成績概要書(2005年1月作成)
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研究課題名:乳牛における活動量の変化検出による発情発見システム
担当部署:道立根釧農業試験場 研究部 乳牛繁殖科、酪農施設科
       酪農学園大学酪農学部酪農学科、土谷特殊農機具製作所畜産システム課
協力分担: なし
予算区分: 道費(初動研究、重点領域)
研究期間: 2001,2002〜2004年度(平成13,14〜16年度) 
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1. 目的
 フリーストール牛舎では、万歩計による発情発見システムが普及し始めている。しかし、現行のシステムは、活動量データの収集が搾乳時に限定されており、半日単位の合計量を基にして発情を判定せざるを得ないため、発情の開始と終了が不明であり、授精適期は特定できない。
そこで、本試験では、その改善策として活動量の頻回収集法を検討するとともに、頻回収集した活動量と発情行動、排卵との時間的関係を調査し、発情開始時期と授精適期を特定できるシステムを開発する。

2. 方法
 1)乳牛の発情発現の実態
分娩後の卵巣機能の回復や発情徴候の実態を調査し、発情発見のための基礎的データを収集した。
 2)データの頻回収集による活動量の変化と発情行動
データ収集用のアンテナを牛舎内に複数設置することで、活動量を頻回収集するとともに、発情行動や排卵時間との関係を調査し、活動量の増加開始に基づき授精適期を推定した。
 3)頻回収集した活動量に基づく発情発見システムの開発
頻回収集した活動量のデータから自動的に発情牛の検出ならびに発情開始時期と授精適期を特定できるシステムを開発した。

3. 成績の概要
 1) 1日2回程度の発情観察では、スタンディングまたはマウンティングがわずか46%しか発見できなかった。
 2) 活動量を頻回収集したところ、発情期には活動量が2〜7倍に増加した(図1)。活動量の増加開始とマウンティングはほぼ同時刻に開始し、スタンディングは活動量の増加から約3時間後に認められた(図2)。また、スタンディングの持続時間は2.0〜18.0時間で、平均7.3時間と短かった。
 3) 排卵は活動量増加開始から28.5時間後に起った。従って、理論的な授精適期は、活動量増加開始から4〜24時間であると考えられた(図2)。
 4) 牛群内に他の発情牛がいる場合には、いなかった場合に比べ、発情時の活動量と活動量の増加倍率が高かった。また、活動量の増加している時間は同居牛の中に発情牛が多いほど長くなる傾向がみられた。
 5) リピートブリーダーを除く乳牛について活動量増加開始から授精までの時間を調査したところ、適期と考えられた活動量増加開始から4〜24時間の受胎率は65.4%であり、それ以外の時間に授精された場合の15.8%に比べ高かった(図3)。また、適期のうちでも、早い時期に授精した場合の受胎率が高かった。
 6) 本システムは、活動量の頻回収集と発情判定解析プログラムから構成される(図4)。発情判定解析プログラムは、平常時の活動量との比較により、自動的に発情の検出、発情開始時刻の特定を行う。発情と判定された場合には、授精適期も表示して管理者へ知らせる。
 7) 本システムの発情検出率は91.4%、発情発見精度は83.5%と良好であった(表1)。
以上のことから、本研究で開発した「活動量の頻回収集による発情発見システム」は、フリーストール牛舎における発情発見率と受胎率を向上させることができる。

4. 成果の活用面と留意点
 1) 本システムの解析手法は、平常時の活動量として100〜200回の平均値を用いる。平均値算出まで2週間程度必要なため、分娩後から計測装置を装着する必要がある。
 2) 本システムの発情検出率は高く、提示した授精適期での受胎率も高いが、発情と判定した牛の中には、実際には発情でない牛も含まれるため、目視による発情行動や外陰部・粘液の観察を併用することが望ましい。
 3) 通路にアンテナを設置して活動量の頻回取り込みを行う手法について特許を出願している。
(乳牛の発情発見方法および装置:特願2003-138760)

5. 残された問題とその対応 
 1) つなぎ牛舎における簡易な発情発見システムの開発
 2) 発情持続時間短縮の要因解明
 3) 発情発現の明確化技術の開発