新品種候補   (作成 平成18年1月)

てんさい新品種候補   「H 134」の概要    北海道立北見農試、十勝農試、中央農試、上川農試、北農研センター 北海道てんさい協会(北海道糖業㈱、日本甜菜製糖㈱、ホクレン)
1.特性一覧表
系統名 H 134 来歴 「H 134」は、ベルギーのセスバンデルハーベ社(旧アドバンタ社)が育成した三倍体単胚の一代雑種である。平成14年にホクレン農業協同組合連合会が輸入し、同年「HK02-6」の名で輸入品種検定予備試験に供試。平成15年より各種試験を行った。
特性 長所 1) 「アーベント」、「アセンド」より根中糖分が高い。
2) 「アーベント」、「アセンド」より不純物価が低く、高品質である。
短所 1) 褐斑病抵抗性が“弱”である
普及見込面積   平成18年度 500ha   平成19年度以降 1,000ha
  系統・品種名 H 134 モノホマレ アーベント アセンド
形質   (標準品種) (対照品種) (対照品種)
倍 数 性 三倍体 二倍体 三倍体 三倍体
葉   姿 やや開平 直立 やや開平 やや開平
葉   長 やや短 やや短 やや短
葉   数 やや多 やや多
葉   形 楕円 皮針 楕円 楕円
クラウンの大小 やや小
根   形 やや短円錐 円錐 円錐 円錐
分 岐 根
露   肩 やや少 やや少 やや少
根  重(t/10a) 7.62(101) 7.51(100) 7.75(103) 8.01(107)
根中糖分(%) 17.97(105) 17.06(100) 17.47(102) 17.40(102)
糖  量(kg/10a) 1,364(107) 1,274(100) 1,347(106) 1,387(109)
修正糖量(kg/10a) 1,222(110) 1,110(100) 1,183(107) 1,228(111)
アミノ態窒素(meq/100g) 1.63( 84) 1.94(100) 1.81( 93) 2.01(104)
カリウム(meq/100g) 3.81( 86) 4.42(100) 4.41(100) 3.99( 90)
ナトリウム(meq/100g) 0.27( 50) 0.54(100) 0.35( 65) 0.37( 69)
不純物価(%) 3.51( 79) 4.47(100) 4.15( 93) 4.11( 92)
特性検定試験        
褐斑病抵抗性 やや弱(やや強)
根腐病抵抗性 やや弱 やや弱(弱) やや弱 やや弱
耐湿性 やや弱 やや弱
抽苔耐性
黒根病抵抗性
注1)特性検定は担当農試の成績で、褐斑病抵抗性、根腐病抵抗性における「モノホマレ」の( )内は品種登録時の評価。
  2)形態的特性は十勝農試の成績。その他は十勝、北見、中央、上川、北農研、てんさい協会(3カ所)の計8カ所平均で、試験年次は3カ年(平成15〜17年) 。
   但し、平成15年十勝農試、平成17年日甜は除く。( )内は「モノホマレ」に対する百分比。
  3)「H 134」はそう根病抵抗性を持たないので、特性検定試験に供試していない。

 

2.「H 134」の特記すべき特徴
 「アーベント」、「アセンド」と比較して糖量は同等で、根中糖分が高い。また、不純物価が低く、品質で優れる。

3.優良品種に採用しようとする理由
 近年、糖量の優れるてんさい品種の導入が進み、てんさい糖の生産量は急速に伸びている。しかし、その一方で、砂糖需要の低迷等も加わり、糖価調整制度の収支構造は悪化している。このような事態を受けて、平成17年3月に出された「砂糖及び甘味資源作物政策の基本方向」では、最低生産者価格の撤廃と政策支援の上限設定、ならびに原料輸送費負担の見直しを含む生産コストのより一層の削減が明記されている。従って、原料てんさいについては、根重の増加による糖量の確保だけでなく、製糖コスト削減のために、より高糖分、高品質な品種の導入、開発が求められている。
 「アーベント」、「アセンド」は糖量の優れた品種としてそれぞれ平成11年、平成16年に優良品種に認定され、平成17年には「アーベント」が13742ha、「アセンド」が9725haと広く作付けされている。しかし、一般に製糖工場の受け入れ期間前半の原料は低糖分傾向であり、製糖工程のロスになることから、低糖分原料の糖分向上のためには、より根中糖分の高い品種が必要とされている。
「H 134」は、「アーベント」、「アセンド」と比較して糖量は同等で、根中糖分が高い。また、不純物価が低く、品質でも優れる。

 以上のことから、「H 134」を「アーベント」、「アセンド」の一部に置き換えて北海道一円に普及することにより、てんさいの安定生産に寄与できる。

 

4.栽培適地
  
北海道一円 

5.栽培上の注意
 
1)褐斑病抵抗性が“弱”なので、適切な防除に努める。
 2)黒根病抵抗性は“中”であるが、多湿となった圃場では黒根病の発生が多い傾向にあるので、排水不良な圃場での栽培を避ける。
 3)そう根病抵抗性を持たないので、発病圃場での栽培は避ける。