成績概要書(2005年1月作成)
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研究課題:秋まき小麦のタンパク質含量および糊化特性に基づく加工適性
       大規模収穫・調製に適した品質向上のための小麦適期収穫システム       
        品質取引に向けたGIS・リモートセンシング情報に基づく仕分け集荷技術の開発
         α-アミラーゼ活性モニタリング手法の開発と品質劣化様相の解明         
担当部署:中央農試農産工学部農産品質科、北農研センター畑作研究部品質制御研究チーム
協力分担:北農研センター畑作研究部麦育種研究室、食加研食品開発部農産食品科
       中央農試水田農業科、畑作科 十勝農試栽培環境科 北見農試栽培環境科
予算区分:外部資金     研究期間:2002〜2004年度
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1.目 的
 小麦の流通場面において2005年産よりタンパクを基準とした品質ランク区分(日本めん用小麦の基準値9.5〜11.5%、許容値8.0〜13.0%)が導入される予定である。生産現場では適正タンパクの小麦を生産するための取組みが精力的に行われているが、年次、産地によっては高タンパクになる場合がある。そこで本研究では、日本めん用小麦の品質と加工適性の関係を調査するとともに、やむを得ずタンパク質含量が高くなった生産物をパン用として利用することの可能性について、秋まき小麦「ホクシン」を用いて検討した。

2.方 法
1) デンプンの理化学特性 2002年産「ホクシン」(北農研畑作研究部)から得られたデンプン
2)小麦の粉色の調査 2002-2003年、空知、十勝、網走地域産「ホクシン」367点
3)製めん試験 2003年、空知地域産「ホクシン」5点、市販粉1点
4)製パン試験 2004年、中央農試産「ホクシン」9点
   添加材料:粗グルテン粉末(グルテン)、発芽小麦粉末(モルトフラワー)
   製パン方法(ストレート法、ワンローフ山型食パン、100g×2反復)
   調査分析項目 小麦粉タンパク質含量、RVA最高粘度、ファリノグラフ特性値、
             パン比容積、クラム物性(硬さ、弾力性、凝集性、弾力性)
3.成果の概要
1)低アミロ小麦では、健全小麦と比較して、デンプンの結晶構造や表面構造に大きな差はなかったが、デンプンの膨潤力が低く、アミラーゼによる生デンプン消化性が高いことが判明した(表1)。
2)小麦粉のタンパク質含量が高くなるのに伴い、粉色L*(明度)および製めん試験における麺帯色L*が低くなった(図1)。このことから、タンパク質含量が高いものは、製めん性が劣ると考えられた。
3)小麦粉のタンパク質含量が高くなるのに伴い、ファリノグラフ特性値のAb(吸水率)、DT(生地形成時間)、Stab(安定度)およびVV(バロリメーターバリュー:生地特性の総合評価値)が高くなり、Wk(弱化度)が低くなった(表2)。これらの変化の方向は、パン用小麦の生地物性の評価が高くなる方向と同様であった。
4)小麦粉のタンパク質含量が高くなるのに伴い、パン比容積が高くなった(図2)が、春まき小麦には及ばなかった。パン比容積とクラム硬さの間には負の相関関係、パン比容積とクラム弾力性の間には正の相関関係があった。このことから、タンパク質含量の高い生産物はパン比容積とクラム物性がパン用小麦に近づく傾向にあると考えられた。
5)RVA最高粘度が20〜50RVU程度の小麦粉は通常の最高粘度のものに比べ、パン比容積は高かった(図3)が、クラム弾力性は低かった。最高粘度が低下するのに伴い、ファリノグラフ特性値のWkは高くなり、特に最高粘度が50RVU以下の範囲でWkの上昇が著しかった。生地物性およびパン品質から判断して、最高粘度が50RVU以下のものは明らかに製パン性が劣ると考えられた。
6)RVA最高粘度が約400RVUの小麦粉と比較して、最高粘度が約150RVUおよび約250RVUのものはパン比容積が高かった。約400RVUのものと比較して、約250RVUのクラム弾力性は同程度であったが、約150RVUのクラム弾力性は低かった(図4)。パン比容積およびパン品質から判断して、最高粘度が約400RVUのものに比べ約250RVUの製パン性は同程度、約150RVUの製パン性は劣ると考えられた。
7)以上の結果から、秋まき小麦「ホクシン」は基本的には日本めん用であるが、タンパク質含量の高い生産物については、パン用としての利用も可能であると考えられた。また、最高粘度が低い生産物は日本めんに用いる場合と同様、パン用としての適性も劣ると考えられた。

4.成果の活用面と留意点
1)生産現場では適正なタンパク質含量の小麦生産を目指すことが前提である。本成績は、基準値を超える高タンパク小麦が生産された場合に、流通、利用の場面で用途を検討する際の参考となる。
2)本成績は秋まき小麦「ホクシン」を対象としたものである。

5.残された問題とその対応
1)圃場において収穫時に糊化粘度が低下している小麦の製パン性
2)タンパク質含量が日本めん用に好適とされる範囲よりも低い小麦の用途