覆土前鎮圧機構を有する浅耕逆転ロータリシーダを用いた大豆播種技術(普及奨励事項)
北海道農業研究センター総合研究部総合研究第1チーム
執筆担当者 大下 泰生

 浅耕逆転ロータリシーダは砕土、施肥、施薬、播種を1工程で行う大豆用の作業機で、本機を基軸とした作業体系は慣行に比べて工程が少なく、作業時間を短縮できる。さらに、本機で用いた覆土前鎮圧は従来の鎮圧法に比べて大豆の出芽揃いが良く、出芽率が高い。

1 試験目的
 水田地帯の大豆栽培では、粘質土壌における砕土不足に起因して出芽が不安定であり、さらには作業適期のなかで水稲との作業競合が安定生産や規模拡大の障害となっている。そこで、新たに考案した覆土前鎮機構を用いて大豆の出芽性を改善し、さらには砕土から播種までの作業を同時化して工程を簡素化し、作業能率を高める播種技術について検討する。

2 試験方法
 (1) 砕土、施肥、殺虫剤の施薬、播種を1工程で行う浅耕逆転ロータリシーダを開発し、動力特性や砕土性を明らかにする。
 (2) 覆土前鎮圧と従来の部分鎮圧や全面鎮圧による大豆の出芽性を比較する。
 (3) 現地圃場における砕土性や大豆の出芽率を調査する。場所(土壌):栗沢町(灰色低地土)、供試品種:「ユキホマレ」

3 試験成績


図1 浅耕逆転ロータリシーダの外観


図2 覆土前鎮圧による播種断面


図3 鎮圧法と大豆の出芽率


図4 開発機と慣行の作業体系

4 試験結果及び考察
 (1) 開発機は、耕深を8cmと浅く設定し、逆転ロータリと揺動式くし状レーキにより、少ない耕起土量で大土塊を下層に沈め、細かい土塊を表層に集積できる機構とした。また、導管より地表面に排出された大豆種子を鎮圧輪で転圧し、これにより形成された播種溝上部に膨軟な表土を被せる覆土前鎮圧方式を用いた。播種深は約3cmで、播種と同時に種子近傍に殺虫剤を、種子の側条に化成肥料を施用する機構とした。さらに、条間を慣行の66㎝から33㎝の狭畦栽培にも適応できる構造とした(図1〜2)。
 (2) 開発機の所要動力は作業速度1.2m/sで55PSであり、慣行の逆転ロータリシーダが0.8m/sで60PSであることから、同じ作業速度で所要動力は約30%軽減された。また、砕土性は慣行の逆転ロータリより若干低下したが、淡色黒ボク土、泥炭土、灰色低地土ともに、平均土塊直径1㎝以内に砕土でき、大豆の出芽を安定させることができた。
 (3) 覆土前鎮圧で播種された大豆は、種子より下層は強く鎮圧されて毛管水の供給が高く、表層は膨軟に覆土されることから降雨後のソイルクラスト(土膜)の形成が抑制され、慣行の全面鎮圧や部分鎮圧に比べて出芽が短期間に集中し、出芽率も高くなった(図3)。
 (4) 開発機を用いた1工程作業、もしくは砕土性を高めるために正転ロータリによる砕土を加えてた作業体系は、慣行の正転ロータリ、逆転ロータリおよび施肥播種機を用いた作業体系に比べて工程数が少ないことから、作業時間を1/2〜3/4に短縮できた(図4)。また、開発機を用いた作業体系は、作業工程を簡略化したにもかかわらず、慣行と同等かそれ以上の砕土性や出芽率を確保できた(表1)。

5 普及指導上の注意事項
 (1) 開発機は砕土層が浅いため、心土破砕やチゼルプラウ等による耕盤破砕が必要である。
 (2) 種子、肥料、薬剤の繰り出しは電動で、作業速度に連動しない。
 (3) 施肥位置が種子に接近して肥料焼けを起こさないよう、施肥用作溝ディスク位置を調節する。