成績概要書(2005年1月作成)
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課題分類:
研究課題:籾殻を利用したてん菜育苗培土の軽量化と実用性
(てん菜育苗苗の軽量化)
担当部署:十勝農試 生産研究部 栽培システム科
協力分担:日本甜菜製糖株式会社、北海道糖業株式会社、ホクレン農業協同組合連合会
予算区分:受託
研究期間:2001〜2004年度(平成13〜16年度)
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1.目的
てん菜紙筒移植栽培において、育苗培土充填後の紙筒の重さは1冊あたり40〜50kgに達し、土つめや苗ずらし、移植時の苗運搬といった作業は生産者の大きな負担となっている。そこで、育苗培土の軽量化を図るため、粉砕した籾殻を用いた軽量育苗培土を供試し、苗質やほ場での生産性、育苗管理および機械移植適性を検討した。
2.方法
1)軽量育苗培土の作成
粉砕籾殻のリットル重は284〜376g、1mm以上の粒径の割合は15〜31%であった。
含水率20%程度に調整した粉砕籾殻を、試験実施箇所(十勝農試および現地試験農家)で使用している土壌および育苗肥料等と混和し、軽量育苗培土を作成した。
2)試験項目
(1)粉砕籾殻の混合割合:十勝農試において粉砕籾殻の混合割合を検討し、紙筒重量の軽量化程度および作業強度の軽減効果を調査した。
(2)軽量育苗培土の苗質・生育特性:十勝農試および現地試験5箇所(新得町、本別町2箇所、女満別町および訓子府町)において、軽量育苗培土の苗質および生産力を、慣行育苗培土(標準土)と比較した。
(3)苗質向上のための育苗管理:十勝農試において、軽量育苗培土のかん水方法、液肥処理等の苗質向上対策を検討した。
(4)機械移植適性および活着性:十勝農試、現地試験2箇所(新得町および本別町)において、移植時の土抜け程度、機械移植精度、乾燥条件での苗の活着性を調査した。
3.成果の概要
1)粉砕籾殻の混合割合:紙筒重量軽減程度、苗質、移植後の生育および収量性から、軽量育苗培土の粉砕籾殻混合割合は体積割合で60〜70%が適した。軽量育苗培土の紙筒重量は標準土より3割程度軽くなり(表1)、苗ずらし作業の心拍数増加率は14%軽減され、作業時間は25%短縮された。
2)軽量育苗培土の苗質・生育特性:軽量育苗培土の出芽率は、標準土と比べて同等かやや低かった。移植苗の地上部生育は同等かやや小さく(図1)、根重がかなり多かった(図2)。5月下旬から6月中旬にかけての地上部生育は標準土とほぼ同等で(図3)、収穫期の糖量は標準土とほぼ同等であった(図4)。
3)苗質向上のための育苗管理:軽量育苗培土の苗質向上のためには、紙筒表面が乾燥しやすいことから、かん水をこまめに行うことが必要である。また、液肥処理を播種2〜3週後(本葉抽出始〜本葉展開期)に行うことが苗の生育安定化に役立つと考えられた。
4)機械移植適性および活着性:軽量育苗培土の機械移植作業時の土抜け程度や植付け姿勢は標準土とほぼ同等であった。しかし軽量育苗培土では、紙筒露出高さ30mmの極端な浅植えにより欠株や活着不良株が増加した。
5)上記の結果をまとめて、表2に軽量育苗培土の育苗管理ポイントを示した。
表1.軽量育苗培土の紙筒重量(十勝農試、平成13〜16年)
培土の種類 | 播種後 (kg/冊、比) |
移植前 (kg/冊、比) |
籾殻60% | 27.9 (70) | 30.8 (72) |
籾殻70% | 25.4 (64) | 28.4 (67) |
標準土 | 38.7 (100) | 42.6 (100) |
図1.移植苗の草丈(平成13〜16年)
注)記号○:十勝農試、△:現地試験(図2〜4も同じ)
図2.移植苗の根重(平成13〜16年)
図3.5月下〜6月中旬の草丈(平成13〜16年)
図4.収穫期の糖量(平成13〜16年)
表2.軽量育苗培土の育苗管理ポイント
項目 | ポイント |
育苗培土の作成 | ・育苗培土中における粉砕籾殻の混合割合は60〜70%(体積割合)とする (およそ、粉砕籾殻:土壌=2:1で混合)。 |
・紙筒あたりの施肥量はこれまで通りとする。 | |
播種作業 | ・播種作業は、土壌100%の場合と同様に行い、育苗培土を十分に詰める。 |
・覆土には粉砕籾殻は使用しない。 | |
育苗管理 (かん水) (液肥処理) |
・紙筒表面が乾きやすく、出芽率および苗の地上部生育が、土壌100%の 場合と比べて、やや劣る場合がある。このため、次の項目に留意する。 |
・播種後のかん水は、播種直後には行わず、播種3日後以降2回に分けて行い、 紙筒の下まで浸透させる。 |
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・出芽までのかん水は、紙筒表面が乾燥しないよう適宜かん水する。 | |
・出芽始以降は、表面が乾きすぎない程度に、こまめにかん水する。 | |
・播種後2〜3週頃(本葉抽出始〜本葉展開期)に液肥を1度散布すると、 苗の生育が安定する。 | |
移植作業 (かん水) |
・軽量育苗培土では、紙筒表面が乾きやすいため、次の点に留意する。 |
・移植時のかん水は十分に行う。かん水が不十分な場合、①紙筒がはがれにくい、 ②土が抜けやすい、③苗の活着が劣る場合がある。 |
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・かん水したのち移植まで長時間あいた場合には、再び軽くかん水する。 |
4.成果の活用面と留意点
1)粉砕籾殻をてん菜育苗培土に利用する場合に活用できる。
2)育苗および移植作業の軽労化に貢献できる。
3)かん水および液肥処理に留意し、それ以外は規格1号紙筒の育苗管理基準を遵守する。
5.残された問題点とその対応
1)籾殻の安定確保