成績概要書(2005年1月作成)
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課題分類:
研究課題:高水分乳牛ふん尿の簡易堆肥化技術
(積雪寒冷地における乳牛ふん尿の簡易堆肥化技術)
担当部署:道立畜試 環境草地部 畜産環境科
担当者名:
協力分担:北農研センター 農業機械研
予算区分:受託(国費)
研究期間:2002〜2004年度(平成14〜16年度)
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1.目的
高水分乳牛ふん尿の腐熟化、取り扱い性向上をはかるために、堆肥舎床面に溝、バーク敷設することで排汁促進をはかり、水分の除去および発熱への効果を検討する。併せて水分除去後の堆肥についてより一層の腐熟促進を目指し、堆積方法、切返し方法の影響を検討する。
2.方法
1.堆肥舎床面の溝、バーク敷設の排汁促進による水分除去および発熱
敷料(小麦稈)の混入した高水分乳牛ふん尿を用い、堆肥舎床面の溝、バーク敷設の効果について検討した。小規模(試験Ⅰ:屋内堆積区画、堆積規模約1.7トン)と実用規模(試験Ⅱ:堆肥舎、堆積規模約35トン)で実施した。
2.水分除去後の堆肥の堆積方法、切返し方法別の腐熟化(試験Ⅲ)
試験Ⅱ・試験区の堆肥を引き続いて用い、堆積方法(堆肥舎、堆肥盤でのシート被覆)および切返し方法(ショベルローダ、改造マニュアスプレッダ)が水分除去後の堆肥の腐熟に及ぼす影響を検討した。また、慣行区として試験Ⅱ・対照区の堆肥を引き続いて堆肥盤に露天堆積した。
3.結果の概要
1) 試験Ⅰ:溝・バーク無しの1区と比べて、溝、バーク敷設の2〜4区、とくに両者を併用した4区の排汁量が多く、水分減少率は高かった。また、2〜4区では乾物減少率・コマツナ発芽率が高まり、酸素消費量(易分解性有機物の指標)は低下して、腐熟が進行していると考えられた(表1)。
2) 試験Ⅱ:実用規模においても、溝とバーク敷設を併用(試験区)することで、溝・バーク無し(対照区)と比べて、排汁量は約3倍に増加し、水分減少率が顕著に高まった(表2)。試験区では品温も10〜15℃高く推移し(図1)、酸素消費量の低下やコマツナ発芽率の向上など腐熟が促進された(表2)。また、終了時の水分含量は77%と大きく低下して(表2)、取扱い性が改善された。
3) 試験Ⅲ:溝とバーク敷設併用により水分除去した試験Ⅱ・試験区の堆肥は、堆肥舎におけるショベルローダ切返し(A区)、改造マニュアスプレッダ切返し(B区)、および堆肥盤・シート被覆におけるショベルローダ切返し(C区)のいずれの場合も酸素消費量が低下し、コマツナ発芽率は高まって、腐熟が進んだ(表3)。改造マニュアスプレッダ切返し(B区)では顕著な発熱がみられた(図2)。これら3処理の終了時の腐熟程度は、完熟の目標数値(乾物減少率が40%以上、酸素消費量が3μg/g・分以下、コマツナ発芽率が80~90%以上)からみて、完熟に達したものと判断された。慣行区での腐熟程度は遅れた。
以上のように、堆肥舎床面の溝とバーク敷設を併用することで、高水分ふん尿から排汁を促進して水分を除去し、取扱い性の改善をはかるとともに、腐熟を進めることができた。さらに堆肥舎やシート被覆堆肥盤での切り返しを行うことで完熟に達することができた。
4.成果の活用面と留意点
1) 排汁促進のための堆肥舎は水勾配、排汁回収構造が前提となる。
2) 既存堆肥舎床面の溝切りは牛のスリップ防止のためのパドック用溝切り機が利用できるが、その場合は各種事業の実施要件に留意する。
3) 本試験のデータは敷料が小麦稈(無細切)の場合である。
5.残された問題点とその対応
敷料が小麦稈とは異なる場合の本技術の適用性