そば新品種候補系統「北海6号(キタノマシュウ)」(普及推進事項)

                                              北海道農業研究センター畑作研究部遺伝資源利用研究室
                                                執筆担当者 北海道農業研究センター 本田 裕
                                                                       六笠 裕治
                                                                        鈴木 達郎

 寒地向きそば品種「北海6号」は、「キタワセソバ」より草丈が低く、耐倒伏性にやや優り、良食味である。全道一円に適し、「キタワセソバ」の一部に置き換えて普及することにより、道産そばの安定生産に寄与する。

1 来 歴
 「北海6号」は、北海道農業試験場(現北海道農業研究センター)において、耐倒伏性・短茎・多収そば品種の育成を目標として、平成7年に「キタワセソバ」集団(M0)約9,000個体中より発見・選抜した伸育性が有限の変異個体(M1個体)に由来する系統である。その後、M1 集団を養成し、M2世代にて集団選抜法に準じて有限性個体の選抜、無限性個体の淘汰を行い、特性の固定化を図った。平成9年に「キタワセD」の系統名で生産力検定予備試験に供試し、標準品種「キタワセソバ」より多収であることが認められたため、平成10年度より「芽系14号」 の系統名で生産力検定試験、平成12年度に道外1農試において系統適応性検定試験に供試し、平成13年8月に「芽系14号」の名称で品種登録出願した。平成14年度より「北海6号」の地方系統番号を付し、道内4農試において地域適応性検定試験及び6現地試験、16年より現地試験を7カ所として供試してきた。その後、平成14年2月に「芽系14号」の名前で出願公表され、平成17年9月に「キタノマシュウ」の品種名で農林水産省に品種登録された。平成17年はM12にあたる。

2 特性の概要
 (1)形態的特性
  草型は“直立・短枝型”、葉の大きさは“小”、花色は“白”で、いずれも「キタワセソバ」と同じである。分枝数は「キタワセソバ」より多い“やや少”である。花房数は「キタワセソバ」と同程度の“少”である。草丈及び主茎長は「キタワセソバ」よりやや短いが“かなり短”である。なお、形態に関して特筆すべき点は、伸育性が“有限”である(表1及び2)。

(2)生態的特性
  生態型は北海道に適する“夏型”であり、開花期は「キタワセソバ」とほぼ同程度の“早”、成熟期は「キタワセソバ」と同程度の“かなり早”。子実収量は「キタワセソバ」と同程度の“中”である。耐倒伏性が「キタワセソバ」よりやや強い“やや強”である(表1)。

(3)品質特性
  千粒重は「キタワセソバ」と同程度の“重”であり、容積重は「キタワセソバ」に比し9〜31g程度重い“かなり重”である。製粉歩留りは「キタワセソバ」と同程度の“中”である。食味は「キタワセソバ」とほぼ同程度の“中”である(表1)。実需による製粉・製麺試験結果では、丸抜きの製粉歩留りが「キタワセソバ」と比較して高く(表2)、製麺時(操作性)が「良い〜粘る」、製麺時(香り)「ふつう〜やや強い」であり(表3)、食味試験では「甘味があり、良食味である」との評価を得た(表4)。

  

3 試験成績

 

表2 実需者による品質評価(製粉性)(平14)

 

表3 実需者による品質評価(製麺性)(平16〜17)

 

表4 実需者による品質評価(食味試験)(平15〜17年込み)

 

4 普及見込地帯
  北海道一円 200ha


図2 北海6号の子実重のキタワセソバ対比(%) 
標準播(6月上旬)/晩播(6月下-7月上旬)),
●:生検及び地適試験(北農研(14〜17年)及び道立農試(14〜17年)),
▲:現地試験(14〜17年平均,新得:14及び15年,鹿追・士幌:16及び17年)

 

5 普及指導上の注意事項
 (1)他品種と交雑するので、集団的に隔離栽培する。
 (2)多肥もしくは晩播により倒伏しやすくなるので、適正施肥及び適期播種に努める。
 (3)「キタワセソバ」並に脱粒するので、適期収穫に努める。


写真 成熟期の草本写真
   (平成17年 北海道農業研究センター産)
   左:北海6号,
   中央:キタワセソバ(標準・対照),
   右:キタユキ(比較)