成績概要書(2005年1月作成)
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研究課題:ながいもの催芽処理期間における青かび病対策
担当部署:十勝農試生産研究部病虫科
       十勝農試作物研究部てん菜畑作園芸科
協力分担:
予算区分:道費
研究期間:2004年度(平成16年度)
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1.目 的  
種いもの催芽過程で発生する腐敗の主要原因を明らかにし、腐敗を最低限に抑えるための適切な催芽前各種処理条件の検討を行う。

2.方 法
 1)発生実態と被害
 2)病原菌に関する試験
 3)種いもの腐敗防止対策に関する試験

3.成果の概要
 1)催芽処理期間の種いも内部腐敗から分離される糸状菌はPenicillium属菌が最も頻度が高く、次いでPythium属菌であり、Penicillium属菌による青かび病が腐敗原因の主体であった。
 2)種いもの催芽処理期間の腐敗による被害は、使用可能な種いもが減少するだけでなく、部分的に腐敗した種いもを植え付けると不萌芽の増加や低収に結びつく(表1)。
 3)種いもの催芽処理期間の腐敗に関与する糸状菌は、切断面や傷口からのみ感染が可能である。
 4)青かび病による腐敗は25℃で最も速やかに進行した。また、5℃でもわずかながら腐敗の進行は認められた。
 5)青かび病菌の胞子発芽は、25および20℃は12時間以内に認められたが、15℃では12時間以上、10℃では48時間(2日)以上、5℃では120時間(5日)以上必要と考えられた。
 6)種いも切断前に表皮に付着している土壌を水洗し、風乾することによって切断面の青かび病の発生は軽減した(図1)。また、切断刀を種いも切断のたびに70%エタノールに瞬間浸漬してペーパータオルで拭いても本病の発生は軽減した。
 7)種いも表面の付着土壌が石灰に混入した条件で切断面の粉衣処理を行うと、青かび病の腐敗いも率は増加し、個々の腐敗程度も激しかった(図2)。
 8)これらのことから、ながいも表面の付着土壌は青かび病の感染源として重要であり、種いもの切断処理時における切断面への土壌の付着が本病の主要感染経路であると考えられた。
 9)チウラム・ベノミル水和剤の100倍液への10分間浸漬処理は、青かび病による種いもの腐敗に対する防除効果が高く、薬害も認められなかった(表2)。しかし、本処理のみで青かび病による腐敗を完全に防ぐことはできなかった。
 10)切断した種いもの切断面に青かび病菌を接種すると、キュアリング温度が20℃の場合は速やかに腐敗が進行し、また5℃ではほとんど腐敗が進行しないが催芽処理に移行すると激しく腐敗した。すなわち、切断時に感染源が多量に付着すると、その後のキュアリング〜催芽期間に腐敗を回避する温度条件の設定は困難であった。ただし、接種後ただちに石灰粉衣して20℃で7日間キュアリングした場合、催芽処理を経過した最終的な腐敗程度は、石灰処理を行わなかった場合と比較して明らかに軽微であり、腐敗進行の抑制効果があるものと考えられた。
 11)以上のことから、青かび病による腐敗を軽減させるためには、付着土壌の水洗などによる除去や、切断面に直接触れる切断刀を清潔に保つことにより切断面になるべく感染源を付着させないようにし、速やかに清潔な石灰で粉衣することが基本であり、薬剤浸漬の併用によって防除効果はより高まるものと考えられた。そのために有効な処理と作業の流れを図3に示した。

表1 種いもの腐敗が萌芽率、収量に及ぼす影響
供試種いも   萌芽率
(%)
 6/30
    収量調査  10/26    収穫いも重別割合(%)
全 長
 (cm)
調整長
 (cm)
いも径
 (cm)
いも重
 (g/本)
<100g
 
100〜
 300g
300〜
  600g
600g<
一部腐敗いも
健 全 い も
51.5
80.8
 42
 49
 25
 34
 4.2
 4.7
 335
 500
 13.0
 0.0
42.8
15.4
34.6
51.0
 9.6
33.6
   注1)植え付け時期が遅いため、全体的な収量レベルは低い
   注2)一部腐敗いもは催芽完了時点で部分的な腐敗陥没と青かびの付着が認められかつ不定芽が形成されているもの


図1 種いもの切断前処理が青かび病の発生に及ぼす影響
  注1)切断刀消毒は切断刀を70%エタノールに瞬間浸漬後ペーパータオルで拭き取り、石灰処理は行っていない。
  注2)調査は処理6日後に行った。


図2 切断面に粉衣する石灰への土壌混入が青かび病による種いも腐敗に及ぼす影響
  注1)種いも腐敗程度の調査基準は以下の通り
    -:腐敗なし
    +:切断面の一部にわずかに腐敗部分がめられる
    ++:種いもの体積の50%未満に腐敗が認められる
   +++:種いもの体積の50%以上に腐敗が認められる

表2 青かび病に対する種いも薬剤浸漬処理の効果
供 試 薬 剤 希釈倍数
処理方法
腐敗種いも率(%)
キュアリング
7日目
催 芽
20日目
チウラム・
 ベノミル水和剤
100倍
10分間浸漬
0.0 4.0 -
チウラム・
 ベノミル水和剤
200倍
10分間浸漬
2.1 25.1 -
無処理   27.5 93.5  
  注)腐敗はすべて青かび病によるものであった

4.成果の活用面と留意点
 1)ながいもの催芽処理過程における青かび病対策として活用する。
 2)キュアリングの条件は平成10年指導参考事項に準ずる。

5.残された問題とその対応
 1)病原菌の同定
 2)石灰粉衣の効果検討
 3)Pythium属菌による種いも腐敗対策