成績概要書                            (2005年1月 作成)
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研究課題:細断型ロールベーラの作業性評価
担当部署:根釧農業試験場 研究部 酪農施設科
協力分担:なし
予算区分:受託
研究期間:完 2003年度(平成15年度)
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1.目的
 新たに開発された細断型ロールベーラと自走式ベールラッパの作業性能を明らかにするとともに、調製ベールのサイレージ品質を検討して、その作業性を評価する。

2.方法
1)供試機 (1)細断型ロールベーラ(バーチェーン式) (2)自走式ベールラッパ
2)試験期日、場所 (1)圃場内走行:平成15年10月14日、根釧農試試験圃場
             (2)定置作業:平成16年9月26〜27日、根釧農試
3)作業精度試験 各細断型ロールベーラに2条用のコーンハーベスタを装着して作業
4)作業動力試験 トルクピックアップを用いてPTO軸トルク、軸回転数を計測
5)作業能率試験 圃場内走行作業(一方向で刈り取り)と定置型作業で各作業時間を計測
6)サイレージ品質 密封後5、8、10ヶ月後に開封して分析
7)作業性の評価 オペレータへの聞き取り調査

3.結果の概要
1)供試ベーラは、同時に牽引される2条刈りコーンハーベスタにより細断されたとうもろこしをコンベヤ付のチャンバに受け、これをベール成形室にまとめて送り込むことにより直径約80cm、幅約90cmのベールを梱包する定径型ロールベーラである。細断ベール用の自走式ベールラッパは9.6kW(13PS)のガソリンエンジンを搭載したクローラ自走型である。適応ベール寸法は幅100cm、直径100cmである。幅50cmのラップフィルム2本で密封する。油圧グリップアームで積み込み、テーブルリフト・ダンプで荷下ろしする。
2)供試した飼料用とうもろこしは、圃場内走行試験(H15)がマルチ栽培(畦間75cm、株間15cm、9500本/10a)の「39B29」で収量は4713kg/10a(水分72.8%)で糊熟後期あった。定置作業試験(H16)がマルチ栽培の「チベリウス」で収量は5847kg/10a(水分68.0%)で黄熟中期であった。
3)圃場内走行での精度試験はネットのブレーキ力を57.3〜67.0kgfに変えて実施した。作業速度は0.68〜0.72m/sで、ベールの排出後の形状は楕円形で縦が730〜850mmで横は790〜838mm、幅が905〜920mmであった。重量は233〜364kgで密度は510〜726kg/m3であった。梱包時のロスは1.6〜5.0kgでベール重量に対する割合は0.4〜1.4%であった。ラップ時のロスは0.5〜2.8kgで、総損失は約0.8〜1.8%であった(表1)。この時の平均軸トルクは10.2〜10.9kgf-mで平均馬力は7.4〜8.2PSであった。供試機は定径型のため、ベール成形時には急激に軸トルクと馬力が増加し、ネット掛け直前で最大となり、その後徐々に低下する。最大馬力は9.7〜13.6PSであった(表2)。
4)圃場内走行での作業能率試験は、面積0.254haの圃場を平均速度0.95m/sで作業し総作業時間は40.17分で作業能率は0.38ha/hであった(表3)。また、原物処理量は12.6t/hであった。
5)自走式ベールラッパの作業能率は、密封ベール数31個で、総作業時間は5091秒であった。ベール1個あたりの密封時間は164秒で、フィルム交換を含む1時間あたりのベール密封個数は21.9個となった(表4)。
6)定置作業は細断型ベーラの成形室後方に自走式ベールラッパを配置し、ホイールローダで細断コーンを供給し、ラップベールは別のホイールローダで運搬する体系で実施した。梱包作業能率は、34個のベールを0.709時間で梱包し47.9個/hであった。密封作業能率は、35個のベールを0.928時間で密封し37.7個/hであった。ネット1本で139個のベールを梱包し、ラップフィルム1組で60.5個の密封ができた。細断ベールの梱包・密封資材費はネットが237.4円/個、ラップフィルムが396.7円/個で、合計634.1円/個であった(表5)。
7)圃場内走行作業により調製したベールの5、8、10ヶ月後の開封時の品質はフリーク評点、V-Scoreとも良好であった(表6)。細断型ロールベーラのオペレータによる評価は、細断飼料の供給開始以外の操作が全て自動であり非常に作業が容易であったとしている。
8)以上のことから、供試した細断型ロールベーラおよび自走式ベールラッパは圃場内走行および定置作業により良質なコーンサイレージを調製することができる。

表1 細断型ロールベーラ、自走式ベールラッパの作業精度試験結果
試験番号 T-1 T-2 T-3 T-4 T-5 T-6 T-7 T-8 T-9
ブレーキ力(kgf) 57.3 67 65
作業速度(m/s) - 0.68 0.69 0.69 0.68 0.72 0.69 0.68 0.69
ベール 幅(mm) 910 910 915 905 920 905 910 905 910
平均縦(mm) 730 805 800 850 795 815 803 820 780
平均横(mm) 810 835 795 830 838 790 798 790 820
重量(kg) 259 253 254 364 293 270 233 280 252
密度(kg/m3) 613 527 556 726 609 590 509 608 551
梱包ロス(kg) 1.6 1.6 2 5 2.1 1.2 2.2 2.1 2.3
総処理重量(kg) 261 255 256 369 295 271 235 282 254
総 流 量(t/h) - 13.3 12.4 25.5 10 15.7 13.4 13.4 17.2
ラップロス(kg) 2.3 0.5 0.6 1.1 1 0.8 2.1 2.8 2.3
総 損 失(%) 1.5 0.8 1 1.7 1.1 0.7 1.8 1.7 1.8
水分(%) 72.7 72.4 73 73 73.6 73.6 72.2 72.7 71.8
乾物密度(kg/m3) 167 146 150 196 161 156 142 166 155

表2 精度試験時の所要動力
試験
番号
作業速度
(m/s)
総流量
(t/h)
原物密度
(kg/m3)
平均軸トルク
(kgf・m)
平均馬力
(PS)
最大トルク
(kgf・m)
最大馬力
(PS)
T-3 0.69 12.4 556 10.9 8.2 16.3 11.9
T-6 0.72 15.7 590 10.4 7.4 17.2 13.6
T-9 0.69 17.2 551 10.2 7.5 13.5 9.7
ノーロード
(無負荷)
- - - 6.6 5 - -

表3 圃場内収穫・梱包作業能率試験結果
作業時間 総計(min) 内訳(min) 平均速度
(m/s)
圃場面積
(ha)
作業能率
(ha/h)
直進 回行 移動 停止梱包 トラブル 停止
実測値 63.38 26.28 3.22 16.83 10.67 2.02 4.37 0.95 0.254 0.38
調整後 40.17 26.28 3.22 - 10.67 - -
割合(%) 100.0 65.4 8.0 - 26.6 - -
調製ベール数31個、総処理量8430kg(272kg/個)、原物処理量12.6t/h

表4 自走式ベールラッパの作業能率
  総計
(秒)
内訳(秒) ベール数
(個)
1個あたりの時間
(秒)
1時間あたりの個数
(個)
移動 拾い上げ ラップ 排出 ラップ交換 トラブル 停止
作業時間 5091 1526 527 1738 416 223 153 508 31 164 21.9
割合(%) 100.0 25.4 8.8 29.0 6.9 3.7 2.6 8.5

表5 定置作業での梱包、密封作業能率
梱包作業 密封作業
ベール数
(個)
時間
(h)
能率
(個/h)
ベール数
(個)
時間
(h)
能率
(個/h)
34 0.709 47.9 35 0.928 37.7
作業者数(収穫運搬以外):4名、平均ベール重321kg/個、梱包作業での原物処理量15.4t/h

表6 サイレージの品質
開封日 3月29日 6月4日 8月13日
n1) 2 3 5
pH 3.7 3.7 3.75
乳酸(%)2) 0.3 0.26 0.23
VBN/TN 0.009 0.009 0.01
フリーク評点 100 99.7 97.4
V-Score 99.9 100 100
1)ロールベールの数、2)新鮮物中の重量比
密封H15.10月、開封H16年

4.成果の活用面と留意点
1)本試験成果は、中山間地域等での飼料用とうもろこしの収穫・調製作業に利用が可能である。

5.残された問題とその対応
1)TMRの梱包・密封と貯蔵性の検討