成績概要書(2005年1月作成)
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課題分類:
研究課題:乳牛における繁殖機能の発達と初産分娩月齢の早期化
       (子牛の哺育育成部門専門分化による初産分娩までの育成期間短縮をめざした地域預託システムの確立)
担当部署:根釧農試 研究部 乳牛繁殖科
担当者名:草刈直仁、大滝忠利、小山 毅、出岡謙太郎
協力分担:
予算区分:国費補助(地域基幹)
研究期間:2002〜2004年度(平成14〜16年度)
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1. 目 的
 乳用後継牛では経営内の省力化、ならびに乳牛更新の効率化のため初産分娩月齢の短縮が求められている。本課題では、育成牛の体格発育と繁殖機能発達との関係、および近年増加しつつある哺育育成預託システムにおける育成牛の繁殖成績、ならびに初産次の繁殖および泌乳成績の実態等から初産分娩月齢の早期化を検討する。

2. 方 法 
1)初産分娩月齢の短縮に向けた育成牛の体格と繁殖機能との関係
 (1) 育成牛の体格発育と繁殖機能発達との関係
ホルスタイン種育成雌牛9頭(6.6〜7.9ヶ月齢)を供試し、体重等の推移と春機発動および性成熟との関係を調べた。
 (2) 育成牛の発育向上による授精開始時期の早期化
育成牛の発育を向上させることによる授精開始時期の早期化について検討するとともに、初産分娩月齢の早期化が初産次の分娩、繁殖および泌乳成績に及ぼす影響を調べた。
2)哺育育成預託システムにおける育成牛の繁殖成績と初産分娩成績
調査対象(1)公共牧場型のE牧場(十勝管内・公社営) 育成時:E牧場、初産次:4農場
 (2)経営集団型のN牧場(根室管内・受委託グループ) 育成時:N牧場、初産次:5農場

3. 成果の概要
 1)-(1)ホルスタイン種雌牛では、8ヶ月齢時の体重が263±27kg、体高が117.0±3.5cmと良好に発育した場合には8ヶ月齢で春機発動、11ヶ月齢で性成熟に至り、12ヶ月齢には授精可能となる(図1、図2)。春機発動の時期は、発育が良好なもので早まるが、8ヶ月齢より早くなることはない。しかし、8ヶ月齢までの発育が停滞すると、春機発動時期が遅れる原因となる(図1)。
 1)-(2)育成牛の発育を向上させ、体高125cm、体重350kgに到達する月齢を14ヶ月齢から12ヶ月齢に短縮して授精開始を早めたところ、初回授精は13.0ヶ月齢、受胎月齢は13.6ヶ月齢となった(表1)。分娩月齢が24ヶ月齢未満の牛においても、受胎後の発育が良好であれば、24ヶ月齢以上の牛に比べ分娩事故が多発することはなく、分娩後の繁殖成績は良好であった(表2)。
 2)-(1) 夏期放牧方式のE牧場では、授精は14ヶ月齢、125cmを基準に開始しており、平均受胎月齢は15.0ヶ月齢であった。また、初産分娩は24.4ヶ月齢、初産次の空胎日数は113日で、305日乳量は管内初産牛の平均よりもおよそ780kg多かった(表3)。
 2)-(2) 通年舎飼方式のN牧場では、授精は12ヶ月齢、体高127cmを基準に開始しており、平均受胎月齢は13.3ヶ月齢であった。また、初産分娩は22.4ヶ月齢、初産次の空胎日数は123日で、305日乳量は管内初産牛の平均よりも760kgほど多かった(表3)。
 以上の成績は、初産分娩を早めるには8ヶ月齢までの発育が重要で、良好に発育した育成牛は8ヶ月齢で春機発動、11ヶ月齢までに性成熟に至り12ヶ月齢には授精可能となること、また、受胎後の飼養管理が適切であれば、21ヶ月齢で分娩しても初産次成績に大きな問題はないことを示している。

4.具体的数字


図1 育成牛の8ヶ月齢時体重と春機発動との関係


図2 育成牛における春機発動後の性成熟過程
  注)10ヶ月齢以前の春機発動牛7頭のデータ

5.成果の活用面と留意点
1) 本成績は、地域預託システムはもとより、自家育成の乳用後継牛にも適用できる。
2) 初産分娩を早期化した乳牛における連産性については未検討である。

6.残された問題とその対応
1) 発育を停滞させない育成期の放牧飼養法
2) 受胎月齢を早期化した初妊牛における妊娠期の適切な飼養管理および分娩管理技術