成績概要書(2005年1月作成)
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課題分類:
研究課題:牛ES細胞の樹立とES細胞由来クローン産子の作出
(家畜(ウシ、ウマ)の胚性幹細胞(ES)細胞の樹立およびES細胞由来胚・産子の分子生物学的研究)
担当部署:道立畜試 畜産工学部 遺伝子工学科 受精卵移植科
担当者:
協力分担:独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター
予算区分:共同(民間等)
研究期間:2002〜2004年度(平成14〜16年度)
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1. 目的
胚性幹細胞(ES細胞)は、個体発生や細胞分化の研究、遺伝子の機能解析、移植用臓器の作出、クローンおよび遺伝子導入動物の効率的作出等への利用が可能である。また、ES細胞由来の核移植胚の分子生物学的研究により、生後直死や過大子等、家畜の核移植技術における問題点の改善が期待できる。しかし、現在のところES細胞株が樹立されているのは、マウスなど一部の動物種に限られており、家畜のES細胞株の樹立が強く望まれている。本課題では、ウシの初期胚を培養してES細胞株を樹立し、得られた細胞の遺伝子発現や細胞分化の解析を行う。また、ES細胞を用いた核移植による胚および産子の作出を試みる。
2. 方法
1) ウシES細胞の樹立および細胞特性の分子生物学的評価
2) ウシES細胞の体外における多分化能解析および遺伝子導入効率の検討
3) ウシES細胞を用いた核移植胚および核移植産子の作出
3. 結果の概要
1) ウシ胚盤胞期胚(15胚)の内部細胞塊(ICM)を単離培養した結果、4つ(27%)のICMにおいてフィーダー細胞への接着、伸展が観察され、継代培養により株化された(図1)。得られた細胞株はアルカリフォスファターゼ活性を有し、SSEA-1、OCT-4およびSTAT-3遺伝子のいずれも発現していることが明らかとなった。
2) ウシES細胞における遺伝子導入効率はウシ胎子繊維芽細胞 (1%以下) よりも高い傾向がみられた。また、緑色蛍光蛋白質(EGFP)発現ウシES細胞を用いてキメラ形成能を検討した結果(表1)、ウシES細胞では胚盤胞期胚の42%においてICMもしくは栄養膜細胞およびその両方においてEGFP発現細胞が観察された。
3) ウシES細胞をドナー細胞に用いた核移植および産子の作出を行った(表2)。ドナー細胞とレシピエント卵子の融合率ならびに核移植胚の分割率は高い値を示したが、胚盤胞期までの発生率においては著しく低い値(3-7%)となった。得られた胚盤胞期胚をレシピエント牛に移植した結果、いずれの区においても受胎(発情後42日目)が確認され、計3頭の産子を得た(表3、図2)。
以上の結果から、ウシ胚盤胞期胚を体外培養することにより未分化性および多分化能を保持したES細胞株を樹立することができた。またES細胞を用いた核移植により産子生産が可能であることを示した。
図1. ウシES細胞
図2. ES細胞由来クローン産子とレシピエント牛
4. 成果の活用面と留意点
本試験で樹立されたウシES細胞は最も重要な特性である未分化性および多分化能は十分確認されているが、キメラ個体での生殖細胞への寄与は確認していない。
5.残された問題とその対応
ウシES細胞をドナー細胞に用いた場合、胚盤胞形成率が低かったことから、ES細胞に特化した核移植法の検討が必要である。