成績概要書(2005年1月作成)
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課題分類:
研究課題:衛星データと地理情報システムを用いた高精度な水田圃場図の作成法
寒地輪換畑における表層透排水性改善技術を基幹とした畑作物・野菜等の高品質安定生産
2.長期転換畑を前提としたテラブレークシーディング等透排水性改善技術と畑作物・
野菜の高品質安定生産
2)GISを活用した透排水性評価システムの確立
担当部署:上川農試研究部栽培環境科 中央農試生産システム部水田農業科
担当者名:
予算区分:国費補助(地域基幹)
研究期間:2002〜2004年度(平成14〜16年度)
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1.目的
農地の利用状況を把握することは地域における土地利用の施策立案や営農指導場面での有用な情報となる。本研究では衛星リモートセンシングによる水田判別法とGISを組み合わせた効率的な水田圃場図の作成法について検討する。
2.試験方法
1) 解析ソフトおよび供試衛星データ
リモートセンシングソフト : Leica社 ERDAS IMAGINE 8.5 advantage
地理情報システム(GIS)ソフト : ESRI社 ArcGIS Arcview 8.3
データベースソフト:Microsoft Access Microsoft excel
LANDSAT5号、7号(解像度30m)、SPOT4号(解像度20m)、SPOT5号(解像度10m)
2) GISの構築:士別市てしおがわ土地改良区よりCADで作成された圃場図形ファイルと賦課金計算ソフト「大地」(ソリマチ社)に入力された地番、実測面積等のデータを入手し、GISの基本属性とした。記載範囲は風連町東部地域を除く、中央部地域の約5600圃場をカバーしていた。
3) 検証用データ:作成した水田圃場図を検証するために2001年、2002および2003年度の風連町転換畑作付図を風連町役場より借り受け、圃場ごとの利用作目を13項目(不明を含む)に分類しGISに導入した。
3.成果の概要
1)衛星データを用いて水田を判別するための条件と衛星データを利用した水田圃場図の作成法について検討した(図1)。また、作成した水田圃場図を用いて水田圃場の変遷を考察した。
(1)衛星観測時期は、移植後〜幼穂形成期(5月下旬〜6月下旬)頃がデータ取得機会も安定して高く、水田の判別に好適である。
(2)湛水された水田は中間赤外波長の反射が、裸地(豆類)や植生(秋播小麦)に比べ特徴的に低いことから、水田判別には中間赤外波長を用いることが必要である。
(3)衛星データの解像度が高いほど、水田の判別精度は向上する。
(4)衛星データから作成した水田圃場図は、圃場レベルでの水田把握には限界があるが、市町村レベルで水田の地理的分布を把握するデータとして有効である(図2)。
(5)過去20年間の風連町における水田圃場の変遷を考察すると、これまでの利用形態には地域的な集積等の施策が働かず、耕作者の意思により決定されたと推測されたが、近年になり転作作物の団地化や作業効率、土壌条件等の理由により転換畑の集団化が進みつつあることが伺えた。
2)精度の向上を図るため、衛星データとGISを組み合わせた水田圃場図の作成法について検討した(図1)。
(1)衛星データから作成した土地被覆分類画像にGISの圃場区画図を重ね、圃場区画に含まれる最も多い分類クラスをその圃場の代表クラスとしてGIS属性に登録する、Majority処理を行うことによって、圃場区画ごとの土地被覆分類を特定することができる。
(2)SPOT5号(10m)のデータを用いて作成した水田圃場図は解析地域内の全水田面積の99.9%を水田と判別し、転換畑作付図と一致した圃場は面積率で99.6%と高い精度をもっていた。これよりも解像度が低いSPOT4号(20m)のデータを使用した場合は、転換畑作付図と一致した圃場は面積率で95.2%とやや精度が低下した。LANDSAT7号(30m)では2割程度の誤判別圃場が生じた(表1、図3)。
(3)水田圃場が誤判別された事例について目視判読を行うと、多様な土地被覆の混在やビニールハウスなど農業資材の影響、検証に用いた作付図の記載違いなどが原因と推定された。
以上のことから、衛星データから作成した水田圃場図は、圃場レベルでの水田把握には限界があるが、市町村レベルで水田の地理的分布を把握する情報として有効である。さらにGISを組み合わせることで高精度な水田圃場図の作成と水田面積の推定が可能となった。本法に用いる衛星データは、現行の衛星ではSPOT5号(解像度10m)が最も好適であるが、データの取得機会を考慮するとSPOT4号(解像度20m)も利用可能である。
図1 水田圃場図の作成フロー
図2 衛星データから作成した水田圃場図
(SPOT5 2003.6.8)
表1 衛星データとGISを組み合わせた水田圃場図の精度
注)面積率は解析地域内の水田面積を100%としたときの比率
図3 衛星データとGISを組み合わせて作成した水田圃場図
4.成果の活用面と留意点
・本試験成果は圃場図や作付状況のGISデータを作成、保有している市町村などの行政機関や JAおよび土地改良区等の団体で活用できる。
・GISを導入していない場合でも、衛星データから作成した水田圃場図は市町村レベルで水田 の地理的分布を把握するデータとして有効である。
・誤判別された圃場については現地確認を行う。
5.残された問題点とその対応
・データ取得が天候に影響されない合成開口レーダー(SAR)の検討