成績概要書(2006年1月作成)
研究課題:大豆遺伝資源の子実成分評価と主要作物遺伝資源の特性情報
      (大豆遺伝資源の子実成分評価と主要作物遺伝資源の特性調査)
      (小豆保存遺伝資源の種子更新と特性調査)

担当部署:植物遺伝資源センター研究部資源利用科、資源貯蔵科
協力分担:
予算区分:道費
研究期間:2002〜2005年度(平成14〜17年度)

 

1.目的
 北海道が保有する遺伝資源のうち、大豆について豆腐用等関連特性を調査し、育種素材を選定する。また、水稲、麦類、豆類の未調査遺伝資源について一次評価項目を調査し、育種素材等への利活用に資する。

2.方法
(1)供試資源数(年次内、年次間の反復なし)

注)カッコ内は比較品種数。小豆の暖地調査は九州特産種苗センター(熊本県)で実施。

 (2)調査項目
  1)大豆遺伝資源の子実成分評価:粗蛋白含有率、遊離型全糖含有率、脂肪含有率
  2)主要作物遺伝資源の特性情報:植物遺伝資源特性分類階級区分(植物遺伝資源連絡委員会1998)の一次評価項目。ライ小麦は小麦に準じた。

3.成果の概要
 (1)大豆遺伝資源の子実成分評価
  1)豆腐用の育種素材として、「トヨムスメ」に比べ
   ①粗蛋白と遊離型全糖の含有率がともに高い、②粗蛋白含有率がおよそ2ポイント以上高く遊離型全糖含有率が並、③粗蛋白含有率が並で遊離型全糖含有率がおよそ1ポイント以上
    高いものを抽出し、その中から種皮色が黄白から黄で百粒重が25g以上の遺伝資源合計17点を有望なものとして選定した(図1)。
  2)「トヨムスメ」に比べ遊離型全糖含有率が高い遺伝資源について、粒大と種皮色に注目し、煮豆用7点・納豆用9点を有望なものとして選定した。
 (2)主要作物遺伝資源の特性情報
  1)水稲:穂長、穂数、精籾千粒重の3形質の評価から、「きらら397」に比べて、どれか一つ以上の形質で優り、残りの形質で並かやや優る遺伝資源21点を抽出した。
    この中から、成熟期、脱粒性、止葉直立程度も加味して注目すべき遺伝資源4点を抽出した。
  2)麦類:秋まき小麦では「タクネコムギ」より成熟期が早かった資源は16点、「ホクシン」より千粒重で5g以上重かった資源は250点あった(図2)。春まき小麦では「ハルユタカ」より千粒
    重で5g以上重かった資源は27点あった。二条大麦では「りょうふう」より千粒重で5g以上重かった資源は3点あった。大麦(六条)では春まき皮麦で、3点が二条大麦「りょうふう」に
    匹敵する粒大を示した。ライ小麦では各形質に変異がみられ、もっとも早熟のものでも秋まき小麦の「ホクシン」や春まき小麦の「ハルユタカ」より晩かった。
  3)豆類:大豆では、「トヨムスメ」より成熟が早く粒大が同程度以上のものと、「トヨムスメ」並の熟期で粒大が大きいものと、「ユウヅル」より成熟が早く粒大が同程度以上のものの計20
    点を抽出した。小豆では、成熟予備調査の結果、供試927点のうち448点(約48%)が滝川において成熟期に達した。特性調査では成熟期が「エリモショウズ」並で大粒か「アカネダイ
    ナゴン」並の熟期で大粒の遺伝資源が8点みられた(抜粋:図3)。暖地調査(熊本県)では、「アカネダイナゴン」に比べ早熟で同程度の粒大か同程度の熟期で大粒の遺伝資源が21
    点みられた。


図1 2成分からみた豆腐用大豆育種の有望な育種素材 (2003年)

 

          
図2 秋まき小麦の千粒重の年次別度数分布                                      図3 小豆の成熟期と百粒重(2003年滝川)  

4.成果の活用面と留意点
 (1)本成績の個々の調査データは道の各作物育成場等に提供する。
 (2)大豆子実成分評価情報は、豆腐用等大豆品種育成の育種母材選定に活用できる。
 (3)一次評価項目情報は、それぞれの育種素材選定等に利用できる。

5.残された問題とその対応
 (1)遺伝資源センターで保存する遺伝資源のうち、稲で約35%、小豆で約55%が一次評価項目調査に未供試である。