成績概要書  (2006年1月作成

研究課題:ばらの夏秋期における高品質栽培技術
      (バラの夏秋期高品質生産技術の確立)

 担当部署:花・野菜技術センター 研究部 花き科、園芸環境科
 協力分担:なし
 予算区分:道費
 研究期間:2003〜2005年度 (平成15〜17年度)

1.目的
 北海道のバラ切り花生産は冬季には採花しない作型が一般的であり、夏秋期における品質や生産性のさらなる向上が求められている。そこで、長い切り花を多く生産できる技術として有望なハイラック仕立て法と養液土耕栽培を本道の作型に適用し、高品質栽培技術を確立する。

2.方法
 1)供試作型:冬期半休眠栽培(加温)
 2)供試品種:ローテローゼ(赤色)、サフィーア(桃色)、パレオ(橙色)、ゴールドストライク(黄色)
 3)試験規模:1区8株(うち4株調査) 2反復
 4)栽植様式:ベッド幅80cm、ベッド高25cm、条間40cm、株間25cm、2条植え(5,000株/10a)
 5)耕種概要:2003年4月23日定植、2003年9月〜11月、2004年4月〜11月、2005年4月〜9月採花、生育および採花期間中は最低夜温15℃に加温、休眠期12月〜2月は5℃にて越冬。
  6月上旬〜9月中旬まで晴天時日中のみ遮光(50%)。

    

 6)灌水量:養液土耕 pF 1.8〜2.0を目標に管理(実質灌水量0.15〜0.35L/株/日)
          土耕      灌水点をpF2.0とし、1回あたりの灌水量を10mm(1L/株)とした。

 

3.成果の概要
 1)ハイラック仕立てでは、切り上げ仕立てよりも茎が長く、切り花重/切り花長の値も大きい切り花が得られた(表1)。
  採花本数は品種によって切り上げ仕立てより多くなる場合と少なくなる場合があったが、いずれも規格別では長い切り花の割合が大きく特に切り花が短くなる高温期においても長い切
  り花が多く得られた事から収益性が高いと考えられた(表4)。採花法では元切り採花の方が1枚残し採花より品質が優れ、収量も同等以上であった。
 2)養液土耕栽培では、品質は土耕栽培とほぼ同等であり、切り上げ仕立てにおいては土耕栽培より採花本数が多かった(表1、表3)。
  また、土耕栽培よりもかん水にかかる労力が軽減された(表2)。
 3)ハイラック仕立てと養液土耕栽培を組み合わせた場合、定植3年目の採花本数がハイラック仕立て土耕栽培の場合よりも少なくなり、定植から3年間の合計でも同様の結果となった
  (表3)。
 4)窒素の吸収特性は仕立て法によって異なり、切り上げ仕立ては全体の吸収量は多いが剪定枝の分が大きく、切り花生産に結びつく割合はハイラック仕立ての方が大きかった(表5)。
 5)ハイラック仕立てにおける同化枝は、折り曲げから日数が経つにつれて働きが低下する事が明らかとなった。そのため本道の冬期半休眠栽培においては、加温開始後3月から7月ま
  で毎月1本同化枝の折り曲げを行い、株あたりの光合成能力を維持するのが良いと思われた(データ略)。
 6)経営試算の結果、ハイラック仕立て元切り採花では、切り上げより採花本数が少ない場合でも長い切り花が多いため粗収益が増大し、新たに生じるコストも無い事から所得は大きく増
  加した。一方、養液土耕栽培の切り上げ仕立てでは、採花本数の増加により粗収益が増大し養液土耕システムの導入コストを吸収してなお、土耕よりも所得はやや大きくなった。
  ハイラック仕立てと養液土耕栽培を組み合わせた場合は、ハイラック仕立ての土耕栽培よりも採花本数、所得ともに少なかったが、減収を回避する方法を工夫する余地がある。
 7) 栽培法の組み合わせについて経営試算から導いた所得により評価を行った(表6)。その結果、いずれの品種においても土耕、養液土耕ともにハイラック仕立て元切り採花が優れる
  と判断された。

 

 

 

 

 

 

4.成果の活用面と留意点
 ばらの夏秋期における高品質栽培技術として活用する。

5.残された問題点とその対応
 ・「ハイラック仕立て+養液土耕栽培」で経年的に安定した収量を得る方法の検討
 ・他品種への対応