成績概要書(2005年1月作成)
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課題分類:
研究課題:種馬鈴しょ生産における茎葉チョッパと生育調節剤による茎葉処理技術
(種馬鈴しょの茎葉処理方法に関する試験)
(種馬鈴しょ生産のための茎葉処理機械利用技術の確立)
担当部署:十勝農試 生産研究部 栽培システム科
協力分担:
予算区分:受託
研究期間:2003〜2004年度(平成15〜16年度)
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1.目的
健全な種馬鈴しょ生産のためには、速やかにかつ効果的に茎葉処理を行い、茎葉の再生を防ぐことが重要である。現在指導されているピラフルフェンエチル乳剤は即効性に劣ることから、機械処理との組み合わせによる、より効果的な茎葉処理体系が求められてきた。そこで、茎葉チョッパとピラフルフェンエチル乳剤との組み合わせによる、処理残り程度および茎葉再生の少ない茎葉処理法の検討を行った。
2.方法
供試機:平成15年は自走式の機種Aを供試し、刈り高さ設定2cmと9cmの2水準で実施。
平成16年はトラクタ直装式の機種Bを供試し、刈り高さ設定9cmのみで実施。
供試薬剤(生育調節剤):ピラフルフェンエチル乳剤(P)。対照:ジクワット液剤(D)。
供試品種:「男爵薯」、「メークイン」、「ホッカイコガネ」ほか5品種。
処理区:1)チョッパ単用(処理区名:C)
2)チョッパ処理後ピラフルフェンエチル乳剤処理(C→P)
3)生育調節剤処理後チョッパ処理(P→C、D→C)
4)生育調節剤1回(P、D、品種:「男爵薯」、「メークイン」)、または
2回処理(P×2、D×2、品種:「ホッカイコガネ」)
調査項目:作物条件、刈り高さ、処理残り最大茎長、処理重率、処理株率・茎率、茎葉枯凋程度、処理2週後の処理残り(葉付き、茎のみ)株率・茎率、再生株率・茎率
3.成果の概要
1)茎葉繁茂期におけるチョッパ単用の刈り高さ設定2cmでは、処理重率が95%以上と高く、葉の処理残りがなかった。刈り高さ設定9cmでは、倒伏程度が大きいほど処理重率が低くなり、各品種とも葉の処理残りがあった。チョッパ処理により、既往の成果同様、塊茎の露出や損傷が増える傾向があった。
2)チョッパ処理後5日以内にピラフルフェンエチル乳剤を散布する体系処理が、確実な枯凋促進と茎葉再生抑制の点から最も有効であった(図1)。ピラフルフェンエチル乳剤の薬量を250〜450ml/10aの範囲では、葉付き茎率や再生茎率の差はほとんどなかった。表2に茎葉処理マニュアルを示した。
3)茎葉の再生が懸念される場合は、①チョッパ処理時の倒伏が多いとき、②チョッパ処理直後の葉の処理残りが多く、処理株率が低いとき、③再生しやすい品種の処理後であり、このような場合には体系処理を行うことが重要である。
4)「男爵薯」および「メークイン」では、刈り高さを低く設定できる自走式チョッパは再生が認められず、種馬鈴しょ生産への利用が可能と考えられた(図2)。トラクタ直装式チョッパでも、刈り高さ設定を低くすると処理重率が高くなり茎葉の再生が少なくなると考えられるが、高さ設定が低すぎると塊茎の損傷が増えるので、刈り高さの調整に留意して茎葉処理を行うこととする。
5)「ホッカイコガネ」では、処理重率が高くても再生の可能性が高いので、必ず体系処理を行う(図2)。
6)生育調節剤処理後のチョッパ処理では、再生茎率が数パーセント生じる場合があり、効果が不安定と考えられた。
表1.供試チョッパの主要諸元
供試機 | A | B |
乗用型 自走式 |
トラクタ 直装式 |
|
型式 | WP-1500 | TPC-3000 |
全長(mm) | 3,515 | 1,770 |
全幅(mm) | 1,600 | 3,250 |
全高(mm) | 1,440 | 1,150 |
全重(kg) | 555 | 750 |
エンジン馬力(PS) | 11 | - |
作業幅(mm) | 132〜150 | 2,980 |
刃の形状 | L型刃、直型刃 (固定) |
ツイストブレード (フレール) |
刃の枚数(枚) | 48 | 76 |
寸法(長さmm) | 120 | 138 |
回転数(rpm) | 2,400 | 2,460 |
周速度(m/s) | 41.4 | 53 |
処理畦数 | 2畦 | 4畦 |
備考 | リアタイヤ幅14cm | リアロークロップタイヤ装着(幅21cm) 使用トラクタPF82 |
図1.チョッパ処理後ピラフルフェンエチル乳剤処理の処理2週後の処理残り程度(十勝農試、平成16年)
注)刈り高さ設定9cm、棒上の数字は再生茎率の実数(%)。
図2.チョッパ単用における処理重率と処理2週後の再生株率(十勝農試、平成15・16年)
注)茎葉繁茂期および茎葉黄変始のチョッパ単用。太線は「男爵薯」「メークイン」を合わせた回帰直線。
表2.チョッパ処理後ピラフルフェンエチル乳剤処理の茎葉処理マニュアル
目的 | 使用時期 | 処理方法 薬剤・使用濃度(量) |
使用方法 | 注 意 事 項 |
採種栽培 における 茎葉枯凋 促進 |
[1回目処理] 開花始後 30日以降 (茎葉繁茂期) |
[1回目処理] 茎葉チョッパ |
茎葉処理 (体系処理) |
1.チョッパ処理ではロークロップタイヤを装着し、 塊茎の損傷や露出を防止する。 2.降雨が予想される場合は薬剤の散布を避ける。 3.土壌が極端に乾燥しているときは薬剤の散布を避ける。 4.枯凋効果は、薬剤散布後8〜10日でほぼ完成する。 5.1回目処理の時期は、品種の早晩性により次の通りを目安とする。 早生種:開花始後、30〜35日 中生種: 〃 、35〜40日 晩生種: 〃 、40〜50日 |
[2回目処理] 1回目処理後 5日以内 (収穫3日前まで) |
[2回目処理] ピラフルフェンエチル乳剤 (ピラフルフェンエチル 0.4%) 250〜450ml/10a 散布水量100L/10a 毒性:普通物 魚毒性:B |
4.成果の活用面と留意点
1)種馬鈴しょ生産における茎葉処理時に茎葉チョッパを使用する場合に活用できる。
2)「種馬鈴しょ生産管理基準」を遵守する。
3)トラクタ直装式チョッパを使用する場合、ロークロップタイヤを装着し、塊茎の露出 や損傷を防ぐ。
5.残された問題とその対応
1)茎葉再生程度の品種間差や、再生の起きやすい作物条件等は、現行課題「種馬鈴しょ生産のための茎葉処理機械利用技術の確立」(平成16〜18年)で検討中である。