8月15日 辛丸 　
　
　2)栽培の概要
作期 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ
年度 15 16 15 16 15 16 15 16 15 16
用途 青果用 青果用 青果用 青果用 辛味用
播種期（月日) 5.22 5.12 6.6 6.4 6.24 6.21 8.7 8.4 8.7 8.4
収穫期（月日) 7.24 7.7 8.12 7.29 8.29 8.19 10.16 10.4 10.16 10.4
栽植株数（株/a) 543　 543　 543　 543　 543　 543　 543　 543　 543
815
1086		 543
815
　
1区面積(㎡ ) 6.6 7.7 6.6 7.7 7 7 7.7 7.7 7.7 7.7 7.7
注)施肥量（kg/a)はN:P2O5:K2O＝0.6:0.8:0.6、整畦法は高畦、反復数は2反復。
各年次とも作期Ⅰは透明マルチ、作期Ⅱ、Ⅲ、Ⅳはシルバーマルチ
　
3.成果の概要
　1)各作期で求められる重要な項目で優れた品種･系統の特性を評価した（表1)。
作期Ⅰ:耐抽台性では、｢美春｣、｢YR海洋｣、｢C7-13｣が、低温肥大性では｢初舞台｣、｢KSP-009｣、｢試交MK-R711｣、｢YR海洋｣、｢C7-13｣が良好であった。
作期Ⅱ:軟腐病抵抗性では｢KSP-008｣、｢試交MK-R711｣、｢RA213｣が良好であり、規格内率は｢試交MK-R711｣が高かった。
作期Ⅲ:軟腐病抵抗性で｢貴宮｣、｢MRX304｣が、耐抽台性では｢貴宮｣、｢MRX304｣｢試交MK-R711｣が特に良好であった。
作期Ⅳ:肥大性では、｢夏つかさ｣、｢冬自慢｣が良好であった。
　2)辛味用だいこん品種の特性を示した（表2)。辛味の指標値であるITC（ｲｿﾁｵｼｱﾈｰﾄ)含量相対値は、｢四季蒔倍辛大根｣以外のすべての供試品種で青果用だいこん｢健志総太り｣より高い値を示したが官能試験においては、すべての供試品種で青果用だいこん｢健志総太り｣より辛かった。青果用だいこんの慣行の栽植株数（543株/ａ)では、｢辛丸｣、｢辛味199｣で裂根や空洞症が多発し、規格内率は低下した。しかし、密植（815株/ａ)することで根重は減少し、それらの障害の発生率は低下した。
　
表1　総合評価の高かった品種系統の特性一覧
作
期		 　品種及び
　系統名		 肥大
性		 規格
内率		 外　観　品　質 抽台
性		 軟腐
病		 内部
障害		 曲根
発生		 裂根
発生
青首 肌質 根形 側根 総合
Ⅰ 初舞台
KSP-009
美春
試交MK-R711
YR海洋
C7-13		 ○
○
□
○
○
○		 □
□
□
○
□
□		 □
□
□
○
□
□		 □
□
□
○
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□		 □
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□		 □
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○
○
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□		 □
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○
○
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□		 □
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○
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○
◎		 -
-
-
-
-
-		 □
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□		 □
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□		 □
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□
□
Ⅱ 初舞台
貴宮
MRX303
KSP-008
T-810
試交MK-R711
YR三川大根
RA213		 △
□
□
□
□
○
□
□		 □
○
□
△
□
○
□
△		 □
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○
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○
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□		 □
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○
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□		 □
○
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○
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○
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○		 □
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○
○
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○
△
○
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○		 □
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□		 □
○
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□		 □
○
□
△
□
□
△
△
Ⅲ 夏つかさ
貴宮
MRX304
試交MK-R711		 ○
△
○
○		 △
□
△
○		 □
□
□
○		 □
□
□
□		 □
□
○
□		 □
△
□
○		 □
□
□
○		 ○
◎
◎
◎		 ○
◎
◎
○		 □
□
□
□		 △
□
△
□		 □
□
□
□
Ⅳ 夏つかさ
冬自慢		 ○
○		 □
□		 □
□		 □
○		 ○
△		 ○
□		 ○
□		 -
-		 □
□		 □
□		 □
□		 □
□
注1)各特性の評価は、高い順に◎>○>□（標準品種)>△>×の5段階とした。
注2)作期Ⅰ･Ⅱは｢晩抽喜太一｣、作期Ⅲ･Ⅳは｢健志総太り｣が標準品種。
注3)外観品質の総合は、大きさ、形状の揃いも加味した評価。
注4)作期Ⅰの軟腐病と作期Ⅳの抽台性は発生が見られないため評価できなかった。

表2　辛味用品種特性一覧（2カ年の平均値)
　品種及び系統名 栽植
株数
(株/a)		 抽出
根の
色		 根長

(cm)		 根径

(cm)		 根重

(g)		 規格
内率
(%)		 辛味
の
評価		 ITC
含量
相対値		 規格外発生率(%) 空洞症の
発生率（％)
異形 裂根
(参)健志総太り
(標)辛丸
　 四季蒔倍辛大根
　 辛味199
　 からいね
　 からいね赤		 543
543
543
543
553
543		 青白
白
青白
白
白
赤紫		 41
11
20
12
16
15		 7.3
8.4
7.5
8.0
6.0
7.4		 1194
422
584
376
243
347		 99
53
87
37
96
81		 3
5
4
5
5
5		 100
123
80
226
219
178		 0
2
2
0
0
0		 2
44
13
16
0
21		 0
33
28
73
19
5
(標)辛丸
　 四季蒔倍辛大根
　 辛味199		 815
815
815		 白
青白
白		 11
18
11		 8.0
5.7
7.4		 288
303
279		 76
91
91		 -
-
-		 -
-
-		 0
0
2		 26
14
8		 14
20
11
注1)｢健志総太り｣は一般青果用品種
注2)ITC（ｲｿﾁｵｼｱﾈｰﾄ)含量相対値は辛味の指標値で値が大きいほうが辛味が強いと推測される。（青果用だいこん｢健志総太り｣を100とした)
注3)辛味の評価は官能試験による。5（強)>4>3（健志総太り並)>2>1（弱)。

4.成果の活用面と留意点
　産地におけるだいこん品種選定時の資料とする。

5.残された問題点のその対応
　　栽培条件と辛味成分の変動性。