成績概要書(2005年1月作成)
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研究課題:ふん尿主体施肥の現地導入対策
      (家畜ふん尿処理・利活用技術の実証による環境保全型酪農経営の確立)
担当部署:根釧農試技術体系化チーム・釧路北部地区農業改良普及センター
予算区分:国費補助(革新的農業技術導入促進事業)
研究期間:2001〜2004年度(平成13〜16年度)
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1.目的
 個別農家のみならず、地域の誰もが家畜ふん尿の利用を適正化できるようにするため、すでに開発されている「ふん尿主体施肥」を現地に導入するときに、前もって検討すべき問題点を抽出し、その対策を提示する。

2.方法
 1)調査対象農家:X町内酪農家6戸、草地面積37〜127ha、
乳牛飼養頭数(成牛換算)63〜235頭、ふん尿貯留体系はスラリー、堆肥各3戸
 2)調査内容:ふん尿主体施肥に必要な以下の4過程で発生する問題点を整理する。
  (1) 圃場診断過程:草地の草種構成調査・土壌診断結果から圃場に必要な施用量を算出。
  (2) ふん尿の肥料換算過程:上記6戸の農家においてふん尿を肥料換算。
あわせて、8戸の農家においてスラリー中養分含量の変動を調査。
  (3) 施肥計画の立案過程:上記の調査結果に基づき、ふん尿利用計画・施肥設計を立案。
  (4) 計画実行過程:計画に基づき農家が施肥管理を実施。

3.成果の概要
 1) 圃場診断過程
  (1) 航空写真を利用した圃場図は、調査結果の説明、コントラクタへの指示等、正確な情報の伝達に有効であった(図1)。農家に対し、圃場図に管理来歴の記載を依頼した結果、その対応は農家によって大きく異なった。草地管理上の改善点の抽出、改善効果の判定などのために、記帳の重要性を理解してもらうことが重要である。
  (2) 北海道施肥ガイドに基づいて草地と土壌を区分・診断し、各圃場に必要な肥料養分量を算出する人材を養成するため、研修等が必要である。
 2) ふん尿の肥料換算過程
  (1) ふん尿の養分含量は変動の大きい場合があるので(図2)、採取時には十分なふん尿貯留量で、よく撹拌する。複数回ふん尿を採取して農家の代表値を把握するとよい。
  (2) ふん尿の養分含量を直接定量できる分析の外注先を確保することが望ましい。直接定量が困難な場合には、簡易分析で対応する。
 3) 施肥計画の立案過程
  (1) 土壌診断に基づくふん尿利用計画を立案し、過剰分の経営外への搬出や圃場ごとの施肥の適正化を図った結果、購入肥料節減の可能性を認めた(図3)。
  (2) 精密な施肥設計は肥料銘柄と面積当たりの施肥量を多様化し、農家の施肥作業を煩雑にする。複数の銘柄を使い分ける効率的作業体系の導入について、啓発・普及を要する。
  (3) ふん尿主体施肥に有利な価格体系(保証成分の濃度に応じた価格設定、冬期に安い価格体系等)が望まれた。
 4) 計画実行過程
  (1) ふん尿主体施肥設計で計画されたふん尿施用量を遵守できない事例を多く認めた。
  (2) 計画を正確に遂行できなかった理由は、農家の意識、自然条件および体制・施設の問題におおむね区分できた(表1)。
[全体評価]
 以上の4過程で抽出された問題点とその対策をまとめた(図4)。農家単独では対応の困難な対策が多く、生産現場で農家を支援する組織体制の整備が重要であった。また、その体制を構築する際には、本試験で得られた作業量の見積もりが有益と思われた(表2)。

4.成果の活用面と留意点
 本成果は、ふん尿主体施肥の実践、および、それを推進する農家支援体制の構築とその運営に活用する。

5.残された問題点とその対応
 1) 平成16年度より、農協を核とする農家支援体制の組織化と運営支援の実証を開始
 2) ふん尿およびその施用作業を軽量化する技術の開発