成績概要書 (2006年1月作成)
研究課題:いちご無病苗の省力定植技術 (いちご疫病の総合防除対策)(いちごメリクロン苗を用いた種苗生産) 担当部署:道南農試研究部園芸環境科・病虫科 |
1.目 的
いちごの疫病等の土壌病原菌の感染を回避できる省力的な定植技術を確立する。
2.方 法
1)「もみがら採苗法」における疫病の感染回避の検討
疫病の接種源を混和した厚さ10cmの土壌の上にパイプハウスを設置し、そのハウス内で「もみがら採苗」を行った。対照区として疫病の接種源を混和した露地採苗圃を設置した。
各処理区で得られた子苗100株を鉢上げし、疫病による枯死株率、感染株率を調査した。 供試品種:「けんたろう」「きたえくぼ」
2)省力的な定植技術の確立
露地仮植苗定植法(慣行法):露地採苗法で採苗→露地仮植圃で1ヶ月育苗→掘上げ→定植 鉢上げ苗定植法:もみがら採苗法で採苗→ポリポットに鉢上げし1ヶ月育苗→定植
直接定植法:もみがら採苗法で採苗→定植(本課題で検討)
(1)直接定植法の確立
作型:無加温半促成。供試品種:「けんたろう」。検討項目:省力性、定植期(8月上旬、中旬、下旬)、定植前マルチの有無、親苗の増殖回数、高設栽培への適応性。
(2)経済的評価
各定植法について、渡島管内のいちご生産組合の露地仮植苗定植法のデータを基礎に経済的評価を行った。供試品種:「けんたろう」
3)メリクロン苗の利用方法の検討
無病苗であるメリクロン苗の1次親苗としての子苗生産力および2次親苗としての子苗の果実生産力の検討。 供試品種:「けんたろう」「きたえくぼ」「エッチエス-138」
3.成果の概要
1)もみがら採苗法によって疫病の苗への感染を回避できることを明らかにした(表1)。
2)直接定植法は、もみがら採苗法で得られた軽くて根が短い苗を定植するため苗の運搬・定植作業が楽であり(図1,2)、採苗圃での作業時間も短く省力的である(表2)。
定植期も8月上旬から下旬まで幅があるため定植作業の分散が可能である(図3)。また、直接定植法は慣行法である「露地仮植苗定植法」および「鉢上げ苗定植法」と比較しても収量
性および収益性に差はない(図3,表2)。さらに直接定植法は高設栽培にも適応できる。
3)直接定植法における親苗の1回増殖は、2回増殖に比べ所得は低下するが(表2)、2次親苗の管理作業に伴う土壌病害の感染を回避できる方法である。
4)メリクロン苗は1次親苗および2次親苗と同様の使用方法が可能で(表3,4)、直接定植法の親苗としても使用でき、土壌病害のリスク軽減に効果が期待できる。
本課題で開発した「直接定植法」は、疫病等の土壌病原菌の苗への感染を回避でき、省力的で定植期の分散もでき、収益性にも問題のない採苗・定植技術であり、露地仮植苗定植法あるいは鉢上げ苗定植法に代えて普及できる技術である。
図1 定植時の苗姿と苗重および根長(H14,H16)
鉢上げ苗 | 露地仮植苗 | もみがら採苗法で 採った苗 (直接定植苗) |
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苗重:397.7g 根長: - |
苗重:20.7g 根長:14.9cm |
苗重:5.9g 根長:6.5cm |
図3 鉢上げ苗定植区(左)および露地仮植苗定植区(右)の規格内収量を100とした場合の直接定植区の値
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