成績概要書                            (2005年1月 作成)
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研究課題:共同利用型バイオガスプラントにおける家畜ふん尿の搬入・搬出法および散布法
      (集中型バイオガスプラントにおける家畜糞尿の搬入・搬出・散布法の検討)
担当部署:根釧農業試験場 研究部 酪農施設科
担当者名:
協力分担:なし
予算区分:受託(国費)
研究期間: 2001〜2004年度(平成13〜16年度)
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1.目的
 共同利用型バイオガスプラントにおいて、各農家のふん尿処理施設の凍結防止対策およびプラントへの家畜ふん尿の搬入方法と、消化液および処理ふん尿の搬出方法、並びに消化液の圃場散布方法について検討し、共同型バイオガスプラント計画・実施時の資料とする。

2.方法
1)搬入方法の検討 (1)対象農家の処理施設の概要
             (2)スラリー貯留時の凍結防止対策
             (3)ふん尿搬入作業の実態と作業能率:アームロール車による搬入作業能率
2)搬出方法の検討 アームロール車による消化液の搬出作業能率
3)散布方法の検討 (1)スプラッシュプレート式スラリータンカの作業能率
             (2)浅層インジェクタの作業能率
             (3)バンドスプレッダの作業能率

3.結果の概要
1)搬入農家の貯留スラリー凍結要因として、投入スラリーの固形分濃度が高いこと、撹拌・汲み上げポンプの能力不足があげられ、この対策として長時間撹拌によるスラリーの流動化、撹拌ポンプの能力向上が必要と考えられた(表1、2)。
2)搬入農家のスラリーはアームロール車にタンク(8500L)を搭載して、固形ふん尿はコンテナ(15.2m3)を搭載してプラント管理者により搬入される。
3)スラリー搬入作業はスラリーの粘度にも影響を受け、粘度が高い場合には攪拌や投入・排出に時間を要し移動以外の時間は1829秒と粘度の低い農家の2倍以上であった。移動も含めた作業能率は1.5台/hであった(表3)。固形ふん尿の搬入作業能率はコンテナ搭載が61秒、プラントでの排出が98秒であった。コンテナ及び運搬用トラックの洗浄に135秒を要した。固形ふん尿搬入時は何も搭載しないで1往復するため移動距離が長く、作業能率は2.9台/hであった(表4)。
4)サテライト貯留施設への消化液の搬出作業は、往復距離が約11kmでこの移動に911秒を要した。消化液の運搬車への投入時間は175秒であった。サテライトでの排出時間は464秒であった。移動時間も含んだ作業能率は1.9台/hであった(表5)。
5)バイオガスプラント側による参加農家の庭先等への運搬作業はなく、各農家がプラントまたはサテライトから各圃場へ消化液及び堆肥を搬出すると同時に散布していた。消化液の搬出・散布は農家所有のスラリータンカ(14500L)を用いている。消化液の積み込みは251秒であった。移動距離3.2kmの圃場往復に627秒、圃場内の散布時間は260秒であった。移動も含めた消化液の搬出・散布能率は2.9台/hであった(表6)。堆肥の搬出・散布も農家所有のマニュアスプレッダを用いている。圃場までの往復距離は2.7kmで移動時間は308秒であった。散布作業時間は240秒で全体の作業能率は3.3台/hであった(表7)。
6)スラリー散布機3機種について作業能率を調査した。散布幅16mのバンドスプレッダでは散布量2.0t/10Aで作業能率は3.7hA/hであった。散布幅5.0mの浅層インジェクタは2.2t/10Aの散布量で作業能率は1.5hA/hであった。散布幅17.5mのスプラッシュプレート式スプレッダでは2.7t/10Aの散布量で作業能率は1.6hA/hであった(表8)。
7)プラントと圃場の間を専用のタンカで消化液を運搬し圃場内で散布機に補給する体系について検討したところ、運搬用タンカ3台では散布機の待機時間がなく最大作業能率3hA/hとなった。タンカ2台の場合、最大能率は2.76hA/hで3台の時の約92%であった。待機時間を考慮した適切な運搬機の台数は、散布機の容量と見合った運搬機台数を1単位として決定することが望ましい。
8)以上のように、アームロール車によるスラリー、固形ふん尿の搬入、サテライト貯留槽への消化液の搬出、参加農家によるふん尿の搬出散布の各作業能率を明らかにするとともに、バンドスプレッダ、浅層インジェクタなどの新たに導入された散布機の散布能率を明らかにした。

表1 対象農家の概況(H13.11)
農家 飼養形態 成牛頭数 処理方式 牛床・敷料 冬季間の問題点(聞き取り)
A フリーストール 71 スラリー マットレス+オガクズ 凍結時の対応
B フリーストール 64 スラリー マットレス+オガクズ 凍結ふん尿は別処理
C つなぎ飼い 64 堆肥 マットレス+残食など 積雪、凍結時の対応
D つなぎ飼い - 堆肥 コンクリート+長わら (H15よりスラリー)
E フリーストール 135 スラリー マットレス+かんなくず  
F つなぎ飼い 46 堆肥 おがくず+残食 積雪、凍結時の対応
G つなぎ飼い 100 堆肥 麦桿 堆肥盤未整備
I つなぎ飼い 60 堆肥 麦桿 トラックへ積み込み
J つなぎ飼い 75 堆肥 残食 積雪、凍結時の対応
K つなぎ飼い 42 堆肥 牧草 積雪、凍結時の対応

表2 スラリー搬入農家における固形分濃度(H16)
  A農家(凍結発生) B農家(凍結なし) E農家(凍結なし)
採取月日(月/日) 1月20日 2月22日 3月1日 1月20日 2月22日 3月1日 1月20日 2月22日 3月1日
固形分濃度 (%) 8.87 7.5 7.56 5.32 5.51 5.93 5.43 5.31 5.62

表3 スラリーの搬入作業能率(粘度別に7台、9台の平均)

ふん尿 1台あたりの作業時間(秒、カッコ内は分) 総時間
(秒)
能率
(台/h)
往復距離
(km)
粘度
(mPA・s)
移動 攪拌 投入
(農家)
排出
(プラント)
その他 移動以外の作業時間
11000 578 495 344 433 557 1829(30.5) 2407 1.5 4.4
1800 310 0 224 350 251 825(13.8) 1135 3.2 2.6

表4 固形ふん尿の搬入作業能率(5台分の平均)
搬入1台あたりの作業時間(秒、カッコ内は分) 総時間
(秒)
能率
(台/h)
移動距離
(km)
移動 コンテナ
搭載
ふん尿排出
(プラント)
洗浄 コンテナ
設置
その他 移動以外の
作業時間
514 61 98 135 100 329 723(12.1) 1237 2.9 4

表5 消化液のサテライト貯留施設への搬出作業能率(3台の平均)
搬出1台あたりの作業時間(秒、カッコ内は分) 総時間
(秒)
能率
(台/h)
往復距離
(km)
移動 消化液排出
(サテライト)
消化液投入
(プラント)
その他 移動以外の
作業時間
911 464 175 326 965(16.1) 1876 1.9 10.8

表6 消化液の搬出・散布作業能率(3台の平均)運搬・散布タンカ容量:14500L
搬出1台あたりの作業時間(秒、カッコ内は分) 総時間
(秒)
能率
(台/h)
往復距離
(km)
移動 圃場散布 消化液積み込み
(プラント)
その他 移動以外の
作業時間
627 260 251 115 626(10.4) 1253 2.9 3.2

表7 堆肥の搬出・散布作業能率(2台の平均)
搬出1台あたりの作業時間(秒、カッコ内は分) 総時間
(秒)
能率
(台/h)
往復距離
(km)
移動 圃場散布 堆肥積み込み
(プラント)
その他 移動以外の
作業時間
308 240 292 241 773(12.9) 1081 3.3 2.7

表8 ふん尿散布機3機種の作業能率
散布機 散布液 散布幅
(m)
作業速度
(m/s)
作業面積
(hA)
散布量
(t/10A)
作業時間
(分)
作業能率
(hA/h)
バンドスプレッダ スラリー 16 2.1 1.5 2 24.1 3.7
浅層インジェクタ 消化液 5 2 3.1 2.2 127.8 1.5
スプラッシュプレート 消化液 17.5 1.3 1.2 2.7 42.6 1.6

4.成果の活用面と留意点
1)共同型バイオガスプラントは対象とする地域のふん尿処理形態に合わせた発酵処理方式を採用して搬入後のふん尿処理をメタン発酵のみとするか、参加農家のふん尿処理方式をスラリー処理に一本化した方が、原料ふん尿の搬入作業とその後の処理作業を効率的に実施することができる。

5.残された問題とその対応
1)農家貯留スラリーの高度な凍結防止対策