「たまねぎ「月交22号」」(普及奨励事項)

                                         北海道農研作物開発部野菜育種研究室
                                         執筆担当者 室 崇人

 

たまねぎ「月交22号」は既存品種よりもケルセチンを平均で25%多く含む、春まき栽培に適した高貯蔵性赤タマネギF1品種である。
 

1 試験目的
 たまねぎは抗酸化性や抗変異原性などの機能が明らかにされているケルセチンを特異的に多く含み、体内に摂取されるフラボノイドの重要な供給源であることが報告されている。さらに、たまねぎの摂取は生活習慣病の予防に有効であることが示されるなど、たまねぎの持つ健康に対する効果について注目が集まっている。このような背景からケルセチンを高含有することで、既存品種や他の品目に対し区別性や付加価値をもつ品種の育成を目的とした。

2 試験方法
 生産力検定試験は春まき露地移植(手植え)栽培で行った。2月下旬にプラスチックハウス内に播種し、約60日間育苗した後、4月下旬から5月上旬にかけて、圃場に定植した。圃場には前年秋に堆肥を10aあたり2t施用し、融雪後に10aあたり成分で窒素16kg、リン酸38kg、カリ16kgを施肥した。栽培管理は研究室の慣行に拠った。
 系統適応性検定試験は北海道立花・野菜技術センターおよび北海道立北見農業試験場で春まき露地移植(手植え)栽培で行った。栽培管理は現地慣行に拠った。
 生産力検定および系統適応性検定試験では、生育期間中に生育ステージの調査を行うとともに、肥大期後期(生育盛期)に茎葉部の特性調査を行った。茎葉が枯葉する、8月下旬から9月中旬にかけて収量性を、収穫後の10月から12月にかけてケルセチン含量の測定と球品質を調査した。収穫した球はおよそ1ヶ月間風乾した後冷蔵保存し、翌年4月に健全球数を調査した。

3 試験成績
 (1)ケルセチン含有量
  たまねぎ品種に含まれるケルセチンの絶対量は試験年次および試験地によって変動するが、「月交22号」のケルセチン含量は、既存の市販品種に対し安定して高い(図1、図3)。
 (2)形態的特性・生態的特性
  葉色は濃く、草勢はやや旺盛で、葉先の枯れがやや少ない。中晩生の品種で、倒伏期は平年で8月4日となる(表1)。
 (3)収量性・球外観・内部特性
  1球重は約200gでL球に揃う。総収量は「スーパー北もみじ」の80〜90%であり、試験地による変動は少ない。規格内率は「スーパー北もみじ」と同等である(表1)。
  外皮は紫色で色斑はない。球形指数は93で、外観は球〜やや縦長の球形(紡錘)となる(図2)。りん片葉は薄く枚数の多い葉数型たまねぎで、Brix値は他の品種に比べ高い(表1)。
 (4)貯蔵性
  6ヶ月貯蔵後の健全率は「スーパー北もみじ」と同等に高く、長期貯蔵性を有している(表1)。

 

                 
図1 市販品種のケルセチン含量                                   図2 「月交22号」の球


  


図3 栽培地によるケルセチン含量の変動(平成17年度)

   

表1 「月交22号」の特性

 

4 試験結果及び考察
 試験期間を通じて、「月交22号」のケルセチン含量は既存品種より安定して高く、異なる栽培地においてもその傾向に変わりはない。よって、「月交22号」の可食部のケルセチン含量は、北海道向け市販品種のなかで最も高いことが明らかとなった。また、貯蔵性は「スーパー北もみじ」並に高いため、長期安定供給が可能である。

5 普及指導上の注意事項
  栽培地域や気象条件によっては長球が多発することに留意する。