成績概要書(2006年1月作成)
研究課題:りんごわい性台木の品種特性(果樹わい性台木の特性調査)
担当部署:中央農試 作物開発部 果樹科
協力分担:
予算区分:道費
研究期間:1998〜2005年度(平成10〜17年度)

 

1.目的
 現在道内のりんご栽培面積の内、約4割がわい化栽培となっているが、その大半を占めるM.26台には栽培上の問題が出てきている。「さんさ」はM.26台と不親和で、樹勢衰弱や収量の低下を招くことが知られている。「ハックナイン」はM.26台では十分なわい化効果が得られず、樹が大きくなりやすい。また、M.26台は挿し木繁殖が困難なため、繁殖容易なマルバカイドウ台に接ぎ、その上に穂品種を接ぐ「中間台方式」で利用されることが多く、わい化効果が十分に得られないことも問題となっている。しかし、挿し木繁殖可能なJM台木(果樹試リンゴ試場育成)の登場で、農家が自分の経営に合わせて台木を選択し、苗木を生産することが容易にできるようになった。そこで本試験では樹勢が異なる本道主要3品種でのJM台木の特性評価を行うと共に、樹勢が強い「ハックナイン」の栽培に有効と考えられるわい化度の強い海外育成台木の特性を検討した。

2.方法

 接ぎ木:平成9年春切り接ぎ 栽植:平成10年春(平成17年度:9年生)
 台木長:地上部15cm

3.成果の概要  「M.26EMLA」と比較して記載
 1)「さんさ」 
  本試験で供試した台木はいずれも収量性で勝り、観察などからも親和性が良い。ただし、「JM1」は樹勢の弱い「さんさ」にはわい化程度が強すぎると思われるため、「JM2」「JM7」
  「JM8」が有望である。
  なお、これらの台木は8年生で樹幅が当初設定した栽植距離(樹間2.0m)に達していることから、M.26台の栽植距離よりもやや広く植える必要がある。
 2)「つがる」 
  「JM1」「JM2」の収量性が同等かやや少ないため、樹の大きさは同等であるが、収量性が高い「JM7」「JM8」が有望である。栽植距離はM.26台と同程度でよいと考えられる。
 3)「ハックナイン」 
  「JM1」「ランセップ」「M.9」はやや樹が小さく、収量性は同等か上回る。「JM7」「JM8」は樹の大きさは対照並みであり、収量性では上回る。「JM5」は樹が極めて小さくなり、収量性は大きく
  上回る。「JM2」は樹がやや大きく、果実糖度が低い。「セピランド」は樹がやや小さくなり、収量がやや低い。「M.27」は樹は極めて小さくなり、収量性は同程度であるが、幼木期に4樹中2
  樹が枯死しており、耐寒性に不安がある。
  以上のことから「ハックナイン」で低樹高化を目的とする場合は「JM1」「JM5」「ランセップ」「M.9」が有望である。これらの栽植距離はM.26台よりやや狭くて良いと考えられる。
  また、「JM7」「JM8」は樹の大きさは対照並であるが、収量性が勝ることから有望である。栽植距離はM.26台と同程度でよいと考えられる。

 

4.成果の活用面と留意点
 1)台木選定の際の資料として活用できる。
 2)「JM1」「JM5」「JM7」は高接ぎ病の原因となるACLSVに抵抗性ではないので、接ぎ木の際には無毒の母樹から穂木を採取する。
 3)「リンゴわい性台木の利用試験」(昭和55年度 中央農試)で「M.9」の凍害多発が指摘されていることから、凍害を受けやすい地域でのM.9系台木、「M.9」「ランセップ」「セピランド」の利
  用は避ける。
 4)本試験は樹齢9年生までの結果である。

5.残された問題とその対応
 1)他の穂品種を接いだときの台木特性の検討。
 2)樹齢10年生以降の台木特性の検討。
 3)台木長の違いによるわい化度の違いの検討。