「農薬適正使用支援システム」(指導参考事項)
北海道農業研究センター総合研究部
執筆担当者 伊藤 淳士

 農薬使用状況の適否支援をインターネット上でおこなうシステムを開発した。財団法人日本植物防疫協会JPP-NETの提供する農薬データベースを用いることで、各種農薬、作物に対する情報が利用できる。また、本システムは栽培履歴管理システム等の他のアプリケーションと容易に連携することができる。

1 試験目的
  農業生産のトレーサビリティーシステムの普及に伴って、作物のコンプライアンス生 産が強く求められるようになってきた。それらの管理業務が農業関係者の大きな負担と なっている。特に、農薬においては各種の基準を遵守した使用とその履歴管理をおこな わなければならない。しかし、農薬の使用基準は複雑であり、作物ごとの基準にあわせ て検査することは容易ではない。
これらの業務を軽減するために、インターネット等のIT技術を活用して農薬使用状況 の適否判断を支援するシステムを開発する。

2 試験方法
 (1) 作物栽培における農薬使用履歴をインターネット上で入力させ、その使用適否の判断を支援するシステムを構築する。
 (2) 農薬のデータには、財団法人日本植物防疫協会JPP-NETが提供する農薬データベースを用いる。
 (3) 農薬使用履歴の入力には、作物名を表す作物コードと農薬の登録番号を用いる。

3 試験成績
 (1) インターネットを用いて、農薬使用状況の適否判断の支援と農薬情報の検索、閲覧ができるシステムを開発した。システムは、Perl言語で記述されたCGIプログラム群とMySQLによる農薬データベースが連携して動作する(図1)。
 (2) システムは、過去に失効した農薬も含めて登録のある全農薬が対象になっている。平成16年12月1日現在、21,300件の農薬が登録されている。
 (3) システムは、登録のあるすべての作物が対象になっている。平成16年12月1日現在、402作目(細分類)が登録されている。
 (4) 農薬データベースは、随時更新がおこなわれるため、常に最新の情報に基づいた適否の情報を知ることができる。
 (5) 農薬データベースの管理、農薬適正診断システムの利用は、すべてウェブブラウザ上で操作することができる(図2)。
 (6) システムは、栽培履歴管理システムなどのアプリケーションと容易に連携できる。


図1:システム構成


図2:システム利用画面

4 試験結果及び考察
 (1) システムを運用する際は、JA等の機関単位の管理者の責任のもとにユーザ管理をおこない、ユーザによるシステム利用は農薬使用前を原則とする。
 (2) 本システムは、「農薬使用適正診断システム」としてプログラム登録されている (独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構知的財産データベースK-01)。利用に当たっては、担当者に連絡のこと。

5 普及指導上の注意事項
 (3) 現場のニーズに合わせ、収穫日、濃度・倍率、近接散布および混用適否等の診断項目等の設計。
 (4) 「YES!clean」などの独自基準に対応した診断をおこなうためのフィルタ等の設計。