成績概要書(2005年1月作成)
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研究課題:集出荷コストの低減に向けた物流ABC分析の活用法
(低コスト生産・流通体系の確立に向けた出荷規格簡素化の推進方策)
担当部署:中央農試生産システム部経営科 空知西部地区農業改良普及センター
協力分担:
予算区分:道 費(事 業)
研究期間:2003〜2004年度
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1.目 的
道産野菜は、輸入野菜との競争状態に直面しており、輸入野菜に対抗しうる供給体制を確立することが課題となっている。野菜の集出荷施設で発生する費用構造の把握手法である物流ABC分析は、コスト低減の道筋を明らかにでき、道産野菜の生産・流通の低コスト化に貢献しうるものである。そこで、物流ABC分析の具体的な利活用場面を提案することで、本道の野菜産地の運営に資する。
2.方 法
1)対象地域 空知管内A農協トマト専用集出荷施設、作業工程は、図1に示した。
2)物流ABC分析(Activity Based Costing:活動基準原価計算)
物流ABC分析は、物流コストを作業工程(Activity)ごとに算定する原価計算方式である。物流ABC分析を用いることで、集出荷施設における作業工程ごとに要した費用額やその費用の構成を把握でき、その分析結果は、集出荷施設におけるコスト低減の道筋を明らかにする場面で役立てられる。
3)集出荷の実態調査
3.成果の概要
1)A産地の事例から、集出荷施設で発生する費用を物流ABC分析により明らかにした(表1)。その結果、資源別コストの構成では、人件費のウェイトが高かった。また、作業工程ごとの構成では、配置された作業者の多い箱詰め工程と選果工程で生じるコストのウェイトが高かった。したがって、集出荷コストの低減にあたり、人件費の見直しが重要となることが明らかになった。特に、選果工程と箱詰め工程に着目することが有効であると考えられた。
2)人件費は、出荷量の増加に対応して作業者数を増加させたことと、選果ラインの処理速度を早めたことに対応して時間給をあげたことで、上昇していた(表2)。ただし、出荷量が増加したことと施設内の労働生産性が向上したことから、ケース当たりの負担額の上昇を回避していた(表2)。作業者数の削減を伴わない人件費の抑制には、施設の労働生産性の向上と出荷量の増加が不可欠になる。
3)選果作業に影響する等級のばらつきと労働生産性との関係をみたところ、労働生産性は、搬入されたトマトの等級がばらつく時ほど低下していた。とりわけ、労働生産性は、選果工程において規格外品の発生率が高まる時に低下していた(図2)。また、箱詰め作業に影響する規格ごとの出現玉数のばらつきと労働生産性の関係をみたところ、労働生産性は、規格ごとの出現玉数が不揃いな時ほど低下していた(図3)。
4)出荷量の変化に伴う集出荷コストについて、物流ABC分析によりシミュレーションした。その結果、出荷量を増加させることは、減価償却費等の固定的な費用の抑制につながり、集出荷コストの低下に結びつくことが認められた(図4)。また、閑散期の10月の人件費は割高となっていることから、施設の稼働期間内における出荷量を平準化させていくことが、人件費の抑制に効果をもつことが認められた(表3)。
5)集出荷コストのあり方は、施設に持ち込まれる量と中身(規格・品質)に大きく左右されることが判明した。そのため、集出荷コストの低減には、集出荷施設内での作業の改善だけに留めず、生産者の栽培技術向上に対する取り組みにしていくことが求められる。
6)物流ABC分析は、集出荷施設内の作業改善を図る以外に、分析結果を農協・普及センターにおける営農指導と組み合わせることで、集出荷コストの低減に有効になる。
7)生産から出荷までの一連の集出荷コストの低減方策として、①個々の経営における販売成果(規格及び収量)の低迷要因を特定し、その対応策を講じること、②規格外品混入への対応策を講じること、③新規の生産者の加入や新たな作型を導入することで、出荷量の長期安定化を図ることが挙げられた。
8)物流ABC分析の新たな活用場面を「集出荷コストの低減に向けた物流ABC分析の活用法」として整理した(図5)。
図1 A産地におけるトマト集出荷施設の作業工程と人員配置
注:1)人員配置は、2003年のもの
表1 集出荷施設における物流ABC分析の結果
注1)人件費:生産者が負担するパート男性及びパート女性に要した費用のみ計上。
注2)スペース費:施設の減価償却費の生産者負担分、固定資産税、光熱水道費を計上。
注3)設備・機器費:選果機一式、リフタートラック、備品、機械の修繕費を計上。
注4)資源・消耗品費:施設内で発生した消耗品等の費用を計上。
注5)包装資材費は扱っていない。
注6)四捨五入の関係で合計は100とならない。
表2 人件費の比較(2002年・2003年)
図2 選果工程における規格外品の発生率と労働生産性の関係
注1) プロットは、日単位のデータである。
注2) ***:有意水準1%。
図3 規格ごとの出現玉数のばらつきと労働生産性の関係
図4 出荷量ごとに見た集出荷コスト
表3 稼働時期別に見た人件費
図5 集出荷コストの低減に向けた物流ABC分析の活用法
4.成果の活用面と留意点
本成果は、野菜産地における集出荷コストの見直しを図る場面で活用できる。
物流ABC分析の実践には、専用ソフト(日本施設園芸協会)を用いることが望ましい。
5.残された問題とその対応