成績概要書 (2006年1月作成)

研究課題:シネンシス系デルフィニウムの秋切り栽培における電照技術
       (秋切りデルフィニウム(シネンシス系)の品質向上対策)

担当部署:花・野菜技術センター 研究部 花き科
協力分担:
予算区分:道費
研究期間:2004〜2005年(平成16〜17年)

1.目的
 夏秋期のシネンシス系デルフィニウムの栽培において、切花品質を向上させる栽培方法を検討する。

2.方法
 (1)供試品種:マリンブルー(種子購入可能品種)
 (2)人工気象室、温室における試験の耕種概要(16〜17年):・200穴セルトレーに播種し、18㎝ポリポットに鉢上げ ・長日条件の検討は抽台期から処理開始
   ・試験規模は1処理25〜35株
  ア.長日条件の検討:明期/暗期:12h/12h、16h/8h、20h/4h、24h/0、12h+4h/8h(暗期中断)、
    一部に処理開始2週間遅区を設定
  イ.ピンチ処理時期の検討:主茎3〜5㎝時、主茎10〜12㎝時、開花直前、無処理
 (3)ハウス圃場における試験の耕種概要(17年):・育苗;200穴セルトレー使用、夜冷育苗 ・栽植様式;白黒ダブルマルチ使用、畦幅90㎝、高さ15㎝、条間15㎝×株間15㎝ 
   ・基肥;N,P2O5,K2O = 1.5,1.5,1.5㎏/a、追肥;N,P2O5,K2O=1.0,0.5,1.0㎏/a ・かん水管理、病害虫防除;農試慣行 ・試験規模;1区30株3反復
  ア.照度条件の検討:試験区を光源直下からの水平距離0、1、2、3、5、8、10、14、18mを設定
    (電照はハウス中心部のみに設置し、点灯時間は17〜24時)
  イ.電照時間帯の検討:夕方延長区:17時から24時、朝方延長区:0時から5時、各処理区に無処理区設定
    (電照は約6m2に60W電照用白熱灯1個、高さ約1.7m、8月13日から処理開始)
  ウ.大苗育苗および定植後の短日処理の検討:288穴(40日育苗)、200穴(52日育苗)、128穴(63育苗)セルトレーで育苗 
   ・定植後短日処理(17〜9時遮光)は、購入苗定植後10日間、自家育苗苗定植後14日間

3.結果の概要
 (1)抽台期からの長日条件には主茎長および分枝長を伸ばす効果があり、その結果として切り花長が長くなった。暗期中断には効果が無かった。明期18時間までは、明期の増加ととも
   に切り花長は順調に増加するが、18時間以上では増加は緩やかとなり、20時間以上ではほぼ一定と考えられる(図1)。
 (2)抽台期と定植後からの長日処理では、切り花長は同程度であったが、定植期からの処理では、分枝数が減少する傾向がみられた。
   また、抽台期2週間後から処理を開始しても効果がみられた。
 (3)電照直下から3mまでは十分な長日処理効果がみられ、3m区における照度は、光源向きで46.3lxであった。また、100lx以上では効果はほぼ一定と考えられる(図2)。
 (4)電照点灯時期を夕方から行う夕方延長と深夜から行う朝方延長において比較した結果、いずれの処理区にも無電照区対比で16〜17%切り花長が長くなる効果が確認でき、電照点
   時間帯の違いによる影響はみられなかった(表1)。
 (5)ピンチ処理時期の違いによる切り花品質への影響はほとんどみられないことから、主茎の花蕾と第1分枝が容易に区別できるようになり茎の柔らかい間に処理するのが省力的であ
   る(表2)。
 (6)大苗育苗および定植後の短日処理は、分枝数を増加させ主茎長を長くし、切り花長が長くなった。
 (7)以上より、秋切り栽培において以下の電照技術で、切り花長を伸ばし切り花品質の向上が図れる。
  ①電照は、抽台期から抽台揃い期までに開始する
  ②夕方あるいは朝方に自然日長と連続した18〜20時間明期
  ③電照の明るさは、50〜100lx
 (8)この電照技術における、電照装置および電気料の試算の結果、10m2当たり75W白熱灯1個では、導入経費は20,000円、6m2当たり60W白熱灯1個では、26,910円であった(表3)。
  ハウスの形状に合わせて設置し電気料を試算した結果、1株当たり1.6〜1.8円であった。これらの試算結果と夏秋期の規格別平均単価の比から、電照技術の収益性は非常に高いと考
  えられる。


図1 長日処理が切り花長に及ぼす影響人工気象室の結果をプロット(暗期中断は除く)
◆は処理開始2週間遅

 


図2 照度が切り花長に及ぼす影響(平成17年)光源直下区は水平値を使用、5月27日播種、7月22日定植

 

表1 電照時間帯が切り花品質に及ぼす影響(平成17年5月13日播種、7月4日定植)

 

表2 ピンチ処理時期が切り花品質に及ぼす影響

 

表3 電照装置導入経費の試算(a当たり)

(電照時間は、1日5時間、40日間点灯)

 

4.成果の活用面と留意点
 7月定植、9〜10月採花に適応する
 本試験は「マリンブルー」を用い、7月上中旬定植で一番花を対象とした。

5.残された問題点とその対応
 秋切り栽培における品質向上のための肥培、かん水管理法の検討