成績概要書
(2005年1月作成)
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研究課題:大型バンカサイロの踏圧法
担当部署:根釧農試 研究部 酪農施設科、乳牛飼養科
協力分担:なし
予算区分:道費
研究期間:2004年度(平成16年度)
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1.目 的
大型水平サイロを対象に牧草の踏圧程度の判定方法を確立し、適正な踏圧の作業条件を提示する。
2. 方 法
1) 踏圧作業調査(バンカサイロ)
・根釧農業試験場内8基
・現地農家9戸 22基
2) 調査項目
サイロ:種類、規模、本数、形状など
サイレージ:過去の品質および調製ミスの有無、添加剤使用の有無、
牧草収穫/サイレージ調製作業:作業形態、コントラクタ利用の有無、使用する車両の規格など
牧草運搬作業:運搬車両台数、運搬間隔
踏圧作業:踏圧時間、踏圧回数、牧草拡散回数、牧草拡散厚(目視)、サイロ側壁の際踏みの確認牧草状態:水分・牧草切断長、牧草品質
3) 分析項目
サイレージ:密度、乾物密度、水分、pH、有機酸定量(フリーク評点用)
3. 成果の概要
1) 運搬した牧草容積の累計を踏圧後のサイロ内牧草容積で除した値を圧縮係数と定義した。圧縮係数はサイロ内の詰込み後牧草の乾物密度と正の相関が非常に高かった(図1)。
2) 現地農家の聞取り調査と踏圧作業の実態調査(表1)において計測した圧縮係数を検討した結果、圧縮係数が1番草時に2.0以下では不良発酵・2次発酵などのサイレージ品質低下事例が確認された。また、2番草については調査事例が少ないものの、農家毎の踏圧作業方法が変わらない場合には、圧縮係数は2.3以上であれば良質なサイレージが調製できるものと考えられる(図2)。
3) 1番草詰込み時の圧縮係数が2.0以下となる要因は、踏圧作業時の牧草拡散厚が50cm以上である場合と、踏圧作業が接地圧の低いクローラ型の車両であることが確認された。また、サイロ側壁の際踏み不足と、踏圧時間の不足も要因と考えられる。(表1、図3)
4) 圧縮係数とサイレージの密度・乾物密度は、圧縮係数が高まると密度も高くなる傾向が示された。pHは圧縮係数が高まると低下する傾向が示された。また、バンカサイロ中央部とサイロ側壁部のサイレージ品質をフリーク評点で比較した場合、サイロ中央部は圧縮係数に関わらず100点に近い評点となったが、サイロ側壁部の評点は圧縮係数が低くなると連動して低くなった。このことから、圧縮係数の高い踏圧作業を行なうことで、バンカサイロ全体のサイレージ品質を高く維持し、かつ、ムラをなくすことが可能である。(図4)
5) 以上のことから水平サイロの詰込み・踏圧作業は、次の手順で作業を行なう。踏圧作業前に運搬車両と、サイロ側壁高を踏圧後牧草高としたサイロの内容積を計測し、目標とする圧縮係数(1番草で2.0以上、2番草で2.3以上)から逆算したサイロ毎の運搬車両台数を求めるとともに、運搬車両毎の踏圧後牧草容積をサイロ側壁にマーキングする。踏圧作業は接地圧の高いホイール型車両を用い、牧草拡散厚を30㎝以下で行い、サイロ側壁の際踏みを行なう。踏圧作業中・後に運搬車両のべ台数と作業前にマーキング位置から、踏圧具合を確認しながら作業をする。収穫作業が高能率で牧草の運搬間隔が短く、踏圧作業時間が十分に確保できない場合は、踏圧車両または詰込むバンカサイロの本数を増やす必要がある。
図1 圧縮係数と詰込み後の牧草密度
表1 調査事例諸元
農家名 | 根釧農試 | A | B | C | |||||
バンカー幅×高 (m) | 5.32×2.7 | 6.32×3.7 | 8.0×2.7 | 7.8×2.7 | 7.2×2.4 | ||||
踏圧車両 | ローダ | ローダ | バックホー | テレハンドラ | ローダ | ローダ | バックホー | ||
接地圧 (kg/cm2) | 1.65 | 1.16 | 0.32 | 1.11 | 1.58 | 0.83 | 0.36 | ||
牧草拡散厚 (cm) | 20 | 20 | 25 | 25 | 50 | 50 | |||
牧草水分 (平均) (%) | 75 | 80 | 76 | 79 | 68 | 75 | |||
運搬容積 (m3) | 543 | 1581 | 3150 | 3320 | 1010 | 1055 | |||
詰込み容積 (m3) | 252 | 742 | 1578 | 1735 | 553 | 624 | |||
圧縮係数 | 2.15 | 2.1 | 2 | 1.91 | 1.83 | 1.69 | |||
密度 | 中心部 (kg/m3) | 580〜740 | 550〜830 | 620〜800 | 530〜685 | 570〜620 | 310〜680 | ||
壁際 (kg/m3) | 520〜620 | 390〜740 | 280〜340 | 430〜450 | 290〜360 | 180〜380 | |||
乾物密度 | 中心部 (kg/m3) | 165〜180 | 110〜165 | 130〜180 | 115〜150 | 140〜150 | 65〜160 | ||
壁際 (kg/m3) | 125〜155 | 80〜130 | 50〜65 | 90〜110 | 60〜85 | 40〜85 | |||
pH | 中心部 - | 3.4〜4.1 | 3.6〜4.5 | 3.7〜3.9 | 3.7〜4.5 | 4.1〜4.2 | 3.7〜5.1 | ||
壁際 - | 3.5〜3.6 | 3.9〜4.7 | 3.7〜4.0 | 3.5〜3.7 | 3.9〜5.1 | 3.8〜5.0 | |||
フリーク評点 | 中心部 (点) | 89〜100 | 70〜100 | 100 | 60〜100 | 70〜100 | 16〜100 | ||
壁際 (点) | 100 | 40〜100 | -3〜100 | -4〜100 | 2〜41 | 7〜100 |
図2 圧縮係数の分布
図3 圧縮係数と踏圧時間・接地圧の関係(1番草)
図4 バンカサイロ断面における圧縮係数とフリーク評点
4.成果の活用面と留意点
1)ババンカサイロを有する現地農家およびコントラクタ等で利用できる。
2)サイロ内の踏圧後牧草高をサイロ側壁より高く設定することは、側壁より高い部分が十分踏圧されない場合が多く、かつ、踏圧車両の横転事故の危険性があるため行なってはいけない。また、雨水対策として、サイロ側壁からの雨水の浸入を回避するために密封時のサイロ断面を凹型にして排水できるように踏圧する。
5.残された問題とその対応
1) 原料牧草の発酵基質量・水分と圧縮係数の解析
2) 牧草収穫・調製作業に適し、かつ、サイレージの排汁促進できるバンカサイロの設計
3)スタックサイロでの圧縮係数の解析